Traveる
2-19 湖
一行は会議を終え、各自の部屋へと戻って行った。そんな中、享介だけは城の外へ出ていた。
「確かこっちの方に綺麗な湖があるとかなんとか聞いたような……」
もう夜なので辺りは真っ暗だが、所々にある蛍の光のような暖かい電球が優しく包み込んでくれている。この光も魔法が関わっているのだろうか。
しばらく歩くと、木の柵のようなものが見えた。恐らくその向こうが湖になっているのだろう。
とても美しいところだった。
例えるなら妖精の国に迷い込んだかのような感覚だ。羽の生えたエルフが飛び回っていてもなんら不思議には感じない、寧ろそっちの方が自然な気までしてくる景色だった。
「……いいところだなぁ」
享介はそこでしばらくゆっくり休んだ。そんなこんなでゆったりとしていると城の方から享介を呼ぶ声が聞こえてきた。
「享介くん!」
「火神さん!?」
穂乃香だった。
「うわぁー凄く綺麗な所だね!」
穂乃香は木の柵に手を置き、その景色を眺め始める。
「どうしてここに?寝なくてもいいのか?」
享介はとりあえず聞く。正直心の中では興奮を抑えきれていないが……
「ハルカちゃんが、享介が湖に行ってるみたいだけど貴方も行ってみたら?って言われてそういえば見たことないなって思ったから」
「そっか」
ナイスハルカ!いいところで気が利くぜ。明日、今日の夜食べるように買っておいた、ぷる-ぷるポテチ(ナポリタンカルボナーラ味)を上げよう。
「……ねぇ、享介君。ハルカちゃんって本当にお姫様だったんだね」
「そうみたいだな。全くそんな感じはしてなかったのに」
「ふふっ確かに……」
何気ない会話だった。だが、享介にとってはこの湖の景色なんて消し飛ぶほど、うきうきしていた。
(やばいやばいやばい……この間の友恵に優しくしてた所を見たばっかりだから余計に魅力的に見えるっ!!)
見ると、目がうっつらしている。今日一日、動物園行ったり水族館走り回ったり……本当何してんだろう。
「そういえば宅野さん、いい人だったよな」
「ちょっと訛りが酷かったけどねー」
痛いとこをついていく穂乃香。容赦がない。因みに彼がもう既に死んでいるとは、この二人が知ることはないだろう。
「ね、享介君。元の世界、今どうなってるかな?」
「やっぱり……気になるよな」
「……うん」
あの世界で俺たちはどんな扱いをされているのだろうか。家出、誘拐、行方不明、死亡……考えたくはないがその辺のどれかとして扱われているだろう。
「もう、こっちに来て一週間以上経ってるんだよね……」
正直これくらい長くこっちにいると少し生活には慣れてきた節も無くはないが。
「お母さん……大丈夫かな……ショックで死んでたりしないよね……」
「流石にそこまでは……」
しかし、そう言った穂乃香は目に涙を浮かべ、本気で悩んでいた。
「お父さんが居なくなった時も凄く大変そうだったの。私には見せないように取り繕っていたけど。見えないところでずっと泣いていたの。その時はまだ物心ついてすぐだから私はあんまり覚えてないんだけど」
「……」
穂乃香の心配は痛いほど分かる。
「俺もさ、妹がいるっていったよな」
「うん」
「五年も前になるのかな。そいつがさ、突然行方不明になってさ。すっげえ心配した。死ぬ気で探したよ。幸い異世界に転落なんてことは無かったけど、もしそうなってたら自分が情けなくて」
そう話すと穂乃香はにっこりと笑った。
「でも、見つかってよかったね!じゃあ今度は享介君がちゃんと家に帰ってあげる番だよ」
「……!!そうだな……ありがと」
穂乃香の言葉が優しすぎてとろけそうになった。顔が歪んでなかったか不安で仕方がない。
「でも、元の世界に戻っちゃったらもうハルカちゃん達とは会えないのかな……」
ちょっと寂しそうな顔で言ってくるのがずるい。惚れてまうやろ。あ、もう既に遅かった。
「だ、大丈夫だって。向こうの世界に戻る方法があるならこっちの世界に来る方法だってあるって!転落はもう勘弁だけど」
「ふふっそうだね」
穂乃香は少し笑ってみせた。可愛い。あーずっとこのままでいーや。
「でも、どうなってもいいから無事にまたここで一緒にこの景色を観ましょう」
「ああ。そうだな」
なんだこのキュン死に製造機……
「それじゃ……私そろそろお休みしようかな」
「そうだな。結構話しちゃってたし」
「ごめんね。話に付き合わせちゃって」
「いや、いいよ」
寧ろもっとこい。
「それじゃ」
そう言い残して城の方へとかけていった。享介はその姿が見えなくなるまで見送る。
「やっぱり癒しだわぁ」
とそれだけ呟いて享介は空を見上げた。そこには満天の星空が広がっていた。そして享介は考える。
「戦いとかじゃなくて、こんな時間がずっと続けばいいのにな……」
「確かこっちの方に綺麗な湖があるとかなんとか聞いたような……」
もう夜なので辺りは真っ暗だが、所々にある蛍の光のような暖かい電球が優しく包み込んでくれている。この光も魔法が関わっているのだろうか。
しばらく歩くと、木の柵のようなものが見えた。恐らくその向こうが湖になっているのだろう。
とても美しいところだった。
例えるなら妖精の国に迷い込んだかのような感覚だ。羽の生えたエルフが飛び回っていてもなんら不思議には感じない、寧ろそっちの方が自然な気までしてくる景色だった。
「……いいところだなぁ」
享介はそこでしばらくゆっくり休んだ。そんなこんなでゆったりとしていると城の方から享介を呼ぶ声が聞こえてきた。
「享介くん!」
「火神さん!?」
穂乃香だった。
「うわぁー凄く綺麗な所だね!」
穂乃香は木の柵に手を置き、その景色を眺め始める。
「どうしてここに?寝なくてもいいのか?」
享介はとりあえず聞く。正直心の中では興奮を抑えきれていないが……
「ハルカちゃんが、享介が湖に行ってるみたいだけど貴方も行ってみたら?って言われてそういえば見たことないなって思ったから」
「そっか」
ナイスハルカ!いいところで気が利くぜ。明日、今日の夜食べるように買っておいた、ぷる-ぷるポテチ(ナポリタンカルボナーラ味)を上げよう。
「……ねぇ、享介君。ハルカちゃんって本当にお姫様だったんだね」
「そうみたいだな。全くそんな感じはしてなかったのに」
「ふふっ確かに……」
何気ない会話だった。だが、享介にとってはこの湖の景色なんて消し飛ぶほど、うきうきしていた。
(やばいやばいやばい……この間の友恵に優しくしてた所を見たばっかりだから余計に魅力的に見えるっ!!)
見ると、目がうっつらしている。今日一日、動物園行ったり水族館走り回ったり……本当何してんだろう。
「そういえば宅野さん、いい人だったよな」
「ちょっと訛りが酷かったけどねー」
痛いとこをついていく穂乃香。容赦がない。因みに彼がもう既に死んでいるとは、この二人が知ることはないだろう。
「ね、享介君。元の世界、今どうなってるかな?」
「やっぱり……気になるよな」
「……うん」
あの世界で俺たちはどんな扱いをされているのだろうか。家出、誘拐、行方不明、死亡……考えたくはないがその辺のどれかとして扱われているだろう。
「もう、こっちに来て一週間以上経ってるんだよね……」
正直これくらい長くこっちにいると少し生活には慣れてきた節も無くはないが。
「お母さん……大丈夫かな……ショックで死んでたりしないよね……」
「流石にそこまでは……」
しかし、そう言った穂乃香は目に涙を浮かべ、本気で悩んでいた。
「お父さんが居なくなった時も凄く大変そうだったの。私には見せないように取り繕っていたけど。見えないところでずっと泣いていたの。その時はまだ物心ついてすぐだから私はあんまり覚えてないんだけど」
「……」
穂乃香の心配は痛いほど分かる。
「俺もさ、妹がいるっていったよな」
「うん」
「五年も前になるのかな。そいつがさ、突然行方不明になってさ。すっげえ心配した。死ぬ気で探したよ。幸い異世界に転落なんてことは無かったけど、もしそうなってたら自分が情けなくて」
そう話すと穂乃香はにっこりと笑った。
「でも、見つかってよかったね!じゃあ今度は享介君がちゃんと家に帰ってあげる番だよ」
「……!!そうだな……ありがと」
穂乃香の言葉が優しすぎてとろけそうになった。顔が歪んでなかったか不安で仕方がない。
「でも、元の世界に戻っちゃったらもうハルカちゃん達とは会えないのかな……」
ちょっと寂しそうな顔で言ってくるのがずるい。惚れてまうやろ。あ、もう既に遅かった。
「だ、大丈夫だって。向こうの世界に戻る方法があるならこっちの世界に来る方法だってあるって!転落はもう勘弁だけど」
「ふふっそうだね」
穂乃香は少し笑ってみせた。可愛い。あーずっとこのままでいーや。
「でも、どうなってもいいから無事にまたここで一緒にこの景色を観ましょう」
「ああ。そうだな」
なんだこのキュン死に製造機……
「それじゃ……私そろそろお休みしようかな」
「そうだな。結構話しちゃってたし」
「ごめんね。話に付き合わせちゃって」
「いや、いいよ」
寧ろもっとこい。
「それじゃ」
そう言い残して城の方へとかけていった。享介はその姿が見えなくなるまで見送る。
「やっぱり癒しだわぁ」
とそれだけ呟いて享介は空を見上げた。そこには満天の星空が広がっていた。そして享介は考える。
「戦いとかじゃなくて、こんな時間がずっと続けばいいのにな……」
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