世界がゲーム仕様になりました
お試しバトルと夢
晩飯後、改めて依頼した物を渡された。が、使ってみないことには感想もクソも無いので体育館に行くことに。
相変わらず外観と中の面積が釣り合ってない体育館の一画に存在する修練場とでも言いたくなるフリーのスペースで雅人と対峙する。
緑葉が作ってきたのは、剣と槍だったからだ。
剣の素材は依頼の時渡した赤熊の骨に鉄を混ぜ込んで馴染ませたそうだ。ちなみにこの鉄はゴブリンが使っていた剣を溶かして精錬した物だそうだ。
槍の方は剣を作った時に余った赤熊の骨に鉄を混ぜ込んだ素材を刃にして持ち手は追加で渡しておいたコボルトの骨が先を整える程度で、ほぼそのまま使ってある。
コボルトの骨は非常に硬い割に、一歩間違えば比較的柔らかいゴブリンの骨より簡単に砕けるそうだ。
作ったものを見てから買い取るか決めるとは言ったが、想像以上に良いものが返ってきたのでぱっと見で両方とも買い取ることは決定した。
「行くぞ、悠」
「はいはい」
ワクワクで乗り気の雅人と全く乗り気じゃない俺との温度差が凄すぎる気がするが気のせいだろう。
とりあえず、本気でやらないとこっちが大怪我するのはわかり切ってるから真面目にやらないとな。
お互い同時に地面を蹴って槍と剣を打ち合わせる。
そこからさらに一歩踏み込んで無理矢理鍔迫り合いに持っていき、距離を取らせないように気をつける。
力では雅人が上なので徐々に押し負けてくるが、技術はこっちが僅かに上。
何の捻りもなく真っ直ぐ押し込んで来る力は、馬鹿正直に受けるんじゃ無くて、ほんの少し受ける軸をずらす!
「うぉ!」
「っつ!」
こんの馬鹿力が!!
無駄に察しが良い雅人に対してあれ以上露骨に軸をずらすとバレるからあれが限界だったんだけど、手首逝かれるかと思ったわ。
しかしそこは我慢して追撃を入れる。が、槍の長さを活かしたやり方で持ち手部分でガードされた。
チュートリアルで貰える槍では出来ないやり方だな。あれは鉄並みに硬いけど持ち手が木材だからな。
ずっとその防御がやりたかったのだろう。雅人の顔が目に見えて生き生きとしている。
雅人よ、今はお前の生き生きとした顔が恐怖でしかないぞ・・・。
再び鍔迫り合いになったが、今度は力で押し返された。そのまま距離を取られ、一気に槍の間合いに。
くそ、突きの乱れ打ちか、中々踏み込めないじゃないか。けど、軽いな。スピード重視の攻撃だからか。
このままだとジリ貧なのでこちらから距離を取った。追撃があるかと思ったが、乱れ打ちで疲れたのか息を整えるために追撃はしてこなかった。
その隙に強化魔術(付与)で擬似強化と合わせた現状俺が出来る最高の強化を施す。
息が整えばあっちから仕掛けて来るはずだ。魔術を使ったのは見えてただろうけど奇襲に近いことができるはず。
きた!ここで、懐に!
「っ!うお!?」
「はぁ!」
またもや持ち手で防がれたが、予想外の速さに驚いてくれたようで満足だ。
外の魔物相手なら一撃入ってただろうな。
ガードが精一杯みたいだったので勢いそのまま力任せに吹っ飛ばした。そしてこれが、この模擬戦で初めて俺が力で勝った唯一の瞬間だった。
吹っ飛ばされた雅人は空中で体制を整え、着地と同時に馬鹿力全開で地面を蹴っていた。
間抜けにも今日一日を通して魔力の使いすぎで(よりにもよってこのタイミングで)フラついた俺は、それに反応できず気絶してしまった。
そして俺は、またあの夢を見た。
何度も何度も何度も、白亜が目の前で殺された。奴に、殺された。
ある時は魔法で焼かれて。ある時は剣で貫かれて。ある時は毒で。様々な方法で、場面で、状況で、数えるのも嫌になる程殺された。
そうだ、俺は毎日これを見てるじゃ無いか。
気絶程度の浅い眠りじゃ無いとちゃんと自覚出来ないって事なんだろう。感覚がそう言ってる。
ていうか、これはあれだ。ちゃんと自覚がある時に復習させられてるんだな。
もういい、やめてくれ。もうたくさんだ。
そう、たくさんだ。でも、見なきゃ。見ないとダメな気がする。
だってこれは、この先の俺がーーーなのだから。
見ろ、見ろ。目に、記憶に焼き付けろ。それが俺のやるべき事だ。
「ーーーくん!黒鉄君!あ!目、覚めた?」
「んー、何とか覚めた。と思う」
あー、うん。ちゃんと起きてるわ。だって白亜生きてるし。奴もいないし。
夢に引っ張られてるな。現実逃避か?いや、逆か。
まあ何にせよ、今回は夢の内容をかなりハッキリ覚えてるのは確かだな。
さて、とりあえず。
「ひゃ!黒鉄君!?・・・また?」
とりあえず、白亜を抱きしめた。こうしないと壊れそうだ。
今回は何度も見せられたからな。こりゃこの前よりちょっと、いやかなり精神削られてるわ。
「うん。・・・ちょっとの間、このまま居させてくれないか?」
「いくらでもどうぞ」
「ちょっとで良いよ。足りなかったらその時はその時だ。・・・・・・よし!ありがとう、もう平気」
「本当に?」
「うん。少なくとも今は絶対大丈夫」
「そっか、分かった」
「さて、悪かったな。変な空気にしちゃって」
当然ながら一連のやり取りも俺の行動も、全てみんなの前でやった事なので何とも言えない変な空気が流れている。
幼馴染2人はもはや慣れはじめている様子だが、他3人はそうはいかない。
南雲は開いた口が塞がらないと言った様子だし、上月はフリーズしている。そして緑葉はニヤニヤしていた。
「まあ、そうなるわな。さっきのは白亜が死ぬ夢を見たせいだから。そこんとこ宜しくな」
「「えぇ、なにその夢怖い」」
「なるほど、だからさっきのね」
「そういうこと」
「「「じゃあしょうがないね」」」
「理解が早くて助かります。ありがとう」
ふぅ。何とか乗り切ったかな?変な誤解も与えてないみたいだし、アホみたいな噂になる心配もないだろう。
「それにしても悠。その夢、頻繁に見るのか?」
「見るよ。多分、覚えて無いことが多いだけで毎日見てる」
「「何それ怖い」」
「黒鉄君の中で、私は死んでるのかな?それとも近いうちに死ぬのかな?」
「アホ、生きてるし死ぬ予定もないから。死なれたら俺も死ぬよ?絶対。夢見ただけでこんななんだから」
「「「確かに」」」
「はい、こんなしんどい話はお終い。緑葉、思った以上に良い剣だったよ。ありがとな」
「そうそう、こっちの槍も良かったぞ!サンキューな」
「お客さんのご要望に応えられたみたいで良かったよ!これからもどうぞご贔屓に」
「おー、またなんかあったら依頼する」
「期待して待ってるよー。そんじゃまたねー」
これでひと段落だな。さて、やることも無くなったし解散でいいかな?
あ、いや。何かありそうな顔してる奴がいるな。
「南雲、何か言いたいことでもあんの?」
「ん?ああ、まあな。よく気付いたな」
御託はいいからとっとと話せという意思を込めて軽く睨み付けた。
それでもちょっと渋って、何度か口を開け閉めして、表情も何度か変わって、ようやく話始めた。
「おれたち、やっぱ2人でやっていくわ」
「いつからだ?」
「早くて明日の午後。遅くても明後日」
「急ね。どうしたのよ?」
「大した理由じゃ無いんだけどさ。こう、何かこのままずるずるお前らと居たら、離れたくなくなりそうっていうか、お前らに甘えたままになりそうだからさ」
「そっか。上月さんもそれで良いのか?」
「あ、わたし?うん、良いよ。元々タイミングは聡樹に任せるって言ってたし、わたしも同じ気持ちだしね」
「そんじゃ、どう転んでも明日が南雲と上月と組む最後だな」
「怪我しないよう安全に行こうね」
何処となく寂しさを感じるな。たった3日ほど一緒に行動してたってだけなのに。
その3日はとてつもなく濃かったけど。
いっそこのまま2人もパーティに誘うか?・・・いや、ないな。それは何か、違う気がする。
「よし、とりあえず今日は解散!また明日。おやすみ」
「「「「「おやすみ〜」」」」」
これ以上この場に止まると、どんよりした雰囲気になりそうだったから解散にした。
俺も部屋に戻って魔術作るかな。
相変わらず外観と中の面積が釣り合ってない体育館の一画に存在する修練場とでも言いたくなるフリーのスペースで雅人と対峙する。
緑葉が作ってきたのは、剣と槍だったからだ。
剣の素材は依頼の時渡した赤熊の骨に鉄を混ぜ込んで馴染ませたそうだ。ちなみにこの鉄はゴブリンが使っていた剣を溶かして精錬した物だそうだ。
槍の方は剣を作った時に余った赤熊の骨に鉄を混ぜ込んだ素材を刃にして持ち手は追加で渡しておいたコボルトの骨が先を整える程度で、ほぼそのまま使ってある。
コボルトの骨は非常に硬い割に、一歩間違えば比較的柔らかいゴブリンの骨より簡単に砕けるそうだ。
作ったものを見てから買い取るか決めるとは言ったが、想像以上に良いものが返ってきたのでぱっと見で両方とも買い取ることは決定した。
「行くぞ、悠」
「はいはい」
ワクワクで乗り気の雅人と全く乗り気じゃない俺との温度差が凄すぎる気がするが気のせいだろう。
とりあえず、本気でやらないとこっちが大怪我するのはわかり切ってるから真面目にやらないとな。
お互い同時に地面を蹴って槍と剣を打ち合わせる。
そこからさらに一歩踏み込んで無理矢理鍔迫り合いに持っていき、距離を取らせないように気をつける。
力では雅人が上なので徐々に押し負けてくるが、技術はこっちが僅かに上。
何の捻りもなく真っ直ぐ押し込んで来る力は、馬鹿正直に受けるんじゃ無くて、ほんの少し受ける軸をずらす!
「うぉ!」
「っつ!」
こんの馬鹿力が!!
無駄に察しが良い雅人に対してあれ以上露骨に軸をずらすとバレるからあれが限界だったんだけど、手首逝かれるかと思ったわ。
しかしそこは我慢して追撃を入れる。が、槍の長さを活かしたやり方で持ち手部分でガードされた。
チュートリアルで貰える槍では出来ないやり方だな。あれは鉄並みに硬いけど持ち手が木材だからな。
ずっとその防御がやりたかったのだろう。雅人の顔が目に見えて生き生きとしている。
雅人よ、今はお前の生き生きとした顔が恐怖でしかないぞ・・・。
再び鍔迫り合いになったが、今度は力で押し返された。そのまま距離を取られ、一気に槍の間合いに。
くそ、突きの乱れ打ちか、中々踏み込めないじゃないか。けど、軽いな。スピード重視の攻撃だからか。
このままだとジリ貧なのでこちらから距離を取った。追撃があるかと思ったが、乱れ打ちで疲れたのか息を整えるために追撃はしてこなかった。
その隙に強化魔術(付与)で擬似強化と合わせた現状俺が出来る最高の強化を施す。
息が整えばあっちから仕掛けて来るはずだ。魔術を使ったのは見えてただろうけど奇襲に近いことができるはず。
きた!ここで、懐に!
「っ!うお!?」
「はぁ!」
またもや持ち手で防がれたが、予想外の速さに驚いてくれたようで満足だ。
外の魔物相手なら一撃入ってただろうな。
ガードが精一杯みたいだったので勢いそのまま力任せに吹っ飛ばした。そしてこれが、この模擬戦で初めて俺が力で勝った唯一の瞬間だった。
吹っ飛ばされた雅人は空中で体制を整え、着地と同時に馬鹿力全開で地面を蹴っていた。
間抜けにも今日一日を通して魔力の使いすぎで(よりにもよってこのタイミングで)フラついた俺は、それに反応できず気絶してしまった。
そして俺は、またあの夢を見た。
何度も何度も何度も、白亜が目の前で殺された。奴に、殺された。
ある時は魔法で焼かれて。ある時は剣で貫かれて。ある時は毒で。様々な方法で、場面で、状況で、数えるのも嫌になる程殺された。
そうだ、俺は毎日これを見てるじゃ無いか。
気絶程度の浅い眠りじゃ無いとちゃんと自覚出来ないって事なんだろう。感覚がそう言ってる。
ていうか、これはあれだ。ちゃんと自覚がある時に復習させられてるんだな。
もういい、やめてくれ。もうたくさんだ。
そう、たくさんだ。でも、見なきゃ。見ないとダメな気がする。
だってこれは、この先の俺がーーーなのだから。
見ろ、見ろ。目に、記憶に焼き付けろ。それが俺のやるべき事だ。
「ーーーくん!黒鉄君!あ!目、覚めた?」
「んー、何とか覚めた。と思う」
あー、うん。ちゃんと起きてるわ。だって白亜生きてるし。奴もいないし。
夢に引っ張られてるな。現実逃避か?いや、逆か。
まあ何にせよ、今回は夢の内容をかなりハッキリ覚えてるのは確かだな。
さて、とりあえず。
「ひゃ!黒鉄君!?・・・また?」
とりあえず、白亜を抱きしめた。こうしないと壊れそうだ。
今回は何度も見せられたからな。こりゃこの前よりちょっと、いやかなり精神削られてるわ。
「うん。・・・ちょっとの間、このまま居させてくれないか?」
「いくらでもどうぞ」
「ちょっとで良いよ。足りなかったらその時はその時だ。・・・・・・よし!ありがとう、もう平気」
「本当に?」
「うん。少なくとも今は絶対大丈夫」
「そっか、分かった」
「さて、悪かったな。変な空気にしちゃって」
当然ながら一連のやり取りも俺の行動も、全てみんなの前でやった事なので何とも言えない変な空気が流れている。
幼馴染2人はもはや慣れはじめている様子だが、他3人はそうはいかない。
南雲は開いた口が塞がらないと言った様子だし、上月はフリーズしている。そして緑葉はニヤニヤしていた。
「まあ、そうなるわな。さっきのは白亜が死ぬ夢を見たせいだから。そこんとこ宜しくな」
「「えぇ、なにその夢怖い」」
「なるほど、だからさっきのね」
「そういうこと」
「「「じゃあしょうがないね」」」
「理解が早くて助かります。ありがとう」
ふぅ。何とか乗り切ったかな?変な誤解も与えてないみたいだし、アホみたいな噂になる心配もないだろう。
「それにしても悠。その夢、頻繁に見るのか?」
「見るよ。多分、覚えて無いことが多いだけで毎日見てる」
「「何それ怖い」」
「黒鉄君の中で、私は死んでるのかな?それとも近いうちに死ぬのかな?」
「アホ、生きてるし死ぬ予定もないから。死なれたら俺も死ぬよ?絶対。夢見ただけでこんななんだから」
「「「確かに」」」
「はい、こんなしんどい話はお終い。緑葉、思った以上に良い剣だったよ。ありがとな」
「そうそう、こっちの槍も良かったぞ!サンキューな」
「お客さんのご要望に応えられたみたいで良かったよ!これからもどうぞご贔屓に」
「おー、またなんかあったら依頼する」
「期待して待ってるよー。そんじゃまたねー」
これでひと段落だな。さて、やることも無くなったし解散でいいかな?
あ、いや。何かありそうな顔してる奴がいるな。
「南雲、何か言いたいことでもあんの?」
「ん?ああ、まあな。よく気付いたな」
御託はいいからとっとと話せという意思を込めて軽く睨み付けた。
それでもちょっと渋って、何度か口を開け閉めして、表情も何度か変わって、ようやく話始めた。
「おれたち、やっぱ2人でやっていくわ」
「いつからだ?」
「早くて明日の午後。遅くても明後日」
「急ね。どうしたのよ?」
「大した理由じゃ無いんだけどさ。こう、何かこのままずるずるお前らと居たら、離れたくなくなりそうっていうか、お前らに甘えたままになりそうだからさ」
「そっか。上月さんもそれで良いのか?」
「あ、わたし?うん、良いよ。元々タイミングは聡樹に任せるって言ってたし、わたしも同じ気持ちだしね」
「そんじゃ、どう転んでも明日が南雲と上月と組む最後だな」
「怪我しないよう安全に行こうね」
何処となく寂しさを感じるな。たった3日ほど一緒に行動してたってだけなのに。
その3日はとてつもなく濃かったけど。
いっそこのまま2人もパーティに誘うか?・・・いや、ないな。それは何か、違う気がする。
「よし、とりあえず今日は解散!また明日。おやすみ」
「「「「「おやすみ〜」」」」」
これ以上この場に止まると、どんよりした雰囲気になりそうだったから解散にした。
俺も部屋に戻って魔術作るかな。
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