Traveる
2-10 ヒナの危険信号
享介とヒナが、謎の襲撃者の少女に襲われているちょうどその頃、ハルカと穂乃香はハルキとアツシと合流し、イルルカショーを楽しんでいた。
「それにしてもヒナ見つからないわね。こういうイベントには絶対顔を出すのに……。まさか道に迷ってるとか!?」
「うっせぇ。ショーに集中できねーだろ。ちょっと黙っとけよ。こんなだだっ広い会場なんだ。俺たちが合流できた方がラッキーだったんだって」
なんだかんだ言ってハルキはハルカの話にも耳を傾けているようだ。
「本当に何も起きてなければいいけれど……」
そう呟いた穂乃香の言葉がフラグになっているとは誰も思ってはいなかった。
そしてショーも終わりに近づいてきた頃、享介とヒナはハルカたちと合流するため、ようやく会場へと辿り着く。
「このどっかにいるはず。それじゃあ手っ取り早く……」
それだけ言うとヒナは大きく手を広げ魔法を唱える。
「何をしたんだ?」
「信号を送ったの。私の魔法は氷と思われがちだけど、本質的には水属性なのよね。そんで大気中の僅かな水分を振動させて不自然な熱を作り出したの。一般人に対しては異様な暑さでの人払いにもなるし、団長たちには私のこの魔法が危険信号ってことになってるから、効果範囲に入ったら警戒も出来るだろうし。とりあえず効果範囲はそんなに広くないから走り回って広げるわよ。ついでに周りを見ても探しといてね」
魔法を極めればそこまでの力を得ることも出来るのか……もはや規格外だな、と享介が感動してる暇もなくヒナは走り出してしまう。とりあえず大変な事は、ヒナにとっては早歩きくらいのつもりだろうが、享介にとっては全力で走ってギリギリついていけるくらいの速さなので享介には辺りを探す余裕などなかった……
ヒナが走り出した頃、謎の襲撃者の少女は水族館の売店にいた。
「……やっぱり、わからない」
金髪の少女は殺害対象である少年から貰った不思議な食べ物、ぷる-ぷる-ポテチ(今回はバナナチョコミントハワイアン味)を買ってみている。相変わらずよく分からない食感をしており、もし見せるとしたらモザイクが必須だろう。そんなことを考えていた。
「違う。そうじゃない」
この金髪の少女がここに来たのはこの意味のわからない食べ物を買いに来たのではない。三人の異世界人を殺しに来たのだ。一人はすでに殺めている。一瞬目的を見失いかけた。
「でもあの人を出会い頭に殺したらこのお菓子とも出会ってなかった……」
思い出したかのように呟く。そして俯きながら言葉を漏らす。
「……やっぱり殺しはしたくないですね……」
金髪の少女がそう呟いたと同時刻、ハルカたちも異変に気づく。
「なんだ?いくらショーが終わったからといっても他の客が帰るのはやくないか?」
最初に呟いたのはハルキだった。それに違和感を覚えたアツシが動き出す。
「これはヒナの魔法だな。その中でも俺たちに危険を知らせる部類のものだ。これはやばい敵がきたのかもな」
「敵……ですか?」
穂乃香が聞く。
「とりあえずヒナと合流しましょう。この魔法の効果範囲にいるということはそれほど遠い所にはいないはずだし」
ハルカは会場を見渡す。
「見たところ会場には居なさそうね。これだけ人が減れば見間違えていることもないでしょう。ひとまず相手の戦力もわからないし、このまま固まって動くわよ」
そしてハルカたちがヒナと享介を探し始めて数分後。金髪の少女は見つけてしまった。異世界人の少女。殺さなくてはいけない人。もしかしたら、さっきの少年のように話してみたら新たな発見をもたらしてくれるかもしれない。そう思うと金髪の少女は胸が痛くなる。
「ですが、これが私の任務。ここが私の居場所。誰かに必要とされている。だから私はやる……」
半分自己暗示のように言葉に出し、覚悟を決める。対象者が話している時に不意をついて一気に終わらせる。
チャンスが来た。
金髪の少女は異世界人である穂乃香へと一直線に走る。
「ひーちゃん……一本の長い槍にっ!!」
金髪の少女の武器、ヒヒイロカネが反応する。穂乃香が振り向いたがもう遅い。かわせるような間合いじゃない。
しかし、攻撃は穂乃香には当たらなかった。
「っ……!?」
防いだのは二十歳ほどの男、アツシだった。近くにあった鉄の手すりを強引に壊して武器として振るったのだ。
「大体狙いは異世界人だとは思ってはいたが……ヒナが危険反応を出したのはこいつに対してか……」
「アツシさん……!」
「余裕ですね。よく受け止めたと褒めたいところですが……っ!?」
そこで金髪の少女はアツシを武器ごと押しのけようとしたが微動だにしない。
「残念だったな。ヒナにはそれで良かったかもしれないがこと力に関してだけは俺のが強いんだわ」
逆にアツシが武器を振り回し襲撃者を押しのける。穂乃香はいつも寝てばかりいたアツシがこんなにも強いと初めて知る。
「ハルキ。援護頼む。団長は穂乃香のそばにいてやってくれ」
ハルカとハルキが頷く。すると戦況が一瞬にして動き出す。
「穂乃香……!」
ハルカが穂乃香のもとへ走る。
「あの人は……?」
「わからないわ。でも相当な手練みたいね。とりあえず逃げるわよ」
この言葉が聞こえたのか金髪の少女がこちらに向かってくる。しかしその歩みをハルキが止める。
「おっと、通りたければ俺を倒してからにしろよな?今のうちだぜ団長!」
「ありがとう!」
二人に背中を預け、ハルカと穂乃香は廊下を走っていった。
「それにしてもヒナ見つからないわね。こういうイベントには絶対顔を出すのに……。まさか道に迷ってるとか!?」
「うっせぇ。ショーに集中できねーだろ。ちょっと黙っとけよ。こんなだだっ広い会場なんだ。俺たちが合流できた方がラッキーだったんだって」
なんだかんだ言ってハルキはハルカの話にも耳を傾けているようだ。
「本当に何も起きてなければいいけれど……」
そう呟いた穂乃香の言葉がフラグになっているとは誰も思ってはいなかった。
そしてショーも終わりに近づいてきた頃、享介とヒナはハルカたちと合流するため、ようやく会場へと辿り着く。
「このどっかにいるはず。それじゃあ手っ取り早く……」
それだけ言うとヒナは大きく手を広げ魔法を唱える。
「何をしたんだ?」
「信号を送ったの。私の魔法は氷と思われがちだけど、本質的には水属性なのよね。そんで大気中の僅かな水分を振動させて不自然な熱を作り出したの。一般人に対しては異様な暑さでの人払いにもなるし、団長たちには私のこの魔法が危険信号ってことになってるから、効果範囲に入ったら警戒も出来るだろうし。とりあえず効果範囲はそんなに広くないから走り回って広げるわよ。ついでに周りを見ても探しといてね」
魔法を極めればそこまでの力を得ることも出来るのか……もはや規格外だな、と享介が感動してる暇もなくヒナは走り出してしまう。とりあえず大変な事は、ヒナにとっては早歩きくらいのつもりだろうが、享介にとっては全力で走ってギリギリついていけるくらいの速さなので享介には辺りを探す余裕などなかった……
ヒナが走り出した頃、謎の襲撃者の少女は水族館の売店にいた。
「……やっぱり、わからない」
金髪の少女は殺害対象である少年から貰った不思議な食べ物、ぷる-ぷる-ポテチ(今回はバナナチョコミントハワイアン味)を買ってみている。相変わらずよく分からない食感をしており、もし見せるとしたらモザイクが必須だろう。そんなことを考えていた。
「違う。そうじゃない」
この金髪の少女がここに来たのはこの意味のわからない食べ物を買いに来たのではない。三人の異世界人を殺しに来たのだ。一人はすでに殺めている。一瞬目的を見失いかけた。
「でもあの人を出会い頭に殺したらこのお菓子とも出会ってなかった……」
思い出したかのように呟く。そして俯きながら言葉を漏らす。
「……やっぱり殺しはしたくないですね……」
金髪の少女がそう呟いたと同時刻、ハルカたちも異変に気づく。
「なんだ?いくらショーが終わったからといっても他の客が帰るのはやくないか?」
最初に呟いたのはハルキだった。それに違和感を覚えたアツシが動き出す。
「これはヒナの魔法だな。その中でも俺たちに危険を知らせる部類のものだ。これはやばい敵がきたのかもな」
「敵……ですか?」
穂乃香が聞く。
「とりあえずヒナと合流しましょう。この魔法の効果範囲にいるということはそれほど遠い所にはいないはずだし」
ハルカは会場を見渡す。
「見たところ会場には居なさそうね。これだけ人が減れば見間違えていることもないでしょう。ひとまず相手の戦力もわからないし、このまま固まって動くわよ」
そしてハルカたちがヒナと享介を探し始めて数分後。金髪の少女は見つけてしまった。異世界人の少女。殺さなくてはいけない人。もしかしたら、さっきの少年のように話してみたら新たな発見をもたらしてくれるかもしれない。そう思うと金髪の少女は胸が痛くなる。
「ですが、これが私の任務。ここが私の居場所。誰かに必要とされている。だから私はやる……」
半分自己暗示のように言葉に出し、覚悟を決める。対象者が話している時に不意をついて一気に終わらせる。
チャンスが来た。
金髪の少女は異世界人である穂乃香へと一直線に走る。
「ひーちゃん……一本の長い槍にっ!!」
金髪の少女の武器、ヒヒイロカネが反応する。穂乃香が振り向いたがもう遅い。かわせるような間合いじゃない。
しかし、攻撃は穂乃香には当たらなかった。
「っ……!?」
防いだのは二十歳ほどの男、アツシだった。近くにあった鉄の手すりを強引に壊して武器として振るったのだ。
「大体狙いは異世界人だとは思ってはいたが……ヒナが危険反応を出したのはこいつに対してか……」
「アツシさん……!」
「余裕ですね。よく受け止めたと褒めたいところですが……っ!?」
そこで金髪の少女はアツシを武器ごと押しのけようとしたが微動だにしない。
「残念だったな。ヒナにはそれで良かったかもしれないがこと力に関してだけは俺のが強いんだわ」
逆にアツシが武器を振り回し襲撃者を押しのける。穂乃香はいつも寝てばかりいたアツシがこんなにも強いと初めて知る。
「ハルキ。援護頼む。団長は穂乃香のそばにいてやってくれ」
ハルカとハルキが頷く。すると戦況が一瞬にして動き出す。
「穂乃香……!」
ハルカが穂乃香のもとへ走る。
「あの人は……?」
「わからないわ。でも相当な手練みたいね。とりあえず逃げるわよ」
この言葉が聞こえたのか金髪の少女がこちらに向かってくる。しかしその歩みをハルキが止める。
「おっと、通りたければ俺を倒してからにしろよな?今のうちだぜ団長!」
「ありがとう!」
二人に背中を預け、ハルカと穂乃香は廊下を走っていった。
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