ツッコミ系ロリっ娘ちゃんは、魔王様。

NO.556

第一話 そこのイケメン君、どなたですか。

「……様、……様、起きてください。もうとっくに朝ですよ。」

 どこからか声がする。
 うるさいなぁ、まだ寝てたいのに。重たい瞼を無理やり動かし、私は目を開ける。うるさい声の持ち主に文句を言うために。
 しかし、目を開けてもそこには何もいない。

(ていうかこのご時世、“様”なんてお笑いじゃあるまいし、使ってる人見たことないわ)

 ……きっと夢の中の声だったんだろう。私も馬鹿すぎる。自分のこと呼ばれていると勘違いするなんて。当然ながら私のことを“様”付けする人なんていない。そういえば、夢の内容は自分の心理状態が影響すると聞いたことがある。幼稚園児ぐらいでお姫様願望は無くなったはずなんだけどな。まさか、心の奥底にそんな乙女的思考が残っていたとは……。
 もう一回寝よう。私は再び迫りくる眠りの波に抗うこともせず、枕の下に手を突っ込んで寝返りをうった。

「ふわぁ、おやしゅみ~」

 ベットの上から私をのぞき込んでいるイケメンに挨拶するのも忘れずに、ね。
 それにしても、ほわぁ、眠い眠い。





って、ハァァアアアアア!!!

 誰やねん。“ベットの上から私をのぞき込んでいるイケメン”って。いや、私一人暮らしだったよね。うん、何で人が、しかも知らないイケメンが部屋にいるのかな。ハァハァ、頭ん中がごちゃごちゃになってきた。とりあえず落ち着こうか私。落ち着くときには、数をどんどん足していけばいいんだよね。1,2,4,8,16,32,64,128,256……。
 急にぶつぶつ言いだした私に、かの不審者イケメン君は馬乗りした上から訝し気な視線を送ってきた。頭は大丈夫だよ私。だからそんな視線向けないで。



って、ハァァアアアアア!!!

 ハイッ、出ました!本日2回目のハァア!パチパチパチ!!
 ……じゃなくて、“馬乗り”!私、イケメンに“馬乗りされちゃってる”んですけど!!
どうしよう、なんかあって昨晩一夜の過ち犯しちゃったとか?でも全然記憶にない。
 ジーッと音が出るほど私に“馬乗り”しやがってるイケメン君を眺めて、私は必死に昨晩の記憶を呼び起こそうとする。
 はぁ、それにしてもこのイケメン君いい顔してんなぁ……。まさに眼福。漆黒と言っても差し支えないほどの真黒の髪の毛はつやつやで、一見怖そうに見える鋭い目は愁いを帯びたような曇り空の色をしているし、薄く形の良い唇も、スッと通った高い鼻も、なんかマジ、イケメン!ってしか形容できないくらい綺麗で……(私の語彙力に関しては突っ込んではダメだ!)
 イケメン君にみとれながらも、自分の語彙力のなさについて脳内で言い訳をし始めた私。それにイケメン君は訝し気な視線を通り越し、呆れたような視線を向けてきて言った。


「もう何時まで、寝ぼけてるのですか。魔王様。」


 ハイハイ、わかりましたよマオウサマ……。

 えっ……!!!?

  



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