異世界は神様とともに

うん小太郎

第一章 008 「危機」

「ミルバ、ごめんね。嫌な思いさせちゃって。嫌われ役をやらせちゃったよね」

「そんなことないわ。あの少年を拾った以上、いつかはやらなければならなかったはずよ」

 ミーニスの謝罪にミルバは首を横に振る。立ち上がりミーニスの頭をそっと撫でる。とても温かい感覚だ。優しさが伝わってくる。

「良かったのかな……」

「何が?」

「私たちが隠している深い過去があるように、ホープにも何かあったのかもしれないと思っ――――

 蛇車がおもむろに大きく揺れ、ミーニスの言葉が遮られる。

「何で揺れたの?」

 ミルバが不審に思い、玄関の方へ向う。外を見ると蛇車が止まっている。
 周りの木々はすべて枯れていて、朽ち果てている。

「ミーニス、タルボ!こっち来て!」

 何かが来ている予感がして、タルボとミーニスを呼ぶ。二人は走ってミルバのもとへ行く。そして、蛇車から降りる。
 ミルバの予感は正しく。3人が蛇車から降りた途端、原因は不明だが、蛇車が大破する。

「何が、起きてるの?ま、魔獣?」

 ミーニスが怯えた声で言う。ミルバはそれを見て優しく「大丈夫」と肩を叩く。

「これ、魔獣じゃないよ。僕の予想が正しければ、無の神の信者の仕業だよ」

 タルボが冷静に現状を分析する。
それを聞いたミーニスとミルバは周囲を警戒する。

「ホープはグルだったのね。最初から私達をはめようとしてたんだわ」

「それはどうかね……」

 ミルバがそう言うと、どこからか知らない男の声がした。

「誰!?」

 ミーニスはあたりを見渡す。誰もいない。ミルバも警戒をさらに強め、身構える。
 
「俺様は誰かと組んだ覚えはねぇな。それに無の神の信者じゃねぇ」

 三人は声のした方角を見る。木の上にそれは立っていた。
銀髪で赤い目をした男がこちらを見下ろす。そして男はジャンプして空高く舞い上がり、地面へときれいな着地をする。

「じゃあ、誰なの!」

「これから死ぬ奴らに名前を名乗る必要なんてあんのか?」

「貴様っ!」

 ミルバが頭に血を登らせ叫ぶ。冗談としても度が過ぎていると、三人は男を睨みつける

 そう。まだこの場にいる誰もが、自分の死の危機など感じていなかった






 ホープは行く宛などなく、ミーニス達が乗っている蛇車の後を追うようにトボトボ歩く。

 なぜ自分はこんなにまで絶望しているのだろうか。
 ただ数日間一緒にいた人たちに人に捨てられただけではないか。
 それも、自分のせいで。
 こんなこと、現実世界では日常茶飯事だったではないか。
 むしろ、現実世界の方がひどい捨てられ方だったし。

 そんなことを考えていると、目の前の人に気づかずにぶつかり、転倒してしまう。

「あぁ、坊やごめんよ。前を見てなかったんだ」

 ぶつかってしまった男性が謝罪をしてくる。こっちが謝るべきなのに。
しばらくして正気に戻ったホープが慌てて立ち上がり、謝罪する。

「今度は気をつけたまえよ」

 そう言って男性は過ぎ去ろうとする。だが、何かに気づいたようにこちらを振り向き、またこっちに戻ってくる。

「坊や、なぜそれを持っている?カルト様の加護を持つ人などいないはずだ!私でも持っていないのに……」

 男はわめきだし、ホープにさらに接近する。そしてホープの肩に手を置き瞳をまじまじと見つめる。

「坊やぁ、何者だ?どこでそれを手に入れたぁ!?」

 ホープは少しイラついた様子で方の手を振り払う。

「先に名乗るのが礼儀ってもんだろ」

「これは失礼。私の名前はベルケル·スケールス。カルト様の第四使徒」

「俺の名前はニトリ ホープ。肩書は別にないよ。カルトの加護は直接もらったもんだ」

 追われた質問に正直に答える。

「直接、だと…………?」

 ベルケルはうつむき、しばらく静止する。
そしておもむろに背中についた剣を手に取り、ホープに襲いかかる。
 ベルケルは縦に剣を一振りする。剣はホープにまったく届いていない。
だが、剣を振った事による風圧が生じ、ホープは後ろに吹き飛ばされる。
 状況を飲み込む前に、ベルケルがホープとの距離を瞬く間に縮め、今度は剣で斬りかかろうとする。

「っ……!!」

 ホープはバックパックの中から赤い球体――不知火を取り出し、変形させる。
 不知火に光がやどり、刀の形になっていく。
ホープがバルケルの斬撃を防ぐ頃には完全に刀の形になっていた。

「ほぅ、サーダル武器か」

「くっ……」

 バルケルが剣に力を更に込める。それに耐えきれないホープは力で押し切ろうとするのを諦め体を横にそらし、斬撃を避ける。
 避けられたバルケルの剣は地面に叩きつけられる。

「嘘だろ!?」

 バルケルが放った斬撃は地面に猛烈な亀裂を入れる。そして、ホープとバルケルのいた地面もろとも崩れ落ち足場がなくなってしまう。
 ホープはジャンプをしてなんとか安全地帯へと逃げる。

「なかなかやるな。坊やはきっと強くなれるよ」

「そりゃあ、どうも」

「そういえば、仲間がさっき蛇車を見つけたって言ってたな。私の仲間は人を無差別に殺すのが好きでね。少女2人と少年1人が今足掻いているようだ」

「なん、だと!?」

 間違いなく、ミーニスたちの事だ
 でも、なぜそれを俺に言う必要があったんだ?
 いや、今はそんなことどうでもいい。助けなければ
 
「今どこにいるんだ?」

「知り合いだったのか?それは失礼」

「どこにいるんだって聞いてんだよ!」

 ホープは乱暴に怒鳴り散らした。嵐のような形相でバルケルを睨みつける。

「さぁ、それは私にはわからない」

「ちっ」

 話しても無駄だと判断したホープはバルケルに背を向けて、とりあえず蛇車が走って行った方角に走り始めた。

 ミーニスたちが襲われている事を俺に伝えたということは、計画的なものなのかもしれない。
 だとしたら、一刻も早くミーニス達を助けなくては。
 
 ホープは走り続けた。

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