異世界は神様とともに

うん小太郎

001

 ――状況が飲み込めない。
目の前のおじさんは一体何を言いたいのだろうか。
 僕が死んだ?
おじさんの目の前で生きているではないか。

「混乱するのも無理ないだろう。憶えていないだろうが、お前は交通事故で死に、ここへと運ばれたのだ」

「死んだっていうのも納得いかないのだが。つか、おじさん誰?」
 すると少しおじさんは引きつったような顔をした。

「儂は神の使徒、カルトだ」

「神の使徒?随分偉いやつだな。カルトってのもかっこいいし。それより、ここはどこだ?」

「ここは“無”じゃ。お前等の言う、天国でも地獄でもない狭間の世界」

 ――狭間の世界……
全くピンとこないな。まずおかしいのは僕とカルト以外誰もいないことだ。
 ここが死者が来る場所であれば、数え切れない量の人がいてもおかしくはないはずだ。

「なぜ儂等以外誰もいないのかだって?それはな……」

「ちょっっとまったぁ!人の心を読むな!」

 何も言ってないのに自分の聞きたいことに答えるカルトにホープは焦ったように待ったをかけた。

「なんじゃよ、ただお前が聞こうとしていることを聞かれる前に答えているだけではないか。何をそんなに焦っとる」

「聞かれる前に答えているのが問題なんだよ!わけわかんね。まぁそれはいや。さっきの続きをしてくれ」

 色々モヤモヤしたが、埒が明かないと判断したホープは話を続けさせた。

「普通の死者たちはここに来る必要はないのじゃ。死んだその場でお前らの言葉で言う天国へと転送されるのだ」

「じゃあ何で僕はここにいるんだよ。それに、なんのための場所なんだ?」

 ホープは疑問を解消するたびに増えていく更なる疑問に頭を悩ませた。
そしてこの後もカルトとホープの会話は長く続いたのだった――


 ――カルトと話したことをまとめると、僕が死んでしまったのは交通事故だが、車を運転していたのはたまたま神のいるべき世界から僕らが住んでいる下界に降りてきていた神の使徒であるカルトだったのだ。
 その責任として普通の死者とは別の場所に呼び、お詫びをしたかったとのことであった―――

「その、お詫びってやつは何なんだ?死んだやつがもらって便利なものとかないと思うのだが」

 先程まで目の前の奴が自分を殺したと聞いて怒り狂っていたが、途端に冷静になったホープがカルトに聞いた。

「本当ならお前は死んだのだがら、お詫びの品は貰っても意味がない。だからお前には生き返ってもらう」

 一瞬何を言っているか分からなくなったホープ。まさかの言葉に何とも言えない感情が湧き出てきたのだ

「お前が生き返る場所は、お前が元いた世界ではない。これもお前らの言葉を借りるが、お前は異世界へと生き返る」

 更なるカルトの言葉にホープは呆然とした。なぜなら自分がずっと夢見てきた異世界へと行けるのだから。

「異世界に転生できるのか!?」 

「そうじゃ。てなわけで、転送するぞ〜」

 カルトは立ち上がり、転生の準備であろう事をし始めた。
 それに対してホープは焦るようにして言った。

「待ってくれ!このまんま行くのか?何か、チート的なことはないのか?僕、なんもできないからすぐ死んじまうよ」

「そうか。ならばこれを持っていけ。きっと何かの役にたつじゃろう」

 カルトは銀色のコインのようなものをホープに渡した。そして先程のように転生の準備であろう事を始めた。

「なんだ、これ?てか、まだ聞きたいことあるから待ってくれよ!」

 なんの説明もなしにいきなり異世界に放り込まれたらたまったもんじゃない。だが、聞く耳を持たずにカルトは最後にこういった。

「幸運を祈る」

 待って!と言おうとした時にはホープの意識はすでに無かった――


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