Traveる

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2-11 出せない力

 戦いが始まった。アツシとハルキが時間稼ぎをしている間にハルカと穂乃香は逃げる。

「どうするの?」
「相手のあの強さ、もしかするとヒナに匹敵。いや同等くらいの戦闘力を持っているわね。正直今のあの二人には勝ち目がない。少しでも耐えてくれることを信じてヒナと合流するわよ」

 あのホムラさえ遊んで勝てるヒナと同等。正直穂乃香にはどれくらいの力があるのか全く検討がつかなかった。それでも

「逃げるしかできないなんて……」

 穂乃香のこぼした言葉にハルカも俯く。

「仕方が無いよ。相手が相手だし。でもその気持ちは私も分かるなぁ」




「あなた……何者ですか?」

 襲撃者である金髪の少女はハルキを片手で摘みながら話す。

「あなたくらいの強さならこの業界でも少しは名が出るはず。それにさっきからずっと手を抜いていますね。本気でやれば私くらいはハエを潰すかのように瞬殺出来るはずなのに」

 金髪の少女はハルキを適当な所に投げ捨て、アツシに近づく。

「ま、本気を出せばお前なんか目じゃないんだがな。生憎俺の魔法はお前なんかに使うほど安いもんじゃないんだわ」
「こちらとしては好都合ですが。それで本当によろしいのですか?」
「時間さえ稼げればそれでな。お前、一回ヒナと交戦して優勢だったから調子に乗ってんのかも知らねぇが、あいつは一人でも戦える仲間が入れば化け物クラスに強くなるからな」

 金髪の少女は少しうろたえるがそれ以上体制を壊さない。

「まぁいいです。ならば合流する前に殺ればいいだけですから」

 そこから無気力な少年と襲撃者の金髪の少女の戦いが始まった。数分も経たないうちに決着が着く。




 時間にして五分程か、ハルカと穂乃香は真っ直ぐに続く道をひたすらに逃げる。しかし

「……っ!アツシたちがやられたっ!来るよ穂乃香!」

 ハルカが伝えた数秒後には背後に人影が見える。だが残念なことだけではなかった。

「ハルカちゃん。前見て、あれって」

 よく見るとこちらを発見したのかヒナが向かってきてくれている。しかし、享介と走る速さを合わせているせいか、襲撃者である金髪の少女より走るのが遅い。このままではヒナが来る前に穂乃香がやられてしまう。

「……お覚悟をっ!」

 音速かと思われる金髪の少女の槍での攻撃が襲いかかる。

「もうやけくそだぁぁぁーっ!!」

 無駄だと分かっていてもハルカが穂乃香と金髪の少女の間に割って入る。

「……っ!?」
「せやああああっ!」

 ハルカが即座に土の剣を使い攻撃を防ごうとする。正直ヒナだけでなく、享介や穂乃香も諦めかけていた。ヒナと同等クラスの人物の攻撃など受け止められるはずがない、と

 しかし、攻撃は受け止められた。

このことに1番驚いたのはハルカだろう。

「つっ……」

 金髪の少女は悔しそうな顔で睨み、ハルカをそのまま薙ぎ払う形で吹き飛ばす。

「次こそはっ!」

 しかしその攻撃はヒナの魔法で作られた双剣に防がれる。

「間に合ったっ!!」
「邪魔です!ひーちゃん!二本の剣にっ!」

  そこから別次元の戦いが始まる。お互いの二本の剣が交差し合う。その速さは音を置き去りにし、剣先がギリギリ見えるくらいだ。

「ねぇ。私実は攻撃に関してはあまり得意じゃないんだよね〜」

 猛烈な戦いの中、ヒナが話しかける。

「でもその代わり防御に関してだけは右に出るものはいないと思っているの。怪物級とかはまた別だけど」
「何を言って……」

 その時、金髪の少女の二本の剣の攻撃がヒナの双剣とぶつかる。衝撃で武器と武器とで火花が散っている。そんな状況でヒナはニヤッと笑った。

侵食する氷クロードアイス!!」

 ヒナがそう唱えると、ヒナの武器から氷が伝わり、ヒヒイロカネだけでなく金髪の少女の腕までを凍らせる。

「っ!?」
「この魔法は相手の動きを制限するの。まぁ反動で私の腕まで凍っちゃうけど」

 金髪の少女は必死に腕を動かそうとするが、何も起こらない。

(攻撃として満足に動かせるのは足だけ……っ)

「さてその状況でハルカの攻撃を避けきれるかな?」
「……!!」

 金髪の少女の背後にハルカが土の剣を握り、斬りかかろうとする。

「あなたくらいなら足だけで充分です!!ひーちゃん!剣に……!」

 そう言うと襲撃者は口から金色に光る何かを吐き捨てる。

「まさか……分裂したヒヒイロカネの一部っ!?」

 襲撃者は足で剣を器用に握り、構える。

「せやっ!」

 ハルカが斬りかかったが足の力だけで受け止め、弾き返した。

「うっそおー」
「……ひーちゃん大鎌に!」
「!!……まずいっ侵食する氷クロードアイス解除っ」

 襲撃者は鎌を足だけで回してヒナを威嚇する。流石のヒナもこの攻撃を避けるために術式を解除した。

(ヒナは遠ざけた。もう一人のやつも弾き飛ばした。異世界人を殺るなら今しかない!!)

 襲撃者はすぐに体制を立て直し、走り出す。狙いは享介だった。特に理由はなく、ただ穂乃香より近い所にいたというだけに他ならない。

(もうこれほどのチャンスは訪れないっ!!ここで決めきらなければっ……っ!!)

「あぁぁぁぁーっ!」

 金髪の少女の全力の攻撃が享介に向かう。それに遅れながらもヒナが攻撃を防ごうと動き出す。

「駄目っ!体制が崩れてとても間に合わないっ!」

 そう思い、半分諦めかけていたが……

 ヒナの防御が間に合った。

「……!?」
「うぅっ……」
(何故……完全に間に合う間合いじゃなかった……まさか手を抜いた……?この場でそんなこと……それかまさかっ!!)

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