ボクの完璧美少女な弟子は変態すぎて手に負えません(笑)
ストーカーは犯罪ですから(罪)
ボクたちは店主に白い目で見られながら店を出て、ミラの家に向かっていた。
「ここがミラの家です」
ミラが指差す先にはいたってごく普通の団地があり、その隣にはドラッグストアがあった。
ミラが先導して団地の中に入っていこうとすると、背後から見知った声に呼び止められる。
「あれっ?ハル兄?」
「彩奈?どうしたんだこんなとこで」
ボクが何気なくそう聞くと、彩奈は手に持っていたレジ袋を背中の後ろに回して隠した。
「べ、別になんでもない。それよりハル兄は毎回違う女の子をはべらせて何がしたいの?」
彩奈は奥にいるミラをチラッと覗き見た後、不機嫌になりボクに強く言ってきた。
「今日はたまたま桐島に呼び出されて、この子の相談に乗るって約束しちゃったからさ」
「ミラはこの子じゃないです」
ミラは横に駆け寄って来て不服そうに頬を膨らませながら、ボクのシャツの裾を引っ張った。
「わかったってミラ。だからそんなに強く掴むなって、服が伸びるだろう」
「へ、へー。もう呼び捨てで呼んでるんだ。なんだか瑞希姉さんたちとよりも仲良さそうじゃない」
瑞希姉さんたちっていつからそんなに仲良くなったんだ?海に行った時ボクの知らないところで何かあったのかな?
みんな仲良くなってくれていることに嬉しく思っていると、
「で?そのミラちゃんはなんで濡れてるの?」
ミラの方を指差しながら、彩奈が尋ねてくる。
「ああ、これはお店で、はるっちにかけられたです」
「か、かけられた……」
彩奈は開いた口を手で押さえながら、目線をボクとミラで何往復させながら顔を赤くした。
「いやこれお水だから。ごめんなミラ」
「別に大丈夫です」
そんな弁解はショート寸前の彩奈には届いておらず、去って行った。
「あわわわ、ハル兄が犯罪者に!犯罪者にー!」
ミラは彩奈より年上なのだが、見た目は小学生くらいなので勘違いしたのだろう。
彩奈は脇目も振らず、家の方向に走って帰って行った。
「はるっちは犯罪者です?」
「んなわけあるか」
ミラの家の中に入ってみると、部屋には家具が一切なく何とも質素な部屋だった。
女の子の部屋に初めて入るので緊張していたのだが、この部屋を見て一気に緊張感が解け喉が乾いてきた。
「飲み物とかないの?」
「ないので買って来るです」
「そう?」
「近くの自動販売機で買って来るです」
「ありがと」
ガチャリ
ドアが開く音がして、ミラが帰ってきたのかと思い玄関先を覗いて見ると、そこに立っていたのは先の尖った鋭利な出刃包丁を持った痩せこけた男だった。
「ひっ」
男は虚ろな目でボクの顔を見るなり激昂し、土足のまま部屋に入り込んできた。
「なんでだよぉー。俺はお前のことが心配で、変な男が寄り付かない様に朝も昼も晩もお前のことずっと見守ってやってるのによぉー」
男は手に持った包丁を掲げ今にも襲いかかってきそうになり、ボクは急いで距離を取る。
「お前がストーカーか!?」
「俺はストーカーなんかじゃない!俺はミラちゃんと結ばれるためにここに舞い降りたんだ」
男が叫んでいる中玄関のドアが開き、ミラが部屋に入ってきた。
「誰、です?」
「ミラ!逃げろ、そいつが例のストーカーだ」
ボクがミラに忠告すると男は余計怒り出した。
「今日だって変な男が入って来たからお前のこと助けてやろうと思ったのによぉー」
男はボクの方へ振り返り、包丁を両手で持ち向かってきた。
「でも安心してねミラちゃん。俺がそいつやっつけてやるからよぉー」
「くそったれぇーーー!」
死んだ。
そう思って瞑った目をなかなか開けれずにいると、なぜかストーカーの断末魔がボクの耳に木霊した。
「ぎゅうぇぇぇーーー」
すると床から紐が飛び出てきて、男を宙吊りにした。
「この家はホームアローンか!」
「はるっちも知ってるんです?」
「まあな」
小さい時に見たときは疑問に思わず大笑いしたものだが、いざ現実でこんな状況になると大分引くな。
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