Traveる

Nowttel

2-6 特に何事もなく到着

 それは暗い部屋だった。二人の少女が、話をしていた。片方は黒い服に身を包み、年齢は14歳くらい。腰まで伸びている長い金髪で手には可愛い熊のぬいぐるみを持っていた。もう一人は年齢でいうと17歳くらい。白を基調とした綺麗でいて動きやすい素材でできたドレスを着ているが長い間手入れされていないと思われる、ゴワゴワとしたピンク色の髪が清潔さを失わせている。

「おい。お前に暗殺の命令だ」

 ピンク髪の少女は告げる。その言葉に金髪の少女は顔を背ける。

「異世界の人間がまた迷い込んだようだ。数は二人。ついでに前から噂になっていた動物園に一人。合計三人を抹殺してこい」

 その言葉に慈悲はなかった。金髪の少女は問う。

「本当に殺さなくてはいけないんですか?」
「ああ。それ以外の奴は好きにすればいいがこの三人だけは確実に仕留めてこい。これは命令だ」

 ピンク髪の少女の言葉に目を背けながらも金髪の少女は立ち上がる。

「分かりました……」





 そんなこんなで数日が経った。享介も穂乃香もハルカに教わりながら家事を手伝い、徐々にこの生活にも慣れてきた。毎日お昼になると魔法の練習を欠かさずにしていたが、二人とも全く使えるようにはならなかった。そして……

「見えたぞ!あそこが動物園のあるトーフの街だぜ」

 アオイのその言葉を聞き、皆が窓をのぞき込む。すると遠くの方に大きな街並みが見えてきた。真っ白な真四角の家が海沿いにズラッと並んでいる。

「ねぇ知ってる?トーフの街は確かお饅頭が美味しいって有名なんだよ」

 ヒナの豆知識にハルカが答える。

「ヒナ。そんなことよく知ってるね」
「ここには昔よく来てたんだよねぇ……」

 そう話すヒナの目は泳いでいた。何かを察したかのようにハルカが話題をそらす。

「ま。お饅頭は後で買うとして、早速上陸の準備をしましょう」

 ハルカの言葉に一同は「おおー」と賛同し、各々準備を始めた。






 街の麓の森で享介、穂乃香、ハルカ、ヒナ、ハルキ、アツシは天空城を降りる。

「そんじゃ俺様は留守番しとくからな。せいぜい楽しんでこいよ。あとお土産も忘れんじゃねぇぞ」

 アオイは城のメンテナンスをするために残るらしい。

「それじゃ。動物園へ向かいましょう!」

 しかし周りはあまりノリが良くない。

「あ、私行きたいところあるからちょっと外すね」

 とヒナ。

「俺もちょっとな」

 とハルキまでもが言う。

「それじゃ、後で水族館ね」
「あれ?皆で仲良くムードじゃ……」

 と、享介が問おうとする前に二人は風と共に消えてしまった。どっちに向かったかも分からないスピードだった。ん?水族館?

「ごめんね。あの二人にもいろいろあるのよ。特にハルキなんか実の親を異世界人に殺されちゃってるしね……」

 ハルカの突然の爆弾発言に二人はたじろぐ。

「えぇ……。初耳なんですがそれは……」
「それって、私たちと一緒にいて大丈夫なの?」
「大丈夫よ。彼はあのホムラと違って異世界人って括りで敵意を持ったりはしないわ。でもできれば極力避けたいくらいで思ってるはずよ」
「そうだったのか」

 ということはこの天空城の住民は、孤児の集まりなのだろうか。皆がやけに若い人しかいないのでそうも考えられるかもしれない。

「それで、アツシはどうする?」

 話を振られたアツシは眠そうに話す。

「あー。ゆっくりできそうな所があったらそこでゴロゴロしとくかな。途中まで一緒に行こうぜ」





「きゃーーーーーもんもんまんもんの赤ちゃんだぁーーーー可愛いぃぃぃ」

 動物園に来るやいなやハルカは一目散に駆けていった。目の前にいるのは変な名前をした丸っこい動物(?)だ。愛らしいと言われればそうかもしれないが目がこちら側を馬鹿にしているように見え、ずっと見ているとなんかイラッとしそうだ。因みに大人になると魔法を覚え、人を襲うらしい……。

「あーーーー!あっちにはぴーぴがいる!ほら穂乃香!あそこあそこ!」

 そういい、ハルカは穂乃香を連れて駆けていった。

「はぁ。あいつはしゃぐと目的を見失うよなぁ。おーい。ハルカ!」

 因みにぴーぴとは黄色い色をした飛べない鳥らしい。昔は食べられていたらしいが、あまりの捕まえやすさと美味しさによる乱獲で絶滅が危惧され、今は捕ることを禁じられているらしいが……





 何やかんやいろいろな所を回ったあとでようやくこの動物園にいる異世界人のエリアまでたどり着いた。アツシは途中で居心地のよい椅子を見つけたらしく、今は別行動をしている。

「ええっと……ここにいる異世界人の名前は宅野拓蔵っていう人?」
「そうその人よ。ほら話してきなさい」

 ハルカに言われるままに檻の前まで進む。そこには2〜30歳ほどのおじさんがいた。

「うわっ……典型的なサラリーマン……」

 思わず享介はそう呟いてしまった。しかしそのこの世界にはない文化の言葉に男は反応した。

「なんや。懐かしい言葉が聞こえたな。おめぇさんらもしかして異世界人ってやつか?」
「は、はい」
「ほーん。おもろいやないけ。ちょっと話そうやないか。ほれ裏までこい」


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