Traveる

Nowttel

1-1 異世界旅行!!

 
「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 享介と穂乃香はものすごい距離を落ちていた。
店の地下レベルの話ではなく宇宙から投げ出されたかのような気分だった。いや……確かになんかうまくいきすぎていた気はしてたけどさ……気づけば当たりは明るい。そして眼下遥か遠くには1面に広がる森が見える。何がどうなってるのか分からないが、このまま落ちれば怪我どころでは済まないだろう。つか本当にやばいっ!こんなスピードで落ちたら普通に死ぬ……

 そんな中、隣で一緒に落ちている穂乃香はというと恐らく怖さで失神している。まぁ、紐なしスカイダイビングがいきなり始まるなんてことが起こってしまったのだから無理もない。ちくしょう……俺はこんな所で死ぬのか……!?まだ……まだ穂乃香ちゃんになにも言ってないのにッ!こんな訳の分からない死に方で終わるのか?

「くそったれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 押し寄せる風に揉まれながらも力強く叫んだ。叫ぶ以外に何も出来なかった。そんな絶望のさなかふと隣から声が聞こえた。


「なんでいきなり空から落ちてきてんの?」


 享介は声のする方へ全力で体を向ける。するともう1人一緒に落ちている少女を見つけた。なんだこいつ

「いや……お前こそなんで落ちてんだよ……?」
「ん?私?それはねー。これを使ったの!」

 そういうとポケットから薬品のようなものを取り出した。

「じゃじゃーん!跳躍のポーション!これを飲めばものすごーい大ジャンプができるの!狩りの途中で鶏肉食べたいなぁって思いながら空見上げてたら、あーなんか落ちてきてるなーって見えたから何か確認しにきたんだけど?」

 薬ですか。これがスポーツならドーピング禁止法とかそんなレベルじゃないな。というかジャンプしてきたとは言うが地面はまだまだ到達しそうにもないほど遠く、にわかに信じ難い。てか鶏は空飛ばないと思うんですがあのその。

「いや……そんなこと……どーでもよかったわ。とりあえずそんなジャンプ力があるってんならお前は無傷で着地できるって事だよな!?お願いだ……助けてくれっ!?」
「自分から聞いといてそれは酷いと思うけど。あーでも私もこのままだったらやばいかなぁ」
「ふぁ?」
「いや。飛んだはいいけどこのポーション着地にまで対応してないのよねぇ……」

 馬鹿なの君?いやそうこうしてる間にもう地面すぐそこだよ?

「あ。でも大丈夫だよ!このもうひとつのポーション。これは落下耐性のポーションっていって」
「そんな説明してる場合かっ!?もう地面がすぐそ……」

 森に隕石が落ちたかのような衝撃が走った。
3人は仲良く地面に墜落した……






「っあ痛たっ……助かったのか……? っ!? てか煙っ? ゲホゲホッ!? なんだこれッ!? 」

 結論から言うと享介たちは生きていた。落ちた所は空から見た通りの森であっているのだがすごく煙たい。小麦粉でも撒き散らしたみたいだ。

「……こ、ここは?」

 どうやら穂乃香も目を覚ましたようだ。

「ゲッホゲホ。えぇとね。ここは町外れの森かな」

 答えたのは先程一緒に落ちていた3人目の人物だ。肩よりも長い茶髪の女の子で整った顔立ち、そしてなにより美しい人だった。見たところ年は享介たちとそれほど変わりなく見える。着ている服は黒のシャツに茶色のワンピース……か。そんでもってポケットが多く、腰には沢山の工具を付けている。……まるで異世界風の物語にでもでてきそうなおかしな服装だった。

「あー煙たいのは気にしないでね。これは『落下耐性のポーション』の副作用みたいなものだから」
「なんだそれ」

 聞くと少女は待ってましたかのように語り始める

「このポーションは使えば落下の衝撃を無くすことができる優れものなの!ただ飲むには粉っぽいし、粉塵としてばらまいて使うのも煙たくて面倒臭いのがたまにきずなんだけどね」

 そういえばあれほどの高さから落ちたのに全くダメージがない。どうやらそのポーションとやらの効果は本物らしい。

「大気中の魔素を特殊な呪法で加工して作るから生産コストも割と安くて助かってるんだけどね。普段はさっきの跳躍のポーションと合わせて空を飛んでる獲物の狩りに使ってるの」

 魔素?呪法?なんだそれ。そんな異世界転生物語やファンタジー世界にしか出てこない単語が本当にあるはずがない。かといって先程あのポーションの力を目の当たりにしたばっかりだ。それにこの少女は茶化している気もしない。これって……もしや……

「んと……するとなんだ……?ここは異世界とでもおっしゃりやがるつもりでせうか?」

 何気なく呟いた。そんなことはありえないと心のどこかで否定しながらもよく分からない現象を見て聞き、言葉を漏らさずにはいられなかった。

「そんなはずないでしょ〜。このご時世、異世界に転生とか召喚とかそんなの……」

 良かった。とりあえずこの娘がちょっと中二病をこじらせていたっぽいだけでそんなことあるはずが……

「……ありえるかも。ちょっと匂い嗅がせて!」
「ふぁ。ちょまてょ」

 そんないきなり匂いを嗅がせてなんて思春期のわたくしめにはハードルが高いんですがっ!っと、変な妄想をしていると隣であっけらかんとしていた穂乃香の匂いを嗅ぎ出した。べ……別に、悔しくなんてないんだからねっ!

「くんくん。まずいわね……貴方たちから魔素の匂いが全くしないの。」

 それってつまり……

「いきなり空から落ちてきたのも異世界に突き落とされたって解釈すれば納得できるし……そうね。貴方たち異世界人ね(真顔)」

 その少女はキリッと言った。もはや迷いなどないかのように

「まてまて、俺たちはおでん屋さんに入ろうとしただけなんだよ。なんでこんなことになってんだよ!」

 そういえばこちらの世界におでんという文化があるのかどうか全く考えてなかったので伝わるか僅かに心配したがあんまり気にしていないらしい。

「まぁ。……異世界人なんてよくいるし。聞いた話では突然床が消えて気づいたら落ちてたなんてよくある話らしいし……」

 おい。床が無くて落ちたなんて俺言ってないぞ。そんなよくある事なのかよ……

「も……元の世界に戻る方法はないんですか!?」

 不安そうでいまにも泣き出しそうに目を潤めている穂乃香が言う。こんな突拍子もないことに巻き込まれたのだから無理もない。

「んー。こちらの世界に来ることはあってもそっちの世界に行くっていうのは聞いたことないわね」

「そんな……」

  一般的に異世界転生をする小説の主人公は元の世界のことが好きではない人の方が多い。別の世界に行ってキャッキャウフフしたい願望をもったぼっち作家が自分もそうなったらいいなと思って書いてるからそうなる。しかし現実は違う。これからどう過ごせばいいのか、元の世界の友達や家族にはもう会えないのか、不安で動けなくなるものだ。現状の装備の確認とかしてる余裕などあるはずがなかった。

「とりあえず、よく分からないが落ちてきときに助けてくれてありがとな。俺は岸滝享介だ」
「わ……私は火神穂乃香です」

 俺がとりあえず挨拶をすると穂乃香も続いた。

「あーそれくらい気にしないでいいよ。ふんふん……享介に穂乃香かぁ。私はハルカ。よろしくね」




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