ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)
いきなりお家に二人はハードルが高くないですか?(難) 前戯
ボクと白河さんはお昼ご飯を食べに屋上に来ていた。
ボクが美少女と二人きりでお昼という状況で感動に浸っていると、白河さんはいきなり着ていた服を脱ぎ始めた。
「こ、九重君も早く脱いでよ。私だけじゃ……恥ずかしいよ」
ボクの視線を気にして、真珠のように白い肌を手で隠しながら言ってくる。
「へっ?いやっ、ちょ、ちょっと。なんでいきなり脱ぎ出してるんですか?」
「そ、それは九重君がそれを持ってきたから……」
そう言いながら白河さんが指差した先には、缶のポカリス○ットがある。
「これがどうして服を脱ぐことに繋がるんですか?」
「だってそれ青い缶だから……あ、青姦をするのかなって」
瑞希さんはギリギリ聞き取れる蚊の鳴くような小さい声で言う。
「いやいやいやいや、そっ、そんなわけないでしょう」
思考回路がぶっ飛びすぎでしょ、という感想を頭の中に浮かばせながら、
「と、とりあえず早く服を着てください」
ボクは脱いでいた服を拾い、白河さんの方を見ないように顔を背けて腕を伸ばしながら手渡す。
「ご、ごめん。ありがと」
自分の解釈が間違っていたことに気づき、恥ずかしそうに顔を手で必死に隠してながら服を受け取った。
ボクは早急に何か話題を変えなければと思い、目に入った白河さんのお弁当について話題を振る。
「そのお弁当って白河さんが作ったんですか?」
「う、うん。料理は少しだけならできるんだ」
「そうなんですか。いやー、とても美味しそうだからボクも白河さんの手料理を食べてみたいですよ」
「……なら作ってきてあげようか?」
「えっ、いいんですか?」
冗談半分で言ったのに思わぬ返しが来て、ボクは激しく動揺してしまう。
「うん、いいよ。一人分も二人分もあんまり変わらないし……」
「本当ですか?めちゃくちゃ嬉しいです」
素直にとても嬉しかった。ボクのこれまでの人生の中で一番嬉しい出来事かもしれないくらい。
ボクが嬉しさのあまり感慨に浸っていると、白河さんがボクのお弁当を見ながら聞いてくる。
「九重君のお弁当はお母さんが作ってくれてるの?」
「いや仕事がいつも忙しいみたいで、前は自分で作ったりもしてたんですけど、最近は妹がボクのぶんも作ってくれるんですよ」
「兄妹の仲がいいんだね」
「でもそんなことないですよ、しょっちゅう僕のことを煙たがりますし……」
「いいな、私一人っ子だからそういうのも憧れちゃうな」
そんなことを言う白河さんの瞳は、どこか寂しそうに感じとれた。
午後の授業を終えてさっさと家に帰ろうと、下駄箱から靴を取り出しながらふと外を見てみると、さっきまで降ってなかった雨がポツポツと降り出していた。
「天気予報、ちゃんと見とけばよかった……」
他の生徒が傘を差しながら帰っていくのを見ながら雨が止むのを笠地蔵のようにじっと待っていると、帰ろうとしていた桐崎光一がボクに気づき話しかけてくる。
「なんだ?ハル傘持ってきてねぇーのか?」
「あー、うん。今日はちょっと寝坊してたから」
主に白河さんのことを考えていたら、目が冴えてしまいなかなか寝付けなかったからだ。
「ちっ、しゃーねーな、まあハルん家はこっから近いし入れてってやるよ」
そんな悪態をつきながら傘を広げ、手招きをしてきた。
ボクがもし女の子だったら、こんなさりげない優しさで恋に落ちていたかもしれない。とか変なことを考えながら傘の中へ入いる。
「つーか、いいよなぁー、ハルはさー」
桐島は前を向きながら唐突に言う。
「なんで?」
「だってお前あれだぜ、学校一の美少女と付き合ってるんだろ?」
「いや、だから付き合ってはないってば」
「あーはいはい、そうでしたね。お二人さんは師弟関係でしたもんね」
「それもよくわかんないんだけど……」
「おっ、噂をすれば、お弟子さんがお師匠様をお待ちかねだぞ」
校門に朝と同様に、白河さんがボクのことを待っていた。
「あっ、こ、九重君」
白河さんはボクに気づいて駆け寄って来る。
「ふっ、俺はお邪魔みたいだな」
「ちょ、そんなことないって」
「ハル。幸せになっ!」
親指を立てながらウインクをして、ボクをふざけながらも勇気づけてから走って帰っていった。
「傘、入る?」
傘を失い雨に打たれるボクを見かねて、瑞希さんが慈母のよな微笑みを浮かべながら尋ねてくる。
「すみません。ありがとうございます」
白河さんの傘は二人で入るには少し狭い折りたたみ傘だったので、肩が触れてしまいそうなほど距離が近かった。
これだけ近いとなんだかいい匂いがしたり、横から見るとまつげ長いなとか感じることがいろいろある。
「傘、ボクが持ちますよ」
「あ、うん。ありがと」
そんな白河さんの横顔に心を奪われていると、
「さっきの人って九重君の友達?」
桐島が走って帰っていった方を見ながら聞いてくる。
「はい。まあ中学が一緒だったんで」
「九重君ってハルって呼ばれてるんだね?」
「まあでもそう呼んでるのはあいつだけですけどね」
中学の始業式で出会って早々に、あのあだ名をつけられたんだったなー、とか数年前のことを思い出していると、
「わ、私も九重君のことハル君、って呼んでもいいかな?」
白河さんは顔を赤く染めながら聞いてきた。
「は、はいっ、それはもちろん是非っ」
「ハ、ハル君それでなんだけど……」
桐島にあだ名で呼ばれるのとは、また違った嬉しさがこみ上がってくる。
「私のことも瑞希か、あだ名で呼んで欲しいかなー……なんて」
ボクはその言葉に反応できずに壊れたロボットのようにフリーズしていた。
「いやっ、ち、違うよ。彼氏彼女みたいなのじゃなくて、良い友達として、師弟としてだから……」
「わ、わかりました。じゃ、じゃあ普通に瑞希さん……で」
「う、うん。ハル君」
そんなまさに付き合いたてのカップルみたいなやり取りをしていると、ボクの家が見えてくる。
この時ボクは、初めて学校から家がもっと遠ければいいのにと思った。
「すみません。家まで送ってもらっちゃって」
「ううん、いいよ全然。だってハル君は私の師匠なんだから」
家の玄関先で上がってもらったほうがいいのかな?と悩んでいると、急にドアが開きドアノブがボクの背中に突き刺さる。
「ん?なんだ、晴人もう帰ってきてたのか?せっかく俺様が直々に迎えにいってやろうかと思ってたのによー」
中からボクの兄、九重 拓人が車の鍵をジャラジャラと指で回しながら出てくる。
そして拓人は横にいる瑞希さんに気づき、まだ痛さで背中をさすっているボクの耳を引っ張り小さな声で耳打ちをしてきた。
「おいおい。ちょっと待ってくれよ、晴人これは一体どういうこった?百文字以上で十秒以内に簡潔に述べろ」
「いや、そんなの無理だから。今日はたまたま傘を忘れたから入れてってもらっただけだよ」
「そうか、そうか、女っ気が全くなかった晴人もやっと男になる決心がついたのか……」
「だからそんな関係じゃないってば」
ボクの言葉は、悦に浸る兄さんの耳には届いていないようだ。
「まさか晴人、お前あの子をこのまま返すつもりじゃねえだろうな」
「それは……どうしようか迷ってたところで……」
「ふっ、しょうがねえな。ここは俺様に任しとけい」
兄さんはボクの頭を乱暴に撫でて格好をつけてから、白河さんと向き合い説得しようと試みる。
「あー、俺様……じゃねえや俺はこいつの兄の拓人な」
「こんにちは、私は白河 瑞希です」
瑞希さんは礼儀正しく挨拶をする。
「せっかくだし、何にもないけどうちに上がってきなよ?」
「いえいえ、私はもうこれで……」
断られそうになり、兄さんはボクに啖呵を切っていたので、引くに引けず慌てて手を合わせて必死にお願する。
「大丈夫、大丈夫。絶対なんにもしないし、マジでこの家安全だから」
はたから見たら、夜の仕事に誘う危ない人にしか見えない。
「そ、それじゃあお邪魔します」
兄貴はボクに「俺様の勇姿をしかと見たか」というような視線で見つめてきたが、年下の女の子に恥も外聞も無く頼み込む姿はもはや威厳もへったくれもなかった。
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