突然不死身という最強の能力に目覚めちゃいました

カナブン

学園トーナメント初日3

「これからどうしよっか?」

幻想世界に戻って来た玲は早速午後の方針について凛に尋ねた。

「んー、どうしよっかって言われても・・・なるべく戦わない方がウチはいいな」

「そっか、まぁ午前中より人は減ってるし無闇に動かなきゃ大丈夫だとは思うんだけど、とりあえずあんま目立たない所行こうか」

玲達は人が居ない内に身を隠す場所を探すことにした。

*     *     *     *

四方が崩れたビルに囲まれた広い空間、傾いたビル同士が支え合い今にも崩れ無くなりそうなその場所に玲達はたどり着いた。

「ここなら見つかっても隠れる場所は幾らでもあるし良いよね」

「ウチは神谷くんが良いんなら大丈夫だよ」

凛の同意も得られ午後の拠点が決まる。あとは始まるのを待つだけだ。と言っても午前中とおんなじだ時間になったからって直ぐ戦いに巻き込まれることは無い。むしろ戦うことなく時間が来る可能性の方が高いかもしれない。

「そろそろ時間だね」

デバイスから再びアラームが鳴りトーナメントの再開を知らせる。

「始まっちゃったね、何もなく時間になればいいのにね」

あまり戦いを好まない凛はつい弱気になっていた。

「ごめん今回はそう上手くいかないかもしれない」

玲は口の前で人差し指を立て「静かにしろ」とジェスチャーをする。凛は玲に習い息を潜め耳を澄ました。
すると何処からかは分からないが人間の話し声の様なものが聴こえてきた。
玲と凛は静かに物陰に隠れ辺りに警戒を強める。
話し声は段々と大きさを増し相手の接近を伝えてくる。
そしてついにその相手が姿を現した。玲達が入ってきた場所と同じとこらから5人の生徒が入ってきた。 
しかしその様子はなんだか変だ。戦いに来たと言うよりは潰しに来たと言った方があっているだろ。1人のぼろぼろになっている生徒を2人で押さえつけ、残りの2人は楽しげに話している。そしてさっきまで玲達が居た場所に着くと傷だらけの生徒を地面に投げ捨て4人で囲う様にして蹴り始めた。
凛はその光景に言葉を失い玲の袖をぎゅっと掴む。
玲もその光景に怒りが込み上げてくる。
ここで出て行っても正直なんの得もない、むしろリスクを伴うだけだ。しかしこれを見て見ぬ振りは出来ない、玲はその行為を止めようと決意し凛のを解く。

「ちょっと行ってくる、雨水はまだ隠れてて」

そう言って玲は物陰から外れ4人組に一声あびせる。

「醜いな、弱った相手をいたぶって強者にでもなったつもりか?・・・・・ほんと醜いよ」

「あんだテメェ?自殺志願者w、4対1で勝てるとでも思ってんのか?ぁあ?」

チンピラの様な話し方でリーゼント頭が玲の挑発に乗ってくる。その言葉に感化され残りの3人も攻撃対象を玲へと変える。

「おいおい、こいつ無能力者だぜw、威勢良く出て来た割にただの雑魚じゃんw」

リーゼントの取巻き(1)がデバイスで得た玲の情報に笑い出す。

「まじじゃん、それも美術科1年ブハッハッハッハッw」

取巻き(1)のデバイスを見た取巻き(2)がゲラゲラと笑い出した。

「おいおい、歳上への話し方教えてやろうぜ、このまま社会に出たんじゃあんまりにも可哀想だからさw」

そして取巻き(3)は明らかに敵意の乗った言葉を玲に投げかけて来た。
残りの3人も取巻き(3)の言葉に同意し玲へと攻撃を仕掛けてきた。

「オラッ!死ねよ!!」

リーゼントはサイコキネシにより近くに転がっていたパイプを数本玲にとばしてくる。
それと同時に取巻き(1)が身体能力強化を使い玲へと走り出した。
残りの2人は「あいつ終わったなw口だけとかまじウケるんだけどw」「それな!えーっとなんだっけ弱い奴ほどよく吠える?だっけ?マジ威勢だけだったしねw」と勝った気になりゲラゲラと笑っていた。
しかし次の瞬間2人の表情は一変する。

玲は飛んで来た鉄パイプの一つを掴み軽々と残りのパイプを弾き飛ばしてしまった。さらに突っ込んでくる取巻き(1)の腹部めがけパイプを思いっきり振った。その一撃は身体能力強化ごときでしのげるものではなかった。取巻き(1)は勢い良く後方へと吹き飛び地面に倒れ込む。

「え!?意味わかんねぇ、何でお前が吹き飛ばされてんの?・・・・」

リーゼント達は目の前でおこった異常な出来事を理解出来ず固まってしまう。
そんな彼らに玲は何の容赦もなく攻撃を仕掛けに動き出す。
リーゼントは焦りながらも反撃をしようとするが発射されるパイプは玲の体を当たるどころかカスリもしない。
そんなリーゼントに玲は正面から走っていき、持っていたパイプで腕を殴りつけた。
リーゼントはあまりの痛みに殴られた部分を抑えうずくまったまま唸り始める。さっきまで笑っていた2人もその光景に表情を一変させ震えている。

「お前らあんま調子こいてんじゃねぇよ、見てて不愉快だ、俺の前から今すぐ消えろ!!」

玲は鉄パイプを突き出し感情的に怒鳴りつける。その怒鳴り声には隠れていた凛も思わずビクついてしまう。それを正面から受けた3人は完璧に心を折られ泣きそうになっている。

「おっ、俺たちが悪かった、た、頼むどうか見逃してくれ」

取巻き(3)がどうにか助かろうと玲の足にしがみついてくる。

「言ったよな、俺の前から今すぐ消えろって」

玲は鉄パイプを振り上げ地面に叩きつけた。

「す、すみません、リ、リタイア、リタイア!はやく出ろよ!聴こえてんだろ!はやくゲート開いてくれよ!」

取巻き(3)はもう完全にパニック状態に陥ってしまい、なかなか出てこないゲートに焦り、怒っていた。
他の2人もリタイアを選び暫くして現れたゲートに3人仲良く吸い込まれていった。

「あいつらほんとクズだな」

玲は1人置き去りにされた取巻き(1)に近づいていき軽くほっぺたを叩いた。

「おーい、大丈夫か?」

「ひっ!助けてくれ!おい、太一、健太、晴人!!」

玲に起こされた取巻き(1)は仲間の名前を叫ぶが彼等からの返事は返ってこず、代わりに玲が答える。

「薄情な仲間だな、倒れた仲間置いて全員逃げちまうんだからよ」

「た、たすけて、助けて下さいお願いします」

自分の置かれた状況を理解し取巻き(1)は玲に慈悲を求める。そんな取巻き(3)に玲は蹴られ倒れている生徒を見て言った。

「あいつも、きっとそう思ってたんだろうなでもお前らはどうだ?そんな彼をいたぶったんだろ、俺がそんな奴らの願いを受け入れると思うか?」

玲の言葉に取巻き(3)は泣きながらゆっくり首を横にふる。

「だよな」

玲は腕を大きく振り上げる。その姿に取巻き(3)は目を瞑り、痛みを覚悟した。しかし玲からの一撃はなく代わりに言葉をかけられた。

「俺にいたぶる趣味はねぇよ、目障りださっさと消えろ」

目を開けると玲の姿は前にはなくいじめられた生徒の介護をしていた。
取巻き(3)は玲の言葉通りデバイスに向かいリタイア宣言をした。

「おい、大丈夫か?」

玲はいじめられていた生徒の口に貼られたガムテープを剥ぎ、体を起こしてた。
どうやらこの生徒はガムテープで口を塞がれリタイアすることが出来なかったのだろう。
生徒は自由になった口でただひたすらに「ありがとう」と玲に呟いていた。
その状況を見て隠れていた凛が玲のところに駆け寄ってくる。

「大丈夫?はやく戻って治療した方がいいよ」

「お礼はいいから早く学校戻って治療してもらえ、身体中痛むんだろ」

凛に言われた通り玲はその生徒を学校に戻るよう促した。
生徒の方も玲の言うことに従いリタイアし、ゲートの中へと消えていった。





















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