チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第七十五話 神の本音

 俺はまたしても白い空間にいた。

 「何年ぶりだろうね」

 イルイラとは戦争の前から一度も会っていなかった。

 「そうだな。四年ぶりぐらいだろうな」

 「まさか君があの出来事を乗り越えるとは思わなかったよ」

 イルイラはあの出来事と言ったがそれは間違いなく戦争の事だろうな。

 「あの時は何であんな助言だったんだ?」

 「本当の事を言うと君は怒ると思ってね。それは僕のおかげになってしまうから。それにあれも言わなかったら君の親はあそこで君がライドを説得している間に冒険者にやられていたんだよ」

 そうだったのか。だけどそれは意味が無かったということだったんだろうな。

 だが俺はこの話を聞いて不思議に思った。

 「そういえばお前って未来が見えるのか?」

 するとイルイラは少し微笑んだ。

 「その話と今回君が呼ばれた理由が少し関係あるかもね」

 「どういうことだ?」

 「君をこの世界に転生させてのは実は僕じゃないんだ」

 「それで?」

 「そんなに驚かないんだね」

 いや驚いてるけど話が進まなから流しただけなんですけどね。

 「そんな事はいいだろ。それでどう関係があるんだ?」

 「その人の僕は使いの人なんだ」

 「要するにお前はその人が言ったから俺に助言が与えれてたということか?」

 何でだろう。イルイラはとても寂しそうな顔をしている気がする。

 「その通りだ。察しが良くて助かるよ。それを今日僕は打ち明けようと思ってね。こんな人の言う事しか聞けないロボットのような僕の」

 そう言って自嘲気味に笑った。

 「お前もしかしてロボットみたいってことでさっきから寂しそうな顔をしていたのか?」

 「もしかしてそんなに顔に出ていたかな。まあそれも仕方ないだろ。こんな僕なんだ。だからこそあの姿の時はロボットのように感じなかったんだけどね」

 「最後何て言ったんだ?」

 何故か最後の方だけぼそっと言って聞こえずらかった。

 「何でもないよ。ただそれを今日は伝えたかっただけさ」

 何でこいつは自分の事をロボット何て言うんだろうか。俺には分からない。

 「お前はロボットなんかじゃないと思うぞ」

 だから俺は今までの感謝も込めて言った。

 「何を」

 俺はそれを遮った。

 「お前は自分の事をロボットって言ってるけど、お前は俺の事を助けてくれた。それは他の人の命令かもしれない。けど俺はそんな奴じゃなくてお前に感謝してるんだ。だってお前のおかげで俺は仲間を大切にできたんだ」

 自分でも何が言いたいのかは分からないが言っておかなければならない気がした。

 「まさかただの人間に慰められるとはね」

 ただ、イルイラの寂し気な気配は少し薄くなっている気がした。

 俺はなんだか湿っぽい雰囲気だったので話を変えた。

 「そういえば俺を転生させた人は何処にいるんだ?」

 「今はここにはいないよ。それは君が最強になったら出会ってくれると思うよ」

 何て上から目線の人なんだろうか。そいつが弱そうだったらぶん殴ってやろう。

 「それよりもだ。約束の話なんだが」

 「君が十五歳まできちんと魔法剣士として出来ていたら願を叶えるってやつかい?」

 「ああ。それやっぱり最強になってからでいいよ」

 「へえ。君からそんな言葉が出るなんて本当に変わったね」

 そう言われると、前の俺はどんな奴だと思われていたんだろうか。

 「まあ、そういうことだから」

 そこからは他愛もない話で時間が過ぎていった。

 「最後に何か聞きたいことはあるかい?」

 俺はずっと心に残っていたことがある。これは誰にも言えなくてずっと心に残っていたことだ。

 「俺はさこの世界に転生して良かったのかなって思うんだよな」

 「それは良かったと断言できる。君は転生して良かったんだ。君の考えている事なんて頭を覗く必要もないね。どうせ君が転生していなかったら親が不幸な目に合わなかったんじゃないかなんて思ってるんだろ?」

 それは図星だった。俺はずっとそれだけが心の中に残っていた。

 「もし君が転生していなかったら、あの村は崩壊してそこで君の親も死んでいたよ」

 「どういうことだ?親父達は普通に俺がいなくても生きてたじゃないか」

 「それは君との修行があったからだよ。ジルドは君にしっかり強い親父を見せる為に偶に森に入って特訓してたんだよ」

 それは初耳だった。

 「それに君がいなかったらリリアはフラウスに連れて行かれて大変な目にあっただろうね。マリーも知らない人の奴隷になっていたかもしれない。君がこの世界で失ったものは確かにあるのかもしれない。けど君が転生したお陰で助かった人もいる事も忘れないで欲しい」

 何だろう。初めてイルイラがちゃんとした神に見えてしまう。

 「ありがとな。それだけ聞ければ十分だ」

 「君の夢が叶うことを心から祈っているよ」

 「ああ。後もう少しだけだ」

 そう言って俺の意識は薄れて行った。

 「さて。僕もそろそろ戻ろうかな。早く続きがしたいし」

 そう言ってイルイラも晴れた表情で何処かに行くのだった。

 俺が目を覚ますとそこには昨日一緒に寝たココがいた。

 別にココとはそういう関係ではない。

 だがよく一緒に寝ているだけだ。

 ......これだけだと大分やばいな。俺はそう思いながら下に降り、いつも通り鍛錬をする。

 だが以前と違う所は特訓にリリアが必ず付いてくる所と剣が新しくなった所だ。あれから一カ月が経ちようやく手に入れることに成功した。

 リリアがここに引っ越してきたときは特訓に付いてくるが、無言で付いてくるから軽くホラーだった。

 どうやらリリアはおかしなところで恥ずかしがるところがあるようで、自分から言えなかったらしい。

 なので俺が一緒に特訓しようと言うと、嬉しそうにしてくれるのでこっちも嬉しい限りだ。

 それからは皆でご飯を食べた。だが最近は人数も増えてそろそろ働かないといけないかなと思っていると、玄関から音が鳴った。


 レイシアが出るというので任せていると、

 「なにかおとうんさんにようがあるってよ」

 そう言うので俺が向かうとそこには校長が息を切らしていた。

 「大変です!魔王がまたしても戦争を仕掛けようとしているらしいです!」

 俺は当分働くことは出来なさそうだった。

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