チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第八十六話 乱入

 「あんた!絶対に許さない!」

 マリーがそのまま邪神に突っ込んでいきそうだったので俺が手を握って止めた。

 「放して!」

 「あれは駄目だ」

 「けど!」

 マリーだって分かっているのかもしれない。だけどそれでも止めれないのだろう。その気持ちは分かる。

 だからこそ、

 「俺がやる」

 俺は改めて剣を構えゾーンも開放して、火魔法も纏おうとしたが出来なかった。

 それよりも頭がフラフラしてしまった。

 .....なんで。俺がそう思った時だ。

 「先生!」

 リリアの声が聞こえた時に俺はリリアによって倒されていた。

 「......え?」

 俺は今何でリリアがこんな行動に出たのか分からなかった。

 だけどすぐに分かった。リリアが急に倒れた。

 「リリア!」

 俺はすぐにリリアの元に駆け寄って、他の皆は俺とリリアの前に出て、邪神を見据えている。

 「何をした!?」

 セシリアが怒り、聞いたが、邪神は笑いながら答えた。

 「ただファイアーボールを放っただけなんだけどね。まさか反応出来ないとは思わなかったよ」

 リリアの首の下辺りから血が出ている。

 「おい!リリアしっかりしろ!」

 揺するがリリアは起きない。

 「まあ、君達は邪魔そうだからここで始末しよう」

 邪神はそう言って、手をかざした。

 俺達はそこで全員が終わったと思った。

 だが、

 「今度は間に合ったな」

 そこに突如現れたのは、俺の師匠であり勇者オーウェルのオリドさんだった。

 「師匠!それにミレイアさんも」

 そこには師匠とセシリアの母のミレイアがいたのだ。

 「どうしてここに?」

 「そんな事は後回しだ」

 今までの師匠とは違い本気なのだろう。というより本気を出さなければ勝てないという事だろう。

 「ちっ。これは少し分が悪いな」

 邪神はそう呟いて、

 「魔王の真似をするわけではないが言っておいてやろう。これから1ヵ月後に俺はこの世界を乗っ取る」

 こいつは確信している。乗っ取ってやるじゃない。乗っ取ると断言してるんだ。

 「俺はお前とは戦う気は無かったが仕方ない。ここで倒す」

 勇者はそう言って全力で走った。だがそれよりも邪神が速かった。

 「今はもうここで戦う気はない。もし戦うとしたら1ヵ月後だ」

 邪神はそう言って翼を広げ飛び去った。

 「逃げるんじゃねぇ!」

 「はっはっは。逆に感謝しろ。めんどくさいだけで俺はここにいる全員殺す事が出来るからな!」

 そう言って邪神は何処かに行ってしまった。

 だが俺は邪神なんて今はどうでもよかった。

 今はリリアだ。

 「おい!リリアしっかりしろって!」

 さっきから何度揺すっても起きないのだ。

 俺の顔から涙が出てくる。リリアはずっと俺の事を好きでいてくれて頑張ってきた子なんだ。そんな良い子が死んでいいわけがない。

 「.......頼むから。お願いだから目を......覚ましてくれよ」

 俺がそう言っても目を覚ます気配がない。

 「ご主人様。そこを退くニャ」

 タマが俺の後ろでそう言う。

 「.....嫌だ。まだリリアは死んでない」

 認めたくなかった。俺はもう嫌なんだ。俺のせいで誰かが死ぬのは。

 「リリアを助けてあげるニャ」

 「本当か!?」

 俺は驚いてタマの方を見ると、タマが頷いた。

 「だけどお前にそんな力があったのか?」

 「私の能力は獣人の神の許可出無いと使えなかったニャ。これから万が一があったときの為に許可を取ってたニャ」

 俺はそこで思い出した。タマは何故獣人の森に向かったのか。それは許可を貰う為だったのだろう。

 「ご主人様は後ろを向いているニャ」

 「え?何で?」

 「いいから向いてるニャ!」

 タマの何も言い返さない迫力を感じ俺は後ろを向いた。

 すると、タマから何やら聞こえる。

 多分呪文を唱えているのだろう。俺はその間タマを信じて待っているしかなかった。

 こんな時に自分の無力に腹が立つ。

 だけど、俺は思ってしまった。遅い。

 いくら何でも遅すぎる。

 俺はどうしても気になった。

 「なあタマ、大丈夫か?」

 返事が無い。

 「おい。そっち向くぞ?」

 返事が無いので、そちらを向くと、そこには、

 「.......お前タマなのか?」

 老いぼれた猫がいた。

 「.......見ないでって言った筈ニャ」

 「おい!これはどういうことだ!」

 何があったんだ。どうしてタマが老いぼれてそんなにも弱そうな声なんだよ。

 「.....私の魔法は絶対治療ニャ。何でも治せる代わりに自分の命が減るのニャ」

 「俺はそんな事聞いてないぞ!何でそれを初めに言わないんだ!」

 タマがこれじゃあ今にも......。

 「おい!リリアもお前も大丈夫なんだよな!?」

 「.....リリアは大丈夫ニャ」

 「リリアはってお前はどうなんだよ!俺はお前に......」

 何も返せてない。それを言う前に俺は涙がでて言葉を口に出来なかった。

 「.....私沢山ご馳走が食べたかったニャ」

 「......食べさせてやるから。お前がお腹いっぱいに......なるまで.....食べさせてやる。......食べさせてやるから」

 タマは俺と一番長い付き合いなのだ。俺が辛い時、悲しかった時、どんな時にいつも一緒にいてくれた。

 俺がリリア達と別れて寂しかった時、魔王に親が倒された時、そんな時もずっとこいつは一緒だった。

 だからこそ、俺はいつか恩返ししたいってそう思ってたんだ。

 「頼むから.....お願いだ。......いなくならないでくれよ。......俺はお前に.....何も返せて無いんだよ!」

 それでもタマは笑顔だった。

 「.......ご主人様にとって.....私は邪魔じゃなかったニャ?」

 「邪魔なわけないだろ!......大切な.....存在なんだよ......」

 「私は.....その言葉だけで満足ニャ」

 「おい!タマ!目を覚ましてくれ!お願いだ!俺はお前がいないと何も出来ないんだよ!」

 俺の涙と叫び声と共にタマは目を閉じたのだった。

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