復讐の命 リキ
3/偵察/
酒場から退出して3時間が経過した頃、リキは偵察に出る前に自宅(スラムの場所に誰も寄り付かない唯一の中規模に及ぶ倉庫)に寄って身支度を済ませた。
(あの頃からもう5年か…もうそろそろだ皆、あと少しで俺の願いが叶いそうだぜ)
一度たりとも忘れたとこなどない、後悔の先に待っていた復讐心、それをいついつまでも悲願していた頃を懐かしくさえ思う。
(俺さえあんな事にならなければ今頃は残虐に死ねたのかもな。…っとこのことはあまり思い出さないようにしてたんだっけか、つい暗いことを思い出しちまったな。)
一息とても深く深呼吸をしたリキは数秒間程停止したほど、鋭い目つきに変わった。真剣にかつその顔はとても冷淡で。
今回の依頼は一人の男の暗殺。名はロジー、如何にも爺な名だ。
今夜の7刻に晩餐が行われるらしく、その際に当家に着く前に暗殺しろとのとこ。
よくあるパターンだが、しかし依頼主がとても気になるもので、依頼人はその当家に在住する兄様のラカード・ワイリーという者からである。
(しかし依頼とはいえ、報酬に10kcol[10000col]出すとは余程その者とは縁を断ちたいものらしい。)
本来、暗殺するにあたって暗黙のルールというものがある。
一つは、依頼に対して無暗な詮索をしてはならないということ、して不愉快に思う者が多いからだ。
二つは、証拠だ。これを提示せずに完遂したと言い、信じる者などいないだろう。
最後に証拠についてだが、中々これが不思議なことに提示品が頭ではなく、目だそうだ。
これらは“こっち”に来て、ラゼリーから聞かされたことだ。
しかし、“それ”に戻ってこっちに入るとは自分も肝が据えたものだ。
「ふむ、まぁざっとこんなものか。後はあちらに行ってからでも遅くはないと思うしな」
まぁ、偵察の時にそんな簡単に隠れられてかつ、タゲ(標的)が見えるなんて普通はねぇが。
「さて、今の時間は…6刻か、そろそろ行くか」
と言い、今まで一つの紙に何やら色々書いていたリキがその紙を置き、倉庫を後にした。
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目的までの移動にかかった時間はおよそ20ほど、タゲはまだゆっくりと自室に籠って本を読んでいるようだ。しかし、
(あの家政婦さん可愛いなぁ…)
ロジーの横で大人しく立ち、微動だにしないでいるその女性はとても可憐な姿をしており、つけ入る隙がな無さそうだ。
…果たして依頼中なのに何故かその女性に見とれてしまうほどの集中力だったか?いや、決してそんなことはない。まさか、
同刻
ロジーが真剣に読書をしているその横の家政婦が、
「ロジー様」
と、声をかけるにロジーは目を閉じ俺を馬鹿にしているのかという目でこちらも向き
「分かっておる、小童何祖、入って来た時から既に気付いておったわい。まして、あのような殺気をこちらに向けられてはここにいるぞと伝えているようなものではないか」
薄く笑うと、すぐに家政婦もといリナに命じた。
「小童の奉仕でもしてやれ、あの小僧は主の美貌に今頃見とれているだろうしのぉ。しかし殺すなよ、このわしの名がすたれでもしたらこまるからの」
笑顔を作ってはいるが、それは決して喜びの顔ではなかった。
「了解しました、では失礼します」
というと、リナは「主の部屋をはや出ていき、“追い出し”の準備に取り掛かった。
(…ここもそろそろ終わりでしょうか)
そして、暗い闇に消えって行った。
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