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2-16 災厄の果てに

「……っ!探さないと……」

 しばらくしてから、私は立ち上がった。アオイ、そして父に託された思いを実現するために。

「……とりあえず、アツシさん。あの人さえいればどうにかなる」

 王室を出て、少し走るとこの世とは思えないおぞましい声が聞こえてきた。恐らく例の巨大生物だろう。と、そんな事を考えていた時、

「父さん……!!」

 城の通路に子供……ハルキが誰かに話しかけている。さっき私に話しかけて、その後息を引き取った兵士だった。

「ねぇ!貴方こんな所で何してんの!?」
「父さんがっ……定時になっても帰ってこないから心配して来てみたら……っ!!」
「とりあえずここは危険よ!安全なところまで行きましょう」
「ちょっ!何すんだよ」

 私はハルキを無理やりおぶってアツシをさがすことにする。

「我我我我我我我我ッ!!殺殺殺……っ」
「はああっ!」

 少し進むと、そこにアツシが巨大生物と対峙していた。その奥、巨大生物の後ろには私の弟であるハヤトがいる。

「アツシさん!!大丈夫ですか!?」
「……!ハルカか!良かった。無事だったんだな……あとはサヨリだけ取り戻せば」

 そのサヨリはハヤトの近くに倒れている。

「はははははっ!!なんだよアツシさんよォ。前回はこの怪物を仕留めれたんだってなぁ!?なのに今回は全然相手になってねぇじゃねぇか!!」
「ちっ」

 戦況をよく見ると、アツシは巨大生物に押されていた。時も悪ければ場所も悪く、このようなところで戦っていても勝機はない。

「アツシさん!今は一旦引きましょう!!」
「サヨリを置いて逃げれるかよっ」

 しかしアツシはサヨリのことで頭がいっぱいになっており、周りが見えていなかった。

「でもっ!!万全の状態の貴方以外、この惨状を打破できる人はいません!」
「それでも俺はっ!!」

 いいかけた時、暴れている巨大生物の破壊した城の欠片が私の方へと飛んできた。

「っ……!!まずいっ!石の剣っ!!」

 なんとか抑えることに成功したがとてつもなく威力が高い。

「……塵旋風ウインドブラスト!!」

 ハルキの助けもあり、なんとか破片を相殺する。しかし、その影響で吹っ飛ばされてしまった。

「うわっ」

 見るとハルキの方へと巨大生物が攻撃を仕掛けようとしていた。

「やらせてたまるかッ!!」

 アツシが飛び込み、ハルキを助ける。

「怪我ないか?」
「は、はい!一応……」

 そこでもう一度アツシは考える。

「ハルカ。やっぱり一度体制を立て直そう」
「アツシさん!」
「やっぱりこのままだと勝ち目がねぇ。どこか力を貯めれる所とか策はあるのか!?」
「そこら辺はよく分からないですが、アオイがどうにかしてくれてるらしいので地下へ急ぎましょう」
「なるほどな。王国最高の発明家か……よしついて行くぜ」

 しかし、それを遮ろうとする声が聞こえる。

「いいのか?お前の好きな奴を見捨てて」
「アツシさん!惑わされちゃだめです!」

 ハルカの助言もあり、逃げる選択に走る。

「ちっ、まぁいい。やつは何をしでかすかわからんからな。消えてくれるならありがたい。そのうちに王国を僕のものにしてしまえば良いのだからな!!」




 そうして一行は地下へと走り出した。するとその途中で誰かとすれ違う。どこか見た事のあるその人は泣きじゃくって顔がぐちゃぐちゃになっていた。

「もしかして……薔薇の盗賊団ローズシーフのヒナさん!!」

 呼ばれて、ヒナは振り向く。

「第二王女……様?」

 私は必死に頼んだ。そして王国復活の意思を伝えた。しかし

「ごめんなさい……私、約束したから……リカと……後で絶対に合流してサアヤを探すんだって……だから、私、行かないと……」
「駄目っ!!今そっちに行けばいくら貴方でも無事じゃ済まない!!私たちも捜索に協力する!だから……」

 必死に説得すると、ヒナも状況を理解したのか、どうするか考える。

「ま、まぁ私も探すったって宛がないし……分かったわ。貴方達に付いてってあげる……」
「ありがとうございます!アオイの待っているのはこっちです!皆!急ぎましょう」

 そして一行はアオイの元へとたどり着く。




「……割と人数すくねぇな……」
「……ごめん。アオイ」
「ま、いいさ。アツシにヒナ。戦力的に問題はねぇ。このガキは知らねーが」
「んだと?一応エリート兵士の子供だかんな!因みに俺はハルキだっ!」
「まぁいい。少し騒がしい方がやりやすい。それより、これを見ろ」

 アオイが指さした方を見ると巨大な城があった。

「なにこれ……」
「ふふん!俺様が作り出した。空飛ぶ城だ。こいつがあれば当分逃げられる」

 と、自慢げにアオイは語る。

「流石アオイ!よし!行きましょう。いつか王国を取り戻すために」

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