Traveる

Nowttel

2-4 地下世界の薔薇園

「……んふふ……起きて……享介……」
「!!」

 俺は金縛りに遭ったように動けなくなった。精神的にも、物理的にもだ。何故かって……ヒナが俺の上に、体重をかけない体制で覆いかぶさっていて……いままさにその整った顔を、ゆっくりと俺の顔に近づいけてくるところだったからだっ。

「ほーら……早く起きないと……いたずらしちゃうぞ?」

 ……な、なな……!?ち、近い、近い近い!やばい!動けない!なんでこいつそんな体制でこんな強い力で押さえつけられるんだっ!?腕をガッチリと掴まれ身動き取れない。……そしてヒナが顔を近づけ、ぎゅっと目を瞑ってきた……これはまずい。何が何だか理解が追いついていないがやばいということだけはわかる!俺が動けずに動揺していると、ドカーン!という豪快な音とともに、ヒナの「ぎゃふん」という悲鳴と彼女の顔が倒れてきた。

「な、なんだ?」

 見ると部屋の扉当たりに右手に石の剣を構えて、エプロン(?)のようなものをしたハルカがいた。

「ヒナ!!朝ごはん作るのサボってなにやってんのよ!」
「あ痛た……っふふ!だって!反応が面白いんだもん!焦って変な顔になってたし!ハルキもアツシも全然焦んないからからかいがいがないし、やっぱり享介サイコーだよ!」

 褒められて……ないな。てかこいつ石の剣で思いっきりぶっ叩かれたのに痛いで済むとか体頑丈すぎるだろ……

「はぁもう仕方ないわねぇほらさっさと戻って朝ごはんの支度するわよ」
「あー、次は穂乃香ちゃんを起こしにいくからごめんねー!それじゃ!」

 そう言い残しベットから飛び跳ねて、一目散に部屋を出ていった。人生楽しんでそうだなぁ……

「もう……仕方が無いわね……」

 ハルカがそういった後、女子部屋の方から穂乃香の悲鳴が聞こえてきた……。






「さて!ご飯も食べ終わったところで、これからはどうするの?団長!」

 俺たちは朝ごはんを頂き、リビングのようなところで休憩をしていた。ちなみに朝ごはんは木の実をすり潰して作ったパンのようなものだった。俺も何言ってるのか分からないがそう表現する以外に説明出来ない。

「そうね……とりあえず今は動物園に行くつもりよ。確かそこに異世界人がいたはずだし……ほら、貴方達も同じ世界の人と話せばいろいろ参考になることもあるだろうし!」
「つっても団長遊びたいだけだろ」

 ハルキの的確な一言でハルカがたじろぐ。

「でも、いいんじゃないか?たまには羽を伸ばして遊ぶのもさ」

 アツシが寝むそうながらも会話に参加する。でもハルカの奴は昨日娯楽区で遊びまくってんだよなぁ……

「だっしょ!てことでアオイ!動物園のある街へ頼んだわよ!」
「ああはいはい。俺様はいいけどよぉ、ここからだとマックスで飛ばしても五日はかかるぜ?」
「そんな遠い所にあるんですか!?」
「と言うよりこの城自体あまりスピードを上げられないのよね……。なんたってあまりに大きすぎるからいくら透明でも変な風が生まれちゃうと怪しまれちゃうから。見つかったら大変なことになるし」

 穂乃香の驚きにハルカが説明する。てかこの馬鹿みたいにでかい城は一体全体なんなんだろうか。それにハルカ達はどういう繋がりなのだろうか。ハルキみたいな子供からヒナのような圧倒的な強さを誇る者まで色々いる。皆が幼馴染で秘密基地として城を作りましたーとは到底想像がつかない。

「ま、これからの予定も粗方決まったし、皆!動くわよ!ハルキは今日も食料の調達お願いね」
「はぁ!?二日連続はおかしいだろ。大体昨日はお前の番だったってのに!」
「いやだってヒナが行ったら大変なことになるのは分かるでしょ?アツシは寝てるし、そして私はこの子達にここの案内をしたいし」

 確かにヒナの性格上狩りすぎて生態系にまで影響がでそうな気もする。アツシは……このグループでどういう位置関係なのか。イケメンだから優遇されてる説十分にある。

「ぐぬぬ……そうやって俺をパシリやがって。くそぅ」

 反抗するのを諦めたのか踵を返し風とともに消える。地上に降りたのだろうか。

「ヒナはいつも通り庭の手入れとか氷の入れ替えとかをお願いね」
「ほいよー」
「んじゃ、俺様も落ちるわ」

 そういい、アオイも通信を切る。ヒナは……もういない。もうどこかに向かったのだろうか……

「それじゃ、私たちも行きましょうか!どこから回る?」
「そう言われても何があるのかサッパリなんだが」
「ま、それもそうよね。適当に回りましょうか!」






 ハルカに連れられて城のエレベーターの前まで来た。エレベーターといっても電気ではなく魔法で動いているようだが。

「さーて下へ行くわよ。因みに地下1番深いところにアオイのいる操縦室があるの。今から行くのは1個下の階だけどね」
「ハルカちゃん。下の階には何があるの?」
「ふふっ!見ればわかるわよ!」

 言われるままにエレベーターに乗り下っていく。すると目の前に光が差し込んできた。どうやらエレベーターの片面はガラスになっており地下全体が見渡せるようだ。そこから見えたものはものすごく綺麗な物だった。まず、中央にものすごく大きなダイアモンドの塊のようなものが見える。恐らくヒナが作り出したもので、この城全体の水の補給をしているのだろうか。そしてその水の恩恵を受け、その周りには一面のお花畑が広がっていた。この世界の花の特徴なのか一部の花は光を発している。そのせいか地下というのに明るく、そして暖かささえ感じる。俺たちがその景色に見とれていると地下一階の地面に到着した。

「どう?いい所でしょ?ヒナがこのお花が好きって言いやまなくていっぱい育てているのよ」

 本当に沢山のお花が咲いている。光も水も十分にあり、花たちにとっては最高の環境だろう。

「ハルカちゃん。これって……薔薇だよね。綺麗……」
「そうなの?そこまでは私も分からないけど」
「色々な色の薔薇が咲いてるな。すげぇ」
「中でもオレンジ色の薔薇が多いね。他の色も凄く多いけど……」

 それぞれがその圧倒的な空間に魅了されていると、仕事を終えたヒナがやってきた。

「団長!氷足しといたよ!ってみんなどうしたの?」
「これ。薔薇ですよね。綺麗で素敵です!」
「え〜!穂乃香ちゃん分かるの!いいよねぇ!この花!特にオレンジの花が……」

 ヒナは途中まで言いかけて俯いた。

「あ、ううん?何でもないよ!存分に見ていっていいから!私はこの後もやることあるし、それじゃあねーバイバーイ!!」

 そういい、一目散にかけていった。あの間は一体なんだったのだろうか。

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