生きている

maya_yoko

生涯の恋

「俺の事、好きなの?」

不安げな顔のあなたから放たれた
その言葉に
静かに別れを思った






断片的に蘇る記憶
それは実兄から受けた性的虐待の数々
そしてレイプ未遂やストーキング、、、

いつも不本意に性の対象とされ
性に対する嫌悪感が募り
自己肯定感は削られていった

それでも人並みに恋をして
初めて相思相愛を経験した

少しずつ近づくその距離に
嬉しすぎて眠れない夜を過ごし
繋いだ手から気持ちが溢れ
初めて唇を交わした日
死を感じるほどの情動であった

あなたはいつも紳士的で
その日も互いの課題を広げながら
斜め45°に座ってぎこちない会話をし
お互いの気持ちが解れた頃
隣に腰を降ろし静かに髪に触れた
そしていつもより長いキス、、、
その唇が徐々に首筋、、胸元と降りていき
彼の手が優しく私の胸を包んだ

決して早過ぎず訪れたその時に
身を任せていた
心臓から過剰に血液が送られるのか
身体は風邪をひいたように火照った

大好きなあなたと結ばれる
その幸せを感じながら
もう一方で膨らむこれまでの惨事

経験した恐怖のフラッシュバック
そして自分は汚れているという
自己嫌悪感、、、


「嫌、、、」


予想外に出た自分の本音
それがその悲しい表情にしたのだ
大好きなあなたを傷付けてしまった
でもいつ?
いつになったら心のままに
あなたを受け入れられる?
そんな保証などない
傷付けてしまうなら傍には居れない
例え事情を話しても
悲しい思いをさせるのだから

一方的に別れを告げた手紙を
数ヵ月後にポストに入れた
何度かくれた電話を知らない振りをして
あなたの日常から私は消えた







正直に話せばきっと彼は
受け止めてくれただろう

「のんびり待っているよ」
そう優しく包んでくれただろう

幼い思いやりは
やはりあなたを傷付けた

せめてあなたの幸せを
遠くで祈らせて下さい


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