Traveる

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1-6 享介の作戦

「それでこんな所に登ってどうするつもりなの?」

 捕まってしまった穂乃香を助けるべくフレア城にやってきた享介とハルカは跳躍のポーションを使い城の屋根部分にいた。屋根は所々がガラスになっており、ある程度は中が見えるようになっていた。

「とりあえず上から穂乃香ちゃんがいる所を探そう。そして一気に助けて逃げる。それしかない」
「へぇ~ 穂乃香がいないところでは火神さんじゃなくて穂乃香ちゃんなんだあ〜!!」
「う……」

 しまった……口が滑ってしまった。

「ふーん。ま、今のは聞かなかったことにしておいてあげるわっ!」

 何か弱みを握られた気がする……

「そいで?私はどうすればいいの?」
「とりあえず俺に話を合わせてくれればいい。穂乃香ちゃんが危なくなったら石の剣で守ってくれ。でも本当にいいのか?失敗したら俺たち二人もまとめて捕まるぞ?」
「いいよ。助けられる可能性があるってんなら試してみないと勿体無いものね!それにさ、もっと穂乃香といろんなことして遊びたいし……もちろん貴方もそして今度は私の仲間たちとも一緒にね!」
「そうだな。これが終わったらまたみんなで異世界旅行でも楽しみますか!」
「そうね。……ん?あれって……」

 よく見るとそこには大人数の兵士に囲まれた穂乃香がいた。

「……見たところ兵士しかいないわね。もしかしたらリーダーが不在な可能性が微妙に存在してそう……これはチャンスかもよ……」
「そいつは願ったり叶ったりだな。」

 つまりそれだけでも敵の戦闘力は半減していると言っても過言ではない。乗り込むなら今しかないということか……

「それじゃあ、行きますか……」







 そのころフレア城内部では捕まえた穂乃香をどうするかの討論が行われていた。普段このような大事はリーダーのホムラが処分を決めるのだが、あいにく今は留守である。

「どうするべきなのか……」

 兵士の一人が呟く。

「何も考えることなく殺すべきだ。異世界人なんて何しでかすか分かりゃしねぇ……」

 その恐ろしい言葉に穂乃香が震える

「だがリーダーの意見も聞かずに行動するのは得策ではない!もしかすると王国との取引に使うかもしれねぇし」

 ここの兵士達は統率力が高いことで有名だ。意見が割れても喧嘩などには発展せずお互いの意見を聞き合い、最善手を導き出すのがここでのやり方だった。

「とりあえずリーダーが帰ってくるまでこの娘が変な気を起こさぬよう見張っておこう」

 兵士たちがとりあえず待機の道を選んだ、その時だった。

「いや、火神さんをそんな所に放っておくなんてさせねーぜ」

 屋根から一人の少年が降りてきた。

「なんだお前……こいつの仲間か?」

 見たところ装備は手提げカバンと腰に大量のビンを付けているくらいだろうか。服はどこにでも売っていそうな普通のもので特にこちらの火属性魔法に耐性があるようなものではない。

「そういうことだ。さ、痛い目に合う前にさっさと火神さんをこっちに渡してくれたら嬉しいのだが……」
「何馬鹿なこと言ってやがる……そんな軽装で我らの魔法を防げるとでも思っているのか!?」

 すると兵士全員が少年を取り囲み魔法を撃つ体制に構える。すると少年は一つのビンを落とす。すると中から大量の粉が出てきて当たりを包み込んだ。

「おっと!これは  火炎耐性のポーション・・・・・・・・・・だ。しかもこれは特別製でな。迂闊に魔法は使わない方がいいぜ」

 もちろん。そんなことはない。ただの落下耐性のポーションである。しかしこれである程度牽制はできる。

「ちっめんどくせぇ。だがそれ以上動くんじゃねぇぞ。もし動いたらその鱗粉の範囲外にいるこの娘を消し炭にするぞ」

 しかし少年はそんな安い挑発には乗らない。

「あいにく、俺はじっとしてなんてられないんでね」

 そういうと少年は腰に付けていたビンに手をかざす

「させるかよっ!!」

 少年がビンを穂乃香に投げる前に兵士の一人が巨大な火の玉を投げつける。

「させないわ!」

 と、声が聞こえた時には火の玉が真っ二つに切られていた。ハルカは足元に火炎耐性のポーションと騙してある落下耐性のポーションを地面に投げつけ、穂乃香を守るように剣を構える。

「ちっもう一人仲間がいやがったか……」
「穂乃香!大丈夫?ほら助けに来たわよ!歩ける?」

 ハルカの掛け声に穂乃香が僅かに微笑む。

「よし。これで火神さんの安全も保証できた。んじゃ、ここからにげだすとしますか……」

 そういうと享介はハルカたちの方へと走る。途中に兵士が数人いたが軽く押しのけることができた。どうやら魔法は強くても力はあまりないようだ。

「よしこの先の通路を進むぞ!一定間隔でポーションを投げ続ければ魔法攻撃が飛んでくることは無い!」
「ええ!」

 三人は城の奥深くへと逃げていった。

「くそがっ!!逃がすかよっ……とでも言うと思ったか?」

 まんまと獲物を連れ帰られてしまったが兵士達は余裕の表情を浮かべていた。



  「残念だったな。そっちは行き止まりだ」






「はぁっはぁっ!とりあえず一定間隔でポーションは投げ続けてるけどもうそんなに数が余ってないわっ!このままだとポーションの効果範囲を抜けた瞬間魔法で黒焦げよっ!ちょっとリスキーだけどなくなったら跳躍のポーションで誤魔化す?」

「いいや、大丈夫だ。今は逃げることより、この落下耐性のポーションを満遍なく撒くことが重要だからな」

 ハルカは何をしでかすのか心配そうに見てくる。

「オラオラァ!?逃げてんじゃねぇぞゴラァ?」

 後から兵士たちが全力で追いかけてくる。それでいい。

「享介!前!行き止まりよっ!!」

 行き止まり越しに最後のポーションを投げつける。

「ふははっ!せっかく逃げ込んだのに行き止まりで残念だったな。あとはポーションの効果が切れるのを待つだけよ」

 兵士たちは勝ちを確信し、笑いほうけている。しかし享介は動じない。

「と、その気になっているお前らの姿はお笑いだったぜ。お前らの魔法って火を操るんだよな。いくら魔素とかいうので生み出しても維持するには酸素が必要なはずだ」
「はっそれがどうしたってんだよ」
「そろそろバラしてもいいかな」

 そう享介が言うとハルカは穂乃香に落下耐性のポーションとは違う水のようなポーションを飲ませ、自分も口に含む。享介もそれに続き服用する。

「今飲んだのが本物の火炎耐性のポーションだ。今まで投げていたのはただの落下耐性のポーションさ」
「はっ!そんなことどうでもいいさ。どちらにしろお前らはどうすることもできまい!両方のポーションの効果が切れるのを待つだけよ……」
「はぁそうかよ。でもいい感じに酸素もあるわ、無風状態でもあるし、今ここら一帯すごい危ない状態だから逃げた方がいいかもよ。まぁ火を扱うお前らなら爆発を耐えて生き残れるかもしれないが……」
「なんだ?安い挑発には乗らんぞ」
「いや例えばさ、鉱山とかで爆発事故が起きたりするだろ?あれって別に爆薬がどうとかじゃなくて鉱山で削った岩の微細な粉末が空気中に充満してるから、らしいんだけど」

 ここまで言っても気づかないあたりどうやらこの兵士たちはこの現象を知らないと見ていい。

「確か空気中に粉末が漂ってて、そいつに火が点くと酸素の燃える速さがすっげぇ速くなるらしいし」
「つまり何がいいたいのだ!!」


「あーそうだな。あんたら粉塵爆発って言葉、聞いたことあるか?」


 直後、あらゆる音が吹き飛ばされた。落下耐性のポーションが撒き散らされた、城の中全ての空間そのものが、巨大な爆弾とかした。まるでガソリンに火が点くように辺り一面の空間が爆発して炎と熱風を撒き散らした。



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