ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)
勝負には駆け引きが必要です(罠)
「ふっふっふ、これで晴人くんは、私にメロメロになりました。判定は明らかですね!」
シズネは勝ち誇ったかのように、瑞希さんを見ながら鼻を鳴らす。
「いや、別にボクは君になんて惚れてないからね」
「なんですと!?さ、さすが変態の化身、アレぐらいでは堕ちなかったか」
「誰が変態の化身だ!」
ボクのツッコミもシズネの耳には届いておらず、頬を吹くらませ悔しがってるようだ。
「つ、次は私の番だね」
さっきのがよほど衝撃的だったのか、まだ顔の火照りが冷めやらない瑞希さんが綿棒を掴む。
「ハル君。ここに寝転んで」
瑞希さんはカーペットの上に正座し、自分の太ももをポンポンと叩く。
「はっ、はい」
ボクは緊張しながらも、瑞希さんの太ももの上に頭を置き目を瞑る。
そして、鼻腔をくすぐる仄かな洗剤の香りを脳裏に焼き付けようと深呼吸をする。
「じゃ、じゃあ行くよ」
瑞希さんはボクの耳元でそう告げると、耳の中を掃除する。
シズネのように突飛した行動をするのではなく、順調に事を進め安堵しているボクの不意をつくように、息を吹きかけてくる。
「ふぅっ」
「ひゃふぅっ」
ボクは思わず奇声をあげ、耳を両手で押さえながら飛び上がる。
「さすが一番弟子ですね。まさか晴人くんの性感帯をくすぐるとは……」
シズネが頷きながら感心している横で、瑞希さんは心底不思議そうに顔を傾ける。
「えっ?耳掃除の最後ってこうしない?」
無邪気な笑顔でなんの計算もなく、そんな事を言う瑞希さんに向け、ボクは愛想笑いを浮かべる。
「で?で?で?勝者はどっち?」
シズネは嬉々として、ボクに審査を求める。
「勝者は……えっと、瑞希さんで」
「えっ?私?やったー」
「ぐぬぬぬぅ。で、でもまだこの勝負はまだ序章の序章。次こそ勝ってみせます!」
シズネはハンカチを咥えて悔しがり、瑞希さんは両手を上げて喜んでいる。
ま、二人とも楽しんでいるなら何よりだと思い、ボクはシズネに勝負の続きを促す。
「で、お二人さんは次なんの勝負するの?」
「料理対決です!」
シズネは髪を結びエプロンを着て、どこから持ち出したのかフライ返しを掴みながら、自信満々に宣言する。
「そ、それは……。ちょっと変えたほうがいいんじゃない?」
「わたしは別にいいよ」
ボクは言葉を選びながら内容の変更を提案するが、それより先に瑞希さんが了承してしまう。
「私お料理得意だし、この前もハル君に美味しいって言ってもらえたんだから」
瑞希さんは前のお弁当事件で、ボクが苦し紛れに言った感想を真に受け止めたのか、やけにノリノリだった。
「くっくっく、少し大人気ないかもしれませんが勝たせてもらいますよ!」
シズネは勝利を確信した笑みを浮かべながら、キッチンに向かって行った。
二人が調理を始めて数分、テレビを見ながらのんびりと待っていると、早くも料理を作り終えた瑞希さんが、ボクを呼びかける。
「ハル君。お料理できたよー」
「あ、はい」
正直言って食べたくないのだが、審査を引き受けてしまった以上食べるしかないと、心に言い聞かせ食卓に座る。
「それで、瑞希さん。これは一体?」
机の上には一品だけ、小鉢の中に水に浮いた黒い物体が入っていた。
「時間があまりなかったから凝ったものじゃなくて、簡単なものにしようと思ってワカメスープにしてみました」
瑞希さんの言葉に、ボクは安堵の息をこぼす。
流石に瑞希さんとも言えど、スープにワカメと鶏ガラだけ入れときゃいいだけのものに、失敗などしないだろう。
そう思ってたのに……。
「うっぷ。ゲホッゴホッ」
口に含んだ瞬間に、スープからするはずのないアルコールの臭みと苦味が一気に込み上がってきて、ボクは途端にむせてしまう。
「あれっ?もしかして美味しくなかった?」
「これスープっていうか、料理酒でワカメを煮詰めただけなんじゃないですか?」
「だって和乃ちゃんから男の子はみんなワカメ酒が好きだって聞いたから……」
瑞希さんはボクに問い詰められ、しゅんとなり可愛くうなだれる。
「だからあの人の言ってることは真に受けちゃダメですって!」
「くっくっく、やはり私の勝利のようですね」
「で、君の料理はなんなのさ?」
「私の料理は晴人くんの大好きなぶっかけうどんです」
「ぶっかけだけを強調して言うんじゃない!」
って言うか、一番最初に持ってたフライ返しはいつ使うんだよ。そう思いながら器の中を覗き込む。
見た目は普通のぶっかけうどん。そして肝心の味はというと、
「うん。まあ、普通にうまい」
「よしっ!」
ボクの感想を聞いて、シズネは小さめにガッツポーズをする。
ちょうどお腹が減っていたので全て平らげると、シズネが期待の眼差しでこちらを見てくるので、しょうがなく言ってあげる。
「じゃあ結果発表。料理対決の勝者は……シズネ」
「お粗末っ!」
ボクが誰もが予想通りの判定を下すと、シズネは頭に巻いた髪留めを取りながらキメ顔で言った。
「よくそんな恥ずかしげもなく、某大人気漫画の真似できるな」
ボクがジト目を向けながら言うと、シズネは膨れっ面になり抗議してくる。
「っていうか、美味しかったんならちゃんと服をはだけさせてよー」
「だれがそこまで再現できるかっ!」
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