世界がゲーム仕様になりました
それぞれの想い
悠があんな顔するなんて、想像もしてなかった。それだけ悠の中で白亜さんの存在が大きいってことなんだけどさ。
まあ、本人は無自覚なのがおかしな話なんだよな。
それでも、あんな顔されちゃ無茶を許すしか無いよな。少なくとも、オレには止めることなんて出来ねーわ。
そもそもオレだって悠の立場なら、同じことしようとしてた!絶対に。
悠があれだけ決意を固めてんだ。幼馴染として、親友として、今度こそあいつと一緒にあいつの大切なものを守るんだ。
「あ〜あ。あんな泣きそうな笑顔されたら、何も言えねーじゃねーかよ。ちくしょう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔の悠に戻ったみたい。そう、丁度夕香ちゃんを守ろうと必死だった頃の悠。
・・・ダメね、悪い想像しか出来ないわ。
こういう時、自分のマイナス思考がとても嫌になる。きっと悠や雅人は"私らしい、気にするな。"なんて言ってくれるんだろうけど。
結衣が死ぬ、か。もしそうなったら、私のせいよね。結衣をパーティメンバーに推薦したの、私だから。
ダメダメ!またマイナス思考になってる!ポジティブに、ポジティブに考えるのよ、加耶。私なら出来る!
そうよ。数ヶ月あるんじゃない。事前にわかってるんだから、きっと何とかなるわ!
だって、悠もそのつもりで無茶をするなんて言ったんだもの。
悠のあの泣きそうな笑顔は、意地でも何とかするって意思の表れ。何を言っても止められない。
もちろん、私だって結衣には死んで欲しくない。私も頑張らないとね。
「ほんっと、悠ってたまにズルいわ。あんな顔、初めて見た」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どうしよう。どうしたら良いのかな。誰でも良いから、答えを教えて。
このままだと黒鉄君が無茶しちゃう。怖いよ。無茶して死んじゃうんじゃ無いかと思って、気が気じゃないよ。
ねぇ、どうして?どうして未来の黒鉄君は私が死ぬ未来を見せたの?
どうやったら、黒鉄君を止められるかな。
ううん、分かってる。今の黒鉄君は止められない。出会って間もないけど、それくらいは私にだってわかる。
だからこそ、怖い。
あんな顔をさせる未来なんて、なくなっちゃえば良いのに。
これも分かってる。それを無くす為に無茶しようとしてるんだって。
「全部、分かってるよ。・・・どうして黒鉄君ばかり辛い目に遭うのかな」
もっと辛い目に遭うのに相応しい人なんて山ほどいるのに。危うく口にしかけたその一言は、慌てて飲み込んだ。
ぐるぐると悪い考えばかりが巡る。
ダメだ。考えてもしょうがないことばかり考えちゃう。今どうにもならないことは、きっと数日もすれば答えが出る。そう信じよう。
それにいざという時は私が大人しく死ねば良いんだよね。だって、それでみんなが、黒鉄君が助かるのはもう分かってるんだから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔術作ろう。
唐突に思い付いた魔術作りを始めて、もうそろそろ3時間が経とうとしていた。
あれから今日は色々ありすぎたので学校に帰って、みんなでご飯を食べて解散となった。
時々思い出したように南雲の顔が青ざめるから何度か上月が慌てふためいていた。
・・・あれが、現実に。
「ってそれ考えないために魔術作ってんだろうが」
とはいえ、3時間もやってれば今出来るレベルの魔術は作り終えてしまった。それも当然だ。今出来るレベルなんて、基礎の基礎だけなんだから。
基礎を組み合わせれば応用になるか?やってみよう。
「風と強化魔術を組み合わせれば、面白いことが出来そうだ」
・・・よし、外に出よう。
思い付いたことが、どう考えても室内で出来ることじゃなかったので部屋から出た。
同時に隣の部屋のドアも空いたので確認すると、雅人が出てきたところだった。
「・・・どこ行く気だ?」
「ちょっと外、いや、訓練場でも良いのか」
「は?何か危ない事する気じゃ無いだろうな?」
「危なくは無い、と思う。魔術を試してみようと思ってさ」
「ふーん、付いてくわ」
「なんでだよ」
「"憤怒"の検証しようぜ」
「・・・なるほどな。分かった」
外に出る予定だったが、昨日使った訓練場の事を思い出したので安全を取ってそこで実践してみる事にした。
雅人が一緒なのは誤算だったが、危ない事をしようとしてる訳じゃ無いし大丈夫だよな。
というか雅人が危ない。"憤怒"の検証ができる=怒ってる。そんで相手が俺、となるとやっぱ今日の一件で怒ってるんだろうな。
密かに怯えながら訓練場まで行って、まずはいつも通り強化魔術をかける。
そこから風魔術を使って足に風を作り出し、ジャンプと同時に噴出。いわゆるジェット噴射をイメージした組み合わせだが、結果としては成功した。
同時に強化魔術との組み合わせが必須だという事を痛感した。
「お前、今の」
「身体強化かけてなかったら怪我してたな」
「やっぱそうだよな!?」
「いや〜あっぶね。思ったより風魔術に力があったわ」
「気を付けろよなマジで」
「いや、うん。マジごめん」
さて、こっからが本番だ。今のはあくまでも使ったことない風魔術の試運転。基礎の組み合わせはここからだ。
属性魔術を使う時、強化魔術とは別種の魔力が使われている事が感覚で分かる。
属性ごとに違うそれを扱えるようになれば、いずれはルーン文字や魔法陣、魔導書がなくても属性魔術の真似事が出来る様になるだろう。
が、今それは関係ない。何が言いたいかというと、普段強化魔術で使われる魔力を属性魔力に変換したらどうなるか?という事だ。
それをするにあたって、ルーン文字の組み合わせを考えなければならないのだが、これに関しては迷う必要は無い。
「強化魔術のルーン文字の前に、風魔術のルーン文字を書いて、と」
そのまま発動。
予想通り風を全身に纏う結果になった。
「雅人、ちょっと俺に触れてみてくれ」
「おうよ」
雅人の手が俺の肩に触れる直前、勢いよく弾かれた。
その結果を予想してたらしい雅人の手は勢いの割に大して弾かれる事はなかった。
「やっぱそうなったか」
「パーティメンバーなら平気かと思ったんだけど」
「例外は無かったみたいだな」
「いや、まだ俺から触れるのは試してない」
てことで躊躇なく雅人に触れた。弾かれなかった。
「使用者本人からのアクションは例外みたいだな」
「らしいな。っておい、てめコラ。弾かれてたらどうするつもりだったんだよ」
「え、えーっと、ほら、その、お前なら受け身くらい取れるだろうという信用をだな」
「悠さんや、ちょっと苦しく無いかね」
「・・・すみません、何も考えてなかったです」
「よし、ブン殴る」
殴られました。
気を取り直して次の検証行ってみよう!
今の組み合わせを武器にかけることはできるかどうか。そしてその場合、攻撃した時に属性が反映されるのか。
試してみた結果、発動時点で強制的に取り出した剣の奥に居た雅人にかかった。
「強化魔術は人にしかかけられない?」
「今の発動の仕方からするとそうなんだろうな」
「おい待て雅人、なんで石持ってんだよ」
「いや、指で弾いたら風纏って飛んでいくのかと思って」
「俺に標準を合わせてるのは?」
「やっぱ的が無いとつまんねーだろ?」
「待て待て待て!おかしいだろ!?いきなり人相手に試そうとしてんじゃねぇよ!」
「問答無用!」
「うおぁっぶね!殺す気か!」
「風纏ってたな。攻撃意思があれば属性が反映されるっぽいぞ」
「てことは体術で?じゃなくて」
「まあまあ、結果オーライだって」
「この、いつか絶対やり返す」
まあ確かに結果オーライではある。さて、話を戻そう。武器に強化をかけるにはどうすればいいかだ。
いや待て、武器に属性をつける時って"付与"するって言わないか?もし仮にそうだとしたら、使い方の分からなかった付与魔術が使えるかもしれない。
属性付与"風"
「出来ちゃったよ」
「出来てんな」
もう一個検証。強化魔術を付与する。は、出来ないか。いや、考え方は間違ってないはずだ。そう、きっと具体性が足りてないんだ。
例えば強化魔術を使う時、俺は身体能力の底上げをイメージする。さっきの属性付与も武器に風を纏わせるのをイメージした。
つまり、単純な見た目では分からない細かい強化なら付与できるはずだ。
武器の切れ味を強化するイメージで。
強化付与"鋭さ"
よし、出来た。
次はこれの応用だ。まずは強化魔術で自分を強化。次に強化付与で"さっきかけた強化魔術"を強化。
あ、出来た。そんじゃもう1段階、強化魔術を強化付与にかける。つまり強化付与を強化する。
「なあおい悠。お前、今何した?お前の強化魔術ってそんなすげーのか?てかいつも手抜いてたの?」
「いや、前出来なかった強化の重ねがけが出来ちゃったんだよ」
これで今、俺は実質強化魔術が3つ重なってかかっているということになる。
単純計算でいつもの強化魔術が3倍に強化されたってことだ。
これなら、まあ何とかなる、かな?
「さて、憤怒の検証を始めようか」
まあ、本人は無自覚なのがおかしな話なんだよな。
それでも、あんな顔されちゃ無茶を許すしか無いよな。少なくとも、オレには止めることなんて出来ねーわ。
そもそもオレだって悠の立場なら、同じことしようとしてた!絶対に。
悠があれだけ決意を固めてんだ。幼馴染として、親友として、今度こそあいつと一緒にあいつの大切なものを守るんだ。
「あ〜あ。あんな泣きそうな笑顔されたら、何も言えねーじゃねーかよ。ちくしょう」
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昔の悠に戻ったみたい。そう、丁度夕香ちゃんを守ろうと必死だった頃の悠。
・・・ダメね、悪い想像しか出来ないわ。
こういう時、自分のマイナス思考がとても嫌になる。きっと悠や雅人は"私らしい、気にするな。"なんて言ってくれるんだろうけど。
結衣が死ぬ、か。もしそうなったら、私のせいよね。結衣をパーティメンバーに推薦したの、私だから。
ダメダメ!またマイナス思考になってる!ポジティブに、ポジティブに考えるのよ、加耶。私なら出来る!
そうよ。数ヶ月あるんじゃない。事前にわかってるんだから、きっと何とかなるわ!
だって、悠もそのつもりで無茶をするなんて言ったんだもの。
悠のあの泣きそうな笑顔は、意地でも何とかするって意思の表れ。何を言っても止められない。
もちろん、私だって結衣には死んで欲しくない。私も頑張らないとね。
「ほんっと、悠ってたまにズルいわ。あんな顔、初めて見た」
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どうしよう。どうしたら良いのかな。誰でも良いから、答えを教えて。
このままだと黒鉄君が無茶しちゃう。怖いよ。無茶して死んじゃうんじゃ無いかと思って、気が気じゃないよ。
ねぇ、どうして?どうして未来の黒鉄君は私が死ぬ未来を見せたの?
どうやったら、黒鉄君を止められるかな。
ううん、分かってる。今の黒鉄君は止められない。出会って間もないけど、それくらいは私にだってわかる。
だからこそ、怖い。
あんな顔をさせる未来なんて、なくなっちゃえば良いのに。
これも分かってる。それを無くす為に無茶しようとしてるんだって。
「全部、分かってるよ。・・・どうして黒鉄君ばかり辛い目に遭うのかな」
もっと辛い目に遭うのに相応しい人なんて山ほどいるのに。危うく口にしかけたその一言は、慌てて飲み込んだ。
ぐるぐると悪い考えばかりが巡る。
ダメだ。考えてもしょうがないことばかり考えちゃう。今どうにもならないことは、きっと数日もすれば答えが出る。そう信じよう。
それにいざという時は私が大人しく死ねば良いんだよね。だって、それでみんなが、黒鉄君が助かるのはもう分かってるんだから。
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魔術作ろう。
唐突に思い付いた魔術作りを始めて、もうそろそろ3時間が経とうとしていた。
あれから今日は色々ありすぎたので学校に帰って、みんなでご飯を食べて解散となった。
時々思い出したように南雲の顔が青ざめるから何度か上月が慌てふためいていた。
・・・あれが、現実に。
「ってそれ考えないために魔術作ってんだろうが」
とはいえ、3時間もやってれば今出来るレベルの魔術は作り終えてしまった。それも当然だ。今出来るレベルなんて、基礎の基礎だけなんだから。
基礎を組み合わせれば応用になるか?やってみよう。
「風と強化魔術を組み合わせれば、面白いことが出来そうだ」
・・・よし、外に出よう。
思い付いたことが、どう考えても室内で出来ることじゃなかったので部屋から出た。
同時に隣の部屋のドアも空いたので確認すると、雅人が出てきたところだった。
「・・・どこ行く気だ?」
「ちょっと外、いや、訓練場でも良いのか」
「は?何か危ない事する気じゃ無いだろうな?」
「危なくは無い、と思う。魔術を試してみようと思ってさ」
「ふーん、付いてくわ」
「なんでだよ」
「"憤怒"の検証しようぜ」
「・・・なるほどな。分かった」
外に出る予定だったが、昨日使った訓練場の事を思い出したので安全を取ってそこで実践してみる事にした。
雅人が一緒なのは誤算だったが、危ない事をしようとしてる訳じゃ無いし大丈夫だよな。
というか雅人が危ない。"憤怒"の検証ができる=怒ってる。そんで相手が俺、となるとやっぱ今日の一件で怒ってるんだろうな。
密かに怯えながら訓練場まで行って、まずはいつも通り強化魔術をかける。
そこから風魔術を使って足に風を作り出し、ジャンプと同時に噴出。いわゆるジェット噴射をイメージした組み合わせだが、結果としては成功した。
同時に強化魔術との組み合わせが必須だという事を痛感した。
「お前、今の」
「身体強化かけてなかったら怪我してたな」
「やっぱそうだよな!?」
「いや〜あっぶね。思ったより風魔術に力があったわ」
「気を付けろよなマジで」
「いや、うん。マジごめん」
さて、こっからが本番だ。今のはあくまでも使ったことない風魔術の試運転。基礎の組み合わせはここからだ。
属性魔術を使う時、強化魔術とは別種の魔力が使われている事が感覚で分かる。
属性ごとに違うそれを扱えるようになれば、いずれはルーン文字や魔法陣、魔導書がなくても属性魔術の真似事が出来る様になるだろう。
が、今それは関係ない。何が言いたいかというと、普段強化魔術で使われる魔力を属性魔力に変換したらどうなるか?という事だ。
それをするにあたって、ルーン文字の組み合わせを考えなければならないのだが、これに関しては迷う必要は無い。
「強化魔術のルーン文字の前に、風魔術のルーン文字を書いて、と」
そのまま発動。
予想通り風を全身に纏う結果になった。
「雅人、ちょっと俺に触れてみてくれ」
「おうよ」
雅人の手が俺の肩に触れる直前、勢いよく弾かれた。
その結果を予想してたらしい雅人の手は勢いの割に大して弾かれる事はなかった。
「やっぱそうなったか」
「パーティメンバーなら平気かと思ったんだけど」
「例外は無かったみたいだな」
「いや、まだ俺から触れるのは試してない」
てことで躊躇なく雅人に触れた。弾かれなかった。
「使用者本人からのアクションは例外みたいだな」
「らしいな。っておい、てめコラ。弾かれてたらどうするつもりだったんだよ」
「え、えーっと、ほら、その、お前なら受け身くらい取れるだろうという信用をだな」
「悠さんや、ちょっと苦しく無いかね」
「・・・すみません、何も考えてなかったです」
「よし、ブン殴る」
殴られました。
気を取り直して次の検証行ってみよう!
今の組み合わせを武器にかけることはできるかどうか。そしてその場合、攻撃した時に属性が反映されるのか。
試してみた結果、発動時点で強制的に取り出した剣の奥に居た雅人にかかった。
「強化魔術は人にしかかけられない?」
「今の発動の仕方からするとそうなんだろうな」
「おい待て雅人、なんで石持ってんだよ」
「いや、指で弾いたら風纏って飛んでいくのかと思って」
「俺に標準を合わせてるのは?」
「やっぱ的が無いとつまんねーだろ?」
「待て待て待て!おかしいだろ!?いきなり人相手に試そうとしてんじゃねぇよ!」
「問答無用!」
「うおぁっぶね!殺す気か!」
「風纏ってたな。攻撃意思があれば属性が反映されるっぽいぞ」
「てことは体術で?じゃなくて」
「まあまあ、結果オーライだって」
「この、いつか絶対やり返す」
まあ確かに結果オーライではある。さて、話を戻そう。武器に強化をかけるにはどうすればいいかだ。
いや待て、武器に属性をつける時って"付与"するって言わないか?もし仮にそうだとしたら、使い方の分からなかった付与魔術が使えるかもしれない。
属性付与"風"
「出来ちゃったよ」
「出来てんな」
もう一個検証。強化魔術を付与する。は、出来ないか。いや、考え方は間違ってないはずだ。そう、きっと具体性が足りてないんだ。
例えば強化魔術を使う時、俺は身体能力の底上げをイメージする。さっきの属性付与も武器に風を纏わせるのをイメージした。
つまり、単純な見た目では分からない細かい強化なら付与できるはずだ。
武器の切れ味を強化するイメージで。
強化付与"鋭さ"
よし、出来た。
次はこれの応用だ。まずは強化魔術で自分を強化。次に強化付与で"さっきかけた強化魔術"を強化。
あ、出来た。そんじゃもう1段階、強化魔術を強化付与にかける。つまり強化付与を強化する。
「なあおい悠。お前、今何した?お前の強化魔術ってそんなすげーのか?てかいつも手抜いてたの?」
「いや、前出来なかった強化の重ねがけが出来ちゃったんだよ」
これで今、俺は実質強化魔術が3つ重なってかかっているということになる。
単純計算でいつもの強化魔術が3倍に強化されたってことだ。
これなら、まあ何とかなる、かな?
「さて、憤怒の検証を始めようか」
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