チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第九十五話 本当の真実

 ー今朝。

 俺はまず戦争に行く前に確認しておかないといけない事がある。それは校長が本当に人族の裏切り者かどうか。そして本当に裏切り者なら俺は皆には内緒で校長を殺すしかない。

 だがそれ以外に、俺は校長が本当に裏切り者なのかが自信が無くなってきた。それも昨日シアがあんなにも校長は違うと言ったのもある。

 確かに俺も最後まで疑問な所もあるのだ。もし本当に俺を殺したいなら魔王なんて回りくどい事をしなくても今までに何度でも出来たんじゃないか。それに敵なら俺に何で修行を付けたのかそれが疑問だった。

 そして校長は学校にある校長室をもう自室に使っているようなので、俺は学校は閉まっているがこっそり不法侵入してしまった。

 この世界でも当然不法侵入は犯罪だ。

 けど戦争の為の重要な事だから大丈夫!

 .......大丈夫じゃないな。本当に捕まったらアドルフ王に何とかお願いして逃がしてもらおう。

 そう思いながら俺は校長室のドアをノックをせずにドアを開いた。

 その瞬間校長が背後からナイフを俺の首に突き付けた。

 しまった。俺は流石に寝ていると思っていたが不用心すぎてしまった。

 「あれ?レイロード君じゃないですか。すいません。てっきり盗賊か誰かが来たのかと思いましたよ」

 だが校長はすんなりとナイフを収めた。

 .......やっぱりおかしい。本当に裏切り者なら今殺している筈だ。

 「校長。話があります」

 俺は校長に裏切り者である証拠を話した。

 その話をしている間、校長は俯いていた。

 反省しているのか、今から俺を殺すのかは定かじゃない。だからこそ俺は剣をすぐに抜ける準備をしておく。

 「流石にレイロード君も気付きましたか。しかし私の話も聞いてください。私は確かに邪神や剣聖に手を貸していました。ですがもう手を貸してはいません」

 校長はきっぱりとそう言って謝り、今までやった事を正直に話した。

 俺はその話を聞いて驚かずにはいられなかった。

 「まさか、ミレムさん、ジルダさんの特別生の二人を監視にするなんて中々最低な事ですね。けど一番の驚きはウレイさんですね。まさか剣を作らないと言った裏にそんな事があっただなんて」

 「自分も後々中々やばい事をしたなとは思いましたよ。しかし全員結局止めていきました。そして皆はもし裏切ったことが分ったらやばいのでばれない所に隠れてもらってますよ」

 だがそれでも不思議な点がある。

 「何故俺達の味方になろうと思ったんですか?」

 これがはっきり答えられなかったら俺は信じることは出来ない。

 「やっぱりそれは聞きますよね。なるべく言いたくないんですが」

 校長は照れ笑いのような笑みを浮かべ、話した。

 「私は確かにシアを拾いました。シアはその時人間不信でいつも私の近くをうろちょろしているような子で最初は鬱陶しい奴だなと思いながらも育てました。それから初めは監視目的、もしくわ協力してくれるなら取り入れようと思ってたんですけど、段々と一緒に生活していく中でその気持ちが薄れて、自分が父親になったような気分になりました。それが偽りの父親であっても私にとっては幸せでした。そしてこんな人たちがいる人族をほんとに滅ぼしてもいいのかという気持ちになりました。そして自分の中で段々と人族に復讐する事をシアと過ごす事で忘れていきました。そしたら今度はレイロード君、あなたが現れた」

 「僕ですか?」

 今の話で俺が関係しているのか?

 「はい。私は人族に復讐する気はなくなりましたが邪神に何か出来るかと言えばそうではありませんでした。そこで希望と思えるあなたに出会うことが出来ました。私の考えはあなたがこの学校に革命を起こしてくれて人族の誰もが強くなり、邪神を倒すという計画でしたが、世の中はそう上手くはいきませんでした。邪神は今にも攻めてきそうなんですよね。ですから私は今までの罪滅ぼしの為に邪神の仲間と思わせて道ずれで殺そうと思っています。今まで散々色んな人騙してきましたから」

 この人は俺を何だと思ってるのだろう。

 ただ、俺はここまで来て九割校長を信じる事が出来た。

 だけど後一割がまだだ。

 「その話は一旦置いときましょう。俺が聞きたいことはもう一つあるんです。何で俺達を信用しているなら魔王に関して嘘の情報を流したんですか?」

 その言葉を発したら校長は慌てた表情で、

 「あれは!確かに邪神に王にそう言えって言われてあなたにも伝えました。けどあれはあなた方が悪いんですよ!?」

 「え?僕達何かしました?」

 校長は怒った表情で、

 「前も怒りましたけどあなた方がまさか勝手に魔王城に奇襲を仕掛けに行くとは思わないじゃないですか!私は王とその兵隊、そしてあなた方全員で攻めて安全に勝つつもりでした!」

 ああ。確かに俺あの時校長に怒られたな。修行の日々と昨日のお楽しみですっかり忘れていた。

 「分かりました。校長は信じます。今までの事もありますし、ですが罪滅ぼしで死ぬのだけは絶対に止めてください」

 「......しかしそれしか方法は私には思いつきません」

 校長も必死に考えてその選択をしたのかもしれない。だけどそれは、

 「俺は罪滅ぼしで死ぬのは逃げだと思うんですが。邪神も剣聖もあなたの攻撃で絶対に死ぬんですか?もしそうじゃないなら意味が無いでしょう」

 その言葉に校長は目を見開き俯いた。

 「だったらあなたにはどうしたらいいか分かるんですか?」

 俺は先程の校長の話を聞いた時に思い付いた。

 「僕に作戦があります」

 「今のレイロード君。凄い気味の悪い顔をしてますよ?」

 失敬な。

 俺はそれから作戦を校長に話した。

 作戦は簡単だ。まず校長には罪滅ぼしの為に皆の嫌われ者のように演じ、俺と先程の会話でなるべく時間を稼ぐ。

 そして頃合いと思った時に校長は道ずれではなく邪神と剣聖を牽制程度でいいから攻撃し、こちらに戻り皆に謝るという簡単な作戦だ。正直に言ってこれ以上の作戦は平凡な俺には思いつかなかった。

 -現在。

「ルドノフ!裏切るのか!?」

 邪神と剣聖は少し汚れているだけで殆どダメージが入っていなかった。

 「ええ。すいません二人とも。しかしそれも仕方ないでしょ。確かにシアに監視の目を向けてたのも本当ですがそれでもやはりシアを助けて世話をしたり何だかんだ楽しかったんです。まるで自分に娘が出来たようで」

 そう語る校長は今までの事を思い出して微笑んでいた。そしてシアの方を振り返り、

 「今回私はシアに監視など、今までやってきた事を正直に話したかったんです。本当にすいませんでした」

 校長はそう言ってシアに頭を下げた。

 「いえ。校長が味方でよかったです」

 シアは泣くのを止め笑顔でそう答えた。

 「すまなかったシア。それに皆も。邪神と剣聖をだます為に仕方なかったんだ」

 「いいわよ。先生がそうするべきだって思ったんなら」

 「ああ。気にするな」

 「私はちょっと怒ってるけどね。けど別に許すわ」

 リリアもセシリアもマリーもなんだかんだ許してくれた。

 「これが終わったら言う事聞いてもらいますからね」

 シアは未だ少し不満そうだった。

 「ああ。約束だ」

 そして俺は剣聖と邪神に言ってやった。

 「お前らって本当に馬鹿だよな」

 それに若干二人の表情が怒りに変わる。俺も急にそんな事言われたら腹が立つ。だけど、これには意味がある。

 「だってそうだろ?少し考えたら分かるもんだろ。何でわざわざ俺が敵って分かってる校長をここに呼ぶんだよ。呼ぶわけがない」

 それに二人は自分達が何故それを考えなかったのか悔やんでいるのか無言だった。

 「いや。まさかここまで騙されるとは思わなかったよ。俺はちゃんと朝早くに校長に話を聞きに行ったさ。そしたら校長は謝ってくれた。そして今までやってきたことも全て話してくれたんだ。そして少しでも時間稼ぎの為にこうやって芝居をしたってわけだ」

 「何故ここまでやったんだ?そこまでする必要は無かっただろ」

 それもそうだ。彼女達を騙してまでやる事ではないのかもしれない。けどこれは仕返しだ

 「何でって自分達が一番分かってるだろ?散々俺達をもてあそびやがって。だからこそお前達が自分達が優位だって思ってた様子が面白すぎたよ」

 正直今回は相当腹が立った。毎回俺達が利用するかのように使われていたんだから。天龍の時は偶々なのかもしれないが、魔王に関しては王国の兵隊を連れてきても勝てるかどうかは不明だ。

 「どうだ?自分達が弄んでいると思ったら逆に弄ばれている気分は?」

 「ねえ。先生が多分あのジジイの影響を受けてドSになったわ」

 後ろからそんなリリアの声が聞こえるが自分でも少しそうなんじゃないかと思ってしまうから止めて欲しい。

 邪神は肩を震わせ、

 「たかが人族の小僧が粋がるなよ!行け!」

 その号令と共に邪神は後ろに剣聖と飛び、魔人が咆哮をあげながら攻めてきた。

 「ミラさん。ここはお願いします」

 「......は、はい!」

 ミラさんは話についていけていないようだったが何とか返事をしてくれた。

 「全員戦闘だ!」

 狼神の声と共に獣人も咆哮をあげ迎え撃った。

 「なあ、邪神は俺達が空を飛べる事知らないの?」

 「知らないでしょうね」

 俺は校長に確認を取ると、苦笑いで返された。

 何だかあんだけかっこよく後ろに下がったけど俺達空飛べるんだよな。

 「よし。全員生きて帰るぞ!」

 「「「おお!」」」

 そうして俺達は空を飛び邪神の元に向かった。

 アランだけは俺の背中に乗って移動だ。

 アランは先程からずっと黙っている。それに俺からは何も言えない。剣聖については歩論語

 俺達は後ろにいる邪神の所で降りた。

 すると、邪神は肩を震わせ、

 「お前!何故魔人と戦わないんだ!あの獣人達で魔人共に勝てると思っているのか!?」

 何を言っているんだか。

 「思ってるんだ。俺はミラさん達獣人を信じてる」

 俺はそう言い、剣を抜く。

 邪神と剣聖の隣には魔物が二体いるのだ。それも魔王が宣戦布告してきた時のドラゴンと同じがそれ以上のでかさのライオンの魔物だ。

 一匹は白い毛並みのライオンで、もう一匹が赤い毛並みのライオンだった。

 俺がその二体の魔物を見ていたことに邪神は気付いたようで教えてくれた。

 「こいつらが気になるようだな。こいつらは龍人の死体。魔王の心臓を触媒にして召喚魔法で呼び出した最強の魔物だ!こいつらがいる時点でお前らは負けだ」

 「俺らは誰と戦えばいい?」

 喋るのか。

 「タマが大きくなったらああなるのかな」

 「ご主人様とは一回私の事をどう思ってるか話さなきゃいけないニャ」

 俺の呟きに若干タマがお怒りだった。

 「お前らはあの小娘共を倒せ」

 「「分かった」」

 二匹の魔物は息ぴったりに返事した。

 俺が後ろを向くと、皆も頷いていた。

 「場所を移すぞ」

 ライオンはそう発言し、女性陣もそれに付いて行った。

 ここに残っているのは俺とアラン、校長の三人だ。

 「それでこれはどうするんですか?」

 校長はどう戦うのか疑問で俺に聞いてきた。だがそれよりも先にアランが答えた。

 「俺は親父とやる。聞きたいことも山ほどあるしな」

 アランは決意した目でそう言った。

 「なら校長も付いて行ってください」

 俺はそう提案したがアランから文句が来るわけでもなく、ただ剣聖を見ていた。

 「分かりました。レイロード君も気を付けてください」

 「そちらも」

 剣聖も文句はないようで二人と共に何処かに場所を移した。

 そして残るのは俺と邪神だけだった。

 「お前は全員が勝てると思っているのか?」

 「ああ。信じてる。じゃないとここに連れてきたりしない」

 「ならここに戻って来てもお前の死体を見ることになるな」

 邪神は挑発してくるが、挑発では師匠の方が何倍も腹が立つし、こんなのは慣れている。

 「違うな。皆が戻ってくる頃には俺が勝って皆生きて帰るんだ」

 「やってみろ!!!」

 邪神と俺の最後の戦いが始まる。

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