ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)
決戦の時です(戦)
なぜか不機嫌な彩奈と文化祭を回ってしばらくすると、やりたくもない行事がボクの身に降りかかって来る。
場所は体育館で、それなりにぼちぼちと人が入っている。最前列にいて、こちらを見て笑っている桐島をぶちのめしてやりたい衝動にかられるが、その前に幕が開けて馬鹿馬鹿しい催しが始まる。
「さあ、やってまいりました。今から始まりますのは、三年のイケメンで有名な野村 賢太、二年の学校一の変態と名高い九重 晴人がこちらの純真無垢な白河 瑞希を求めて戦う早押しクイズ対決でございまーす!」
上機嫌で司会進行を務めている神咲さんを睨みつけるが、本人は慣れた様子でそれをスルーし、さっさと話を進める。
その横では瑞希さんが恥ずかしそうに顔を赤らめて、マイクスタンドの前にちょこんと座っている。
「では早速、第一問目にまいりましょう!」
デーデン
神咲さんがそういうと、如何にもテレビで流れてそうな感じのBGMが流れ始める。
「Hになればなるほど、硬くなっていくものとは何でしょう?」
「はぁ!? それって……」
「九重さん。答えるのであれば、お手元のボタンを押してからお願いしますよ」
問題の違和感に思わず声を漏らしてしまったボクに、神咲さんが注意を促す。
っていうか、この問題って……。
「正解は、『鉛筆』だな!」
ボクが困惑している間に、野村先輩はボタンを押して解答権を知らせる札が上がったところで、キメ顔を作って答える。
「残念、不正解です」
「な、なぜだ!? 鉛筆以外になにがあるというんだ?」
存外に不正解を告げられて、野村先輩が司会者に文句を垂れるが、何の応答もせず制限時間が過ぎていく。
「答えは、ちん……。だ、『男性器』」
「ピンポンピンポン。九重選手、大正解です!」
公衆の目があるので、少しでも知的を装うように言い直すボク。
その横で、野村先輩が驚いたかのような表情で、唇を噛み締めながらつぶやく。
「な、なんだと!? そんな答えがあったなんて……」
「さあ続いて、第二問目。大人が二人裸で密着する行為で出たら終わりになるといえば何でしょう?」
「ふっ、これは簡単だな。答えは『相撲』だろう」
「ブッブー。不正解でーす」
「ど、どうしてだ? これ以外の解答など、見当もつかない……」
野村先輩がうなだれている間に、ボタンを押して答える。
「セッ……。せ、『性行為』」
「正解でーす!」
ボクに正解が告げられると、野村先輩は面を食らったかのようにこちらを睨んで来る。
「では、第三問目。毛の生えた棒を入れたり出したり、中で動かすと、中は白い液でいっぱいです。さて、何をしているでしょう?」
「わかったぞ。答えは『歯磨き』だ!」
「はい、違いまーす」
野村先輩の解答をバカにするように鼻で笑いながら応答する神咲さん。
というか、そっちの答えを当てる方がすごいと思うのはボクだけだろうか……?
「えっと、『ピストン運動』」
「はーい、正解です。九重選手、なんと三問連続正解です! この結果、瑞希さんはどう思われますか?」
「え!? いや、あの、……ハル君はやっぱりすごいんだよ!」
急に振られてしどろもどろになりながらも、ボクのことをしっかりと評価してくれる瑞希さんに、ボクは感銘を受ける。
だが、欲を言うならこんなことで褒められたくはなかったと思うばかりである。
「第四問目。男の子と女の子がピッタリとくっついてあることをしました。その後、女の子が男の子に一言、「やっぱり、大きいね」さて何をしていたでしょう?」
「これは、『背比べ』か!」
野村先輩の解答にいちいち返答するのも煩わしくなったのか「ブー」と、不正解を知らせる音だけが流れるようになった。
そんな中、ボクが恥ずかしそうに答える。
「『69』ですかね……」
ピンポーン
「第五問目。これが最終問題です。玉に長いものがついていて、その長いものを弄ると中から何かが出てきて、そしてとてもいい気持ちになります。さて何でしょう?」
問題が発表されて数秒、さっきまでの威勢を失った野村先輩は、じっくりと考えてから答える。
「……『くす玉』ではないか?」
ブー
「うーん、『射精』かな」
ピンポーン
「はーい。これにて勝負終了です。結果は……九重選手の完全勝利となりました!」
ボクが勝ったことなど周知の事実であるが、一応お約束の溜めを作って結果を発表する。その後、勝利インタビューや賞金などを受けとる。
すると、野村先輩が清々しい笑顔を浮かべながらこちらに向かって来る。
「フッ、負けたよ。九重君、君は紛れもなく凄い才能を有していたんだね。これまでの発言を詫びよう」
「い、いや。別に全然大丈夫ですよ」
今まで高圧的だったのに急に物腰が柔らかくなり、ボクは対応に困る。
「これといっては何だが、僕も弟子にしてくれないかい?」
「絶対に嫌です!」
「なんでなんだい? 僕は君のことをもっと知りたいのに?」
「嫌だー。なにか嫌な予感がする」
「待ってくれよ、師匠ー!」
身の危険を感じ、これ以上弟子を取りたくないボクは、懇願する野村先輩から逃げるのであった。
後日。文化祭が終わり、虚脱感に苛まれているクラスメイトをかき分けて帰宅していると、背後から声をかけられる。
「ハル君。おめでとう」
「あっ、瑞希さん。ありがとうございます」
「すごかったね。クイズ対決」
「いや、そんなことないですよ」
照れながら答えるボクをよそに、瑞希さんは俯いて小さな声で話す。
「……あのさ、ハル君、勝負に勝っちゃったから何か一つ、私でよければ何でも願いを聞くよ?」
「えっ? それって……」
そう聞いた刹那、様々な願いが浮かんで逡巡する。
なんでも、なんでもかぁ。……ってことは、つまりあんなこともこんなことも良いわけで。
「お願い事、決まった?」
「はい、決まりました。瑞希さん、もしよかったらボクの」
「…………」
瑞希さんは、ボクの願いを黙って聞いてくれている。
「ボクの弟子として、今後も付き合ってくれませんか?」
「はいっ!」
ボクの一番の願いに、瑞希さんは満面の笑みで答えた。
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