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3-7 水無瀬凛

 享介と穂乃香は突発的に行われた肝試しにて、本物の幽霊である水無瀬凛という幽霊と出会っていた。

「それで、話ってなんだ?」

 享介はとりあえず幽霊に話を合わせることにした。

「特にこれといって言いたいことはないんですが」

 無いんかいっ!無いのならすぐに帰してくれ……

「でも、こんな所に人が来るなんてこの数年でも初めてなもので」

 なるほど。死んで幽霊になってから数年、誰とも接さずに過ごしてきたから久しぶりに人を見つけて一緒に遊びたいと思った、とそんなところだろうか。

「てか、なんで幽霊になったんだ?普通そうはならんやろ」
「そんななまりもあまり出ないと思いますが……。でも私も何故幽霊になったのか、いえ何故幽霊になれたのかよく分かっていません。幽霊といっても魔力の集合体のようなものなのでとても淡いものですが」
「魔力の集合体?」

 言いながら享介はふと目に入った果物を手に取る。

「あ、その木の実を食べるのはやめておいた方がいいですよ。私のようになりますから」

 言われた瞬間、享介はギョッとしてその木の実を投げ捨てる。

「もしかして死んだ理由って……」
「そう、その木の実を食べてしまったから」

 確かに見た目ではすごく美味しそうに見えるし、実際昨日ハルキが取ってきた木の実に似たようなものがあり、食べても大丈夫だったから安心していたのだが……

「貴方の仲間はこの木の実が食べれないということは知っているみたいですね。あの時の私たちには……この世界の仲間がいませんでしたから……」

 その凛の言葉でふと拓蔵さんの言っていたことを思い出す。

「……」
「すみません。関係の無い話をしてしまいましたね」
「こっちこそなんかすまん。思い出させるようなことして」
「いや、いいんです。情報の貧困なんて仕方の無い事ですし」

 二人がお互いに目を背け、雰囲気が暗くなる。

「貴方……なんだか本当にあの人に似ている気がする……」

 幽霊の凛がボソッとそんなことを言った。

「……え?」
「いや、なんでもないです。ただ……少し昔の仲間と雰囲気が被ったので」

 俺と一緒……と、享介は思う。

「あの人は、多分私のことを好きだったんだと思います。それなのに先に私が死んでしまって……その前にもいろいろあったし……」

 言葉が最後の方にいくにつれ、ぼそぼそとした声になっていく。しかし、凛は顔を上げ、享介に言った。

「……絶対に穂乃香さんに自分の気持ちを伝えてください。伝える前に何かあれば……死んでも死にきれないので」

 その言葉は凄く重みを帯びていた。実体験のようでものすごく重い。

「お、おう」

 とりあえず返事をする。

「……なんだか信用できないね」
「なにそれ酷い」
「確かに貴方の本質は"穂乃香さんが好き''とは違うのかもしれないけど……」
「……」
「それでも……私は貴方達に幸せになって欲しい。もし告白が成功しなくとも後悔はして欲しくないの。それが私の言いたかったこと」

 なるほどな。この子は過去に自分のことを好きだった子を悲しませてしまった後悔がある、ということか。てかフラれる前提で話してない?気のせい?

「どうせなら今たたき起こしてでも言うべきと私は思んだけど……」

 なにそれ、絶対フラれるやつじゃん。こいつ思いを伝えられればそれ以外どうでもいいと思ってやがるな。怖い。

「そう言えば、もしお前はその告白を生きている時に受けたらどうしてたんだ?」

 キョトンとした顔で幽霊に見られる。まさかそこまで考えてなかったとか……

「え……私が……?!それは、どうなんだろう……その場の雰囲気によるかな〜?」

 OKで確定してないのかよ!そりゃその男も告白の機会を狙いにくいわけだ。

「んじゃあ、俺が今穂乃香ちゃんに告白しても無理そうだな。チャンスはきっとあるはず……」
「そう言ってチャンスを逃したらそれこそだと思うけど」
「残念だが、俺は穂乃香ちゃんを絶対に守り抜く。何があってもだ」

 その一言に凛も呆れたらしく、やっと腰を下ろした。

「はぁ。もう何を言っても無駄なようね。分かったわ」

 やっと分かってくれた。そろそろみんなが心配しそうなのでとっとと帰りたいのだが……

「貴方に憑依するしかないみたいね……」
「は?」
「もうこの目で伝えるのを見るまで私も死にきれないし」

 この幽霊なんだか無茶苦茶だな。こういう所は穂乃香ちゃんに似てなさそう。

「それ、拒否できるのか?」
「どうしても駄目って言うのなら仕方が無いけどね」

 しかし、ここで享介は思ってしまった。もしここで断ってしまったら、この幽霊はまたこの無人島に一人で取り残されてしまうかもしれないと。それは流石に可哀想だ。

「ま、まぁいずれは絶対することだし悪さしないのなら別に……駄目とは言わないけど……」

 そう言うと、幽霊の顔が明るくなる。笑った顔は穂乃香のように可愛い。

「ありがとね。享介さん」

 そう言って幽霊の凛が享介の中へと入っていく。といっても特になにも感じない。自分が魔法の知識がないからだろうか……

「んん……ここは……?」

 まるで空気を読んだかのように穂乃香が目を覚ました。

「森の中だよ。……変な獣にでも襲われて気絶してたぜ。決して幽霊とかそんなのはなかったから!!」
「そっか……守ってくれたんだ……ありがと」

 なんだか穂乃香の顔が赤い気もしたがとりあえずこんな所に長居するわけにもいかない。

「とりあえず拠点に戻ろうか」
「そうだね」

 適当に穂乃香は返事を返す。しかし穂乃香はそれどころじゃなかった。実は享介と幽霊の会話中に目を覚ましていたのだ。

(え……享介君が……本当に私のことを……好き……!?)

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