世界がゲーム仕様になりました
意外な理由
きっと俺は今、怪訝そうな顔をしてるだろう。まあ昨日と一昨日の接触から、完全に面倒な存在になっている3人組が目の前に居れば、それは仕方ないことかもしれないのだが。
とはいえだ、いくら印象が悪くても平静を装って表情くらいはもっとまともに出来たはずだ。
昨日の俺なら出来ていた、いや、やっていたであろう事が出来ていないのは気が抜けている証拠か、それとも隠せないほどに苦手意識を持っているのか・・・。
何にせよ、この3人組の用は雅人に対してだろうから俺は無視でも問題ないはずだ。・・・はずだ。
「何だ、君らか。どうしたんだ?」
さすが雅人、俺が応対する気が無いと分かっているみたいだ。3人組だと認識した途端対応してくれた。
対する3人組は、3人揃ってなんとも言えない表情をして黙っている。
正直に言おう。沈黙が重い!いっそこの場から立ち去ってやりたい気分だ。
ふと南雲と上月を巻き込んでしまっていることを思い出して、2人が気付く程度に軽く謝る。
気にしなくて良いという風に見事にシンクロした動きで首を横に振ってくれたので一安心だ。
軽く吹き出しそうになったのは内緒だ。
「・・・・・昨日の、事で・・・お礼を」
予想外だった。
まさかお礼を言いに来たなんて予想外すぎて尚のことこの場から立ち去れば良かったと思ってしまう。
「えーっと、それは誰に対してのお礼?」
え、それ聞く?
「四谷君のパーティに」
これまた予想外。てっきり雅人だけにかと思ってた。
「だから、その、昨日は、2回も助けてくれて、あ、ありがとう」
1人がそう言ったのを皮切りに、他2人も続いてそれぞれお礼を言ってきた。
ちなみに、俺は関係ないと思ってほとんど聞き流している。
加耶が凄い睨んできて怖い。白亜は苦笑しているだけ。いや助けて!?
「あーうん。まあたまたま見かけたからってだけだから、気にしなくて良いよ」
「いや、それでも・・・」
「あー、うーん、えーっと、悪い悠。もう無理、頼むわ」
えー、ここで俺に振るの?ていうか俺が口出ししたらまたなんか文句言われるから嫌なんだけど?
まあ、昨日は雅人に散々頼って迷惑かけたから断らないけどな。
「分かったよ。・・・最初に助けたのは白亜に頼まれたからだ。だからお礼は白亜に言ってくれ。で、あの熊なんだけど、狙われてたのは俺なんだ。だからお礼なんてやめてくれ」
「助けられたことに変わりはないから」
意外と強情だな。
「・・・はぁ。あのな、俺が狙われたってことは、あんたらは巻き込まれただけなんだよ。お礼は本当にやめてくれ。ていうか謝らせてくれ。巻き込んで悪かった」
「え、な、ちょ、おかしいでしょ・・・」
何がだ?どこにおかしい要素があった?
本気でわからなくて雅人の方を向いたら苦笑い。加耶には呆れられてるし。白亜は何で笑顔?しかもめちゃくちゃ良い笑顔。
え、なんで?別におかしいとこないだろ?
「何がおかしいのかちょっとマジで分かんないけど、とにかくこの話はこれで終わりだ。お礼が言いたきゃ白亜に言っとけ」
なんかこのまま話し続けてるとまた何か知らないうちにやらかしそうだから切り上げることにした。
「ごめんね。悠は、ああいうバカなのよ」
「なあそれフォロー?それとも嫌味?」
「どっちも違うわよ。事実を言ってるだけ」
「加耶ちゃん、それはさすがに酷すぎるよ・・・黒鉄君は不器用なだけで、バカは違うんじゃないかな?」
「「いや、バカだろ(でしょ)」」
「おい、さらっと混ざんなヘタレ。加耶も、覚えてろよ?」
「「うっ・・・」」
口撃には口撃で対応だ。
大丈夫、俺は笑顔だから。そう、笑顔だから。別に脅してないよ?ちょっと警告しただけだよ?
あ、上月の顔が引きつってる。なんか、ごめんな。
「あんた、何でわたしたちに謝罪なんて出来るの?・・・噂のこと、知ってるでしょ?」
「あぁ、あんたらが流したやつな。いやー我ながらあれは酷かった」
「そうじゃなくて・・・」
「?事実だったじゃん。別に膨張してる訳でもないんだし、あんたらは実際にあったことを他人に話した。それだけだ。噂の原因を作ったのは俺で、適当言ってやらかしたのも俺だ。あんたらに責任はないよ」
「やっぱり、あんた、おかしいわ・・・」
そうなんだろうか?
そうじゃないと思ってるけど、今日だけでも散々言われたから、さすがにちょっと自信なくなってきた。
まあ気にしたってしょうがないよな。もし本当におかしいとしても、それが俺なんだから。
「わかったわかった。おかしくて良いからもうこの話も終わりな」
「・・・わかった。・・・ありがとう」
この数分で、3人組のうちの今主に会話しているこいつは印象が変わりつつある。
具体的に言うと、実はいい奴なんじゃね?って事だ。
第一印象があれだったが為に未だに払拭しきれてないものがあるが、昨日の事で必要のないお礼を言いに来たり、噂を流したことに罪悪感を感じていたり、何故か今の俺の話に素直に従ってくれたり。
ほら、なんかやっぱいい奴じゃね?
他2人については知らないが、少なくとも悪い奴ではない事は何となく分かった。
それによくよく考えてみたら、屋上でも昨日のゴブリンとの戦いの後でも、文句を言ったのは後ろの2人であってこいつじゃない。
3人組で一括りとして見てたけど、個別で見ると思ったほど面倒じゃないのかもしれない。
っと、そういえば地味に気になってたことがあったんだった。
「なあ、昨日の熊との戦いの時に怪我とかしてないか?」
「なっ!?・・・・・なんで?」
「いやさ、俺あの時気を失っただろ?んで起きた時にはあんたらはもう居なかったから、ちょっと気掛かりでさ」
というわけだ。巻き込んだ手前、怪我されてたらちょっと無茶してゴブリンから助けた意味がないからな。
あれ?なんか寒気が・・・ヒッ!?
「あ、あああの、は、白亜さん?どうか、されました・・・?」
「ん?どうもしてないよ?」
「いや、あの、そんな風に見えないんだけど・・・」
「どうも、してないよ?」
「あ、はい。そうですか」
何で怒ってるのかさっぱり分からないので雅人たちに助けを求める意味を込めて目を向けると、全員呆れていた。
より詳しく言うのなら、男どもは呆れた顔で笑っているが、女性陣はやれやれとでも言いたげな顔をしている。
解せぬ。てか助けて。
助け舟を出してくれたのは、印象が変わりつつある3人組の1人だった。
「えっと、いい?」
「あ、うん。どうぞ」
さっきよりちょっと気まずいのは何故!?
「じゃ、じゃあ。とりあえず、怪我はしてないから。情けない話、腰抜けて動けなかったのが幸いしたみたい」
「そうか。そりゃ良かった。巻き込んだのに怪我なんてされたら、たまったもんじゃないからな」
お?白亜の機嫌がちょっと直ったかな?
なぜか分からんが機嫌が悪いままよりはよっぽど良い。機嫌が悪いと俺が危ない気がするからな。
・・・ねぇ、なんで?なんで次はあんたが機嫌悪くなってんだよ?
もう女心が分からない。いや元々分からないんだけどさ。
「聞きたい事はそれだけ?」
さっきより明らかに冷たい!?
まあ別にあんま関わらないだろうから良いんだけど。
「いや、もう1つ。あの前衛の子は?」
「昨日の疲れで寝込んでる」
「あー、まあだろうな。ケガはしてたか?」
「してなかったはずよ」
「なら良かった。じゃあ次会った時に助かった、ありがとうって言っといてくれないか?」
「伝言ってこと?」
「そうなるな」
「・・・わかった。伝えとく」
「サンキュー」
お互い話が終わった雰囲気になり、事実もう話すこともなかったので、そのまま3人組は宿の方に歩いて行った。
それを見届けたあと、長めのため息を吐くと同時にみんなの方に向き直った。
「疲れた」
「「お疲れさん(さま)」」
「ねぇ黒鉄君、もう休んだら?ひどい顔してるよ?」
「マジで?」
全員が首を縦に振った。
どうやら相当にひどい顔らしい。
「じゃあ、そうさせて貰うわ。おやすみ、また明日な」
「「「おやすみー」」」
全員に見送られて部屋まで戻った俺は、もうなんか色々やる気を失って、ベッドに倒れ込んだ。
そしてそのまま、深い眠りに落ちた。
とはいえだ、いくら印象が悪くても平静を装って表情くらいはもっとまともに出来たはずだ。
昨日の俺なら出来ていた、いや、やっていたであろう事が出来ていないのは気が抜けている証拠か、それとも隠せないほどに苦手意識を持っているのか・・・。
何にせよ、この3人組の用は雅人に対してだろうから俺は無視でも問題ないはずだ。・・・はずだ。
「何だ、君らか。どうしたんだ?」
さすが雅人、俺が応対する気が無いと分かっているみたいだ。3人組だと認識した途端対応してくれた。
対する3人組は、3人揃ってなんとも言えない表情をして黙っている。
正直に言おう。沈黙が重い!いっそこの場から立ち去ってやりたい気分だ。
ふと南雲と上月を巻き込んでしまっていることを思い出して、2人が気付く程度に軽く謝る。
気にしなくて良いという風に見事にシンクロした動きで首を横に振ってくれたので一安心だ。
軽く吹き出しそうになったのは内緒だ。
「・・・・・昨日の、事で・・・お礼を」
予想外だった。
まさかお礼を言いに来たなんて予想外すぎて尚のことこの場から立ち去れば良かったと思ってしまう。
「えーっと、それは誰に対してのお礼?」
え、それ聞く?
「四谷君のパーティに」
これまた予想外。てっきり雅人だけにかと思ってた。
「だから、その、昨日は、2回も助けてくれて、あ、ありがとう」
1人がそう言ったのを皮切りに、他2人も続いてそれぞれお礼を言ってきた。
ちなみに、俺は関係ないと思ってほとんど聞き流している。
加耶が凄い睨んできて怖い。白亜は苦笑しているだけ。いや助けて!?
「あーうん。まあたまたま見かけたからってだけだから、気にしなくて良いよ」
「いや、それでも・・・」
「あー、うーん、えーっと、悪い悠。もう無理、頼むわ」
えー、ここで俺に振るの?ていうか俺が口出ししたらまたなんか文句言われるから嫌なんだけど?
まあ、昨日は雅人に散々頼って迷惑かけたから断らないけどな。
「分かったよ。・・・最初に助けたのは白亜に頼まれたからだ。だからお礼は白亜に言ってくれ。で、あの熊なんだけど、狙われてたのは俺なんだ。だからお礼なんてやめてくれ」
「助けられたことに変わりはないから」
意外と強情だな。
「・・・はぁ。あのな、俺が狙われたってことは、あんたらは巻き込まれただけなんだよ。お礼は本当にやめてくれ。ていうか謝らせてくれ。巻き込んで悪かった」
「え、な、ちょ、おかしいでしょ・・・」
何がだ?どこにおかしい要素があった?
本気でわからなくて雅人の方を向いたら苦笑い。加耶には呆れられてるし。白亜は何で笑顔?しかもめちゃくちゃ良い笑顔。
え、なんで?別におかしいとこないだろ?
「何がおかしいのかちょっとマジで分かんないけど、とにかくこの話はこれで終わりだ。お礼が言いたきゃ白亜に言っとけ」
なんかこのまま話し続けてるとまた何か知らないうちにやらかしそうだから切り上げることにした。
「ごめんね。悠は、ああいうバカなのよ」
「なあそれフォロー?それとも嫌味?」
「どっちも違うわよ。事実を言ってるだけ」
「加耶ちゃん、それはさすがに酷すぎるよ・・・黒鉄君は不器用なだけで、バカは違うんじゃないかな?」
「「いや、バカだろ(でしょ)」」
「おい、さらっと混ざんなヘタレ。加耶も、覚えてろよ?」
「「うっ・・・」」
口撃には口撃で対応だ。
大丈夫、俺は笑顔だから。そう、笑顔だから。別に脅してないよ?ちょっと警告しただけだよ?
あ、上月の顔が引きつってる。なんか、ごめんな。
「あんた、何でわたしたちに謝罪なんて出来るの?・・・噂のこと、知ってるでしょ?」
「あぁ、あんたらが流したやつな。いやー我ながらあれは酷かった」
「そうじゃなくて・・・」
「?事実だったじゃん。別に膨張してる訳でもないんだし、あんたらは実際にあったことを他人に話した。それだけだ。噂の原因を作ったのは俺で、適当言ってやらかしたのも俺だ。あんたらに責任はないよ」
「やっぱり、あんた、おかしいわ・・・」
そうなんだろうか?
そうじゃないと思ってるけど、今日だけでも散々言われたから、さすがにちょっと自信なくなってきた。
まあ気にしたってしょうがないよな。もし本当におかしいとしても、それが俺なんだから。
「わかったわかった。おかしくて良いからもうこの話も終わりな」
「・・・わかった。・・・ありがとう」
この数分で、3人組のうちの今主に会話しているこいつは印象が変わりつつある。
具体的に言うと、実はいい奴なんじゃね?って事だ。
第一印象があれだったが為に未だに払拭しきれてないものがあるが、昨日の事で必要のないお礼を言いに来たり、噂を流したことに罪悪感を感じていたり、何故か今の俺の話に素直に従ってくれたり。
ほら、なんかやっぱいい奴じゃね?
他2人については知らないが、少なくとも悪い奴ではない事は何となく分かった。
それによくよく考えてみたら、屋上でも昨日のゴブリンとの戦いの後でも、文句を言ったのは後ろの2人であってこいつじゃない。
3人組で一括りとして見てたけど、個別で見ると思ったほど面倒じゃないのかもしれない。
っと、そういえば地味に気になってたことがあったんだった。
「なあ、昨日の熊との戦いの時に怪我とかしてないか?」
「なっ!?・・・・・なんで?」
「いやさ、俺あの時気を失っただろ?んで起きた時にはあんたらはもう居なかったから、ちょっと気掛かりでさ」
というわけだ。巻き込んだ手前、怪我されてたらちょっと無茶してゴブリンから助けた意味がないからな。
あれ?なんか寒気が・・・ヒッ!?
「あ、あああの、は、白亜さん?どうか、されました・・・?」
「ん?どうもしてないよ?」
「いや、あの、そんな風に見えないんだけど・・・」
「どうも、してないよ?」
「あ、はい。そうですか」
何で怒ってるのかさっぱり分からないので雅人たちに助けを求める意味を込めて目を向けると、全員呆れていた。
より詳しく言うのなら、男どもは呆れた顔で笑っているが、女性陣はやれやれとでも言いたげな顔をしている。
解せぬ。てか助けて。
助け舟を出してくれたのは、印象が変わりつつある3人組の1人だった。
「えっと、いい?」
「あ、うん。どうぞ」
さっきよりちょっと気まずいのは何故!?
「じゃ、じゃあ。とりあえず、怪我はしてないから。情けない話、腰抜けて動けなかったのが幸いしたみたい」
「そうか。そりゃ良かった。巻き込んだのに怪我なんてされたら、たまったもんじゃないからな」
お?白亜の機嫌がちょっと直ったかな?
なぜか分からんが機嫌が悪いままよりはよっぽど良い。機嫌が悪いと俺が危ない気がするからな。
・・・ねぇ、なんで?なんで次はあんたが機嫌悪くなってんだよ?
もう女心が分からない。いや元々分からないんだけどさ。
「聞きたい事はそれだけ?」
さっきより明らかに冷たい!?
まあ別にあんま関わらないだろうから良いんだけど。
「いや、もう1つ。あの前衛の子は?」
「昨日の疲れで寝込んでる」
「あー、まあだろうな。ケガはしてたか?」
「してなかったはずよ」
「なら良かった。じゃあ次会った時に助かった、ありがとうって言っといてくれないか?」
「伝言ってこと?」
「そうなるな」
「・・・わかった。伝えとく」
「サンキュー」
お互い話が終わった雰囲気になり、事実もう話すこともなかったので、そのまま3人組は宿の方に歩いて行った。
それを見届けたあと、長めのため息を吐くと同時にみんなの方に向き直った。
「疲れた」
「「お疲れさん(さま)」」
「ねぇ黒鉄君、もう休んだら?ひどい顔してるよ?」
「マジで?」
全員が首を縦に振った。
どうやら相当にひどい顔らしい。
「じゃあ、そうさせて貰うわ。おやすみ、また明日な」
「「「おやすみー」」」
全員に見送られて部屋まで戻った俺は、もうなんか色々やる気を失って、ベッドに倒れ込んだ。
そしてそのまま、深い眠りに落ちた。
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