Traveる

Nowttel

2-14 押し寄せる疑問と怒りと疑い

 嵐は過ぎ去った。それぞれにいろいろなわだかまりを残して……

「あの……」

 そんな雰囲気の中、穂乃香が話しだす。

「……トモエちゃんと城で一緒に住んでもいいですか?」

 その言葉に当然トモエはキョトンとしている。そんな彼女にハルカは優しく告げる。

「もちろんいいわよ。まぁアオイの監視はより強いかもしれないけど、それ以上どうということはないわ。あ、城ってのはかくかくしかじかで……」

 そんな話が行われていた。一方

「……あれ?どうなったんだ?」

 ハルキの意識が戻る。

「あぁ……全部片付いたよ」

 そのアツシの言葉に元気がない。元気がないでいえばヒナもそうだ。いつものテンションが嘘かのように俯いている。そんな雰囲気を察したのかハルカが皆に向けて提案する。

「さ!もう……ここに居ても何も無いし、とりあえず城に戻りましょう!」
「ちょっと待ってください!!」

 しかしそのハルカの言葉をトモエが遮る。

「一つだけ……確認したいことがあります。皆さんはどういう集まりなのですか?」
「……!!」

 享介や穂乃香も今日一日でさらに疑問に思っていたことをトモエはハルカ達に聞いた。

「もし、答えられないのであればそれはそれで大丈夫です……」

 トモエも禁句と察したのか黙秘の権利を与える。

「いや……もう隠しても隠しきれないでしょうね……」

 しかしハルカも今日一日を振り返ってとても誤魔化せないと思ったのか、話す覚悟を決めたようだ。


 「実は私……王国の第二王女だったの!!」


 場の雰囲気が凍りつく。享介とトモエ、穂乃香までもが引き気味でハルカを見つめる。

「おい。タイミング考えろ。嘘は良くない」
「えぇー信じてくれないのかーっ!」
「でも全然おしとやかじゃないしガサツだし……」
「え、穂乃香!?そんなふうに思ってたの……」
「似合いませんね」
「ちょっと!みんなして酷くない!?」
「ふふふっ!!」

 その場の雰囲気が少しだけ明るくなった。

「あんた達酷いねー。事実なのに。ま、穂乃香の言ってることもそうだけど」
「ヒナ?それまじ?」
「まじ」

 やっと信じたかとハルカは安堵のため息を吐く。

「それでさっきのピンク色の髪をした子が私の姉のサヨリよ。王国の第一王女ね」

 その王国の王女は変なやつしかいないのか……

「でも、さっきのお姉ちゃんは明らかに様子がおかしかった。私も会うのは二年ぶりだけど……」

 寧ろあれでまともだったらそれこそやばい。

「それで、アツシが王国最強の騎士よ。昔はお姉ちゃんとベッタベタしてたっけ?」
「おい。その表現はやめろ」

 すかさずアツシがつっこむ。

「それでアオイ……トモちんは分からないかもしれないけど、あの子は王国随一の発明家よ。天空城を密かに作っていた……まぁ変な奴ね」

 なんかトモエのことあだ名で読んでやがる。こいつ馴れ合うの得意かよ。

「そしてヒナは……もう大体想像付いてるかもしれないけど最強無敵の盗賊、薔薇の盗賊団ローズシーフのメンバーの一人ね。随分昔は悪さばっかしてたけど。王国と手を組んでからは割と悪いことはしてなかったわよね」
「そうだっけ?」
「おいヒナ」

 やはりそうだったのか。すると例のヒナを助けた張本人であるサアヤと呼ばれる人もそのメンバーなのだろうか。

「ってことはハルキも相当凄いやつなのか!?」
「もしかしてこの世で最強の魔法使いの卵とかだったり……」

 享介も穂乃香も周りの人がすごい人だらけで混乱しているのかテンションがおかしい。

「いや、ただの一般兵士の子だけど。身を置くところがないとかなんとか」
「は?つまんな」
「悪かったな、つまんなくて」

 その場に笑いが起こる。

「ま、私たちの紹介はそんな感じね。それで何があったのかはというと二年前に遡るんだけど……話長くなりそうだし、トイレとか行くなら今のうちだけど」
「いや、大丈夫っす」
「そ。それじゃあ、話すから分からないところあったら聞いてもいいからね」






 ️後日談 ️

ハルカと享介の会話

«魔法名»

「なぁハルカ。皆魔法使う時に技名言うよな」
「んん、まぁそうね」
「あれどういう意味なんだ?言葉として出すことで力を強めるとか、歴史上で使われた魔法を再現してるから著作権的な意味で使ってるとか」
「え?そんなの無いわよ」
「へ?」
「皆言いたいから言ってるだけだし。言ってしまえばかっこつけてるだけよ。まぁ名前あった方がかっこいいのは事実だしね」
「なんだそれ」

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