チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第三十一話 レイロードVSアラン三世

 俺達がこの国に来て半年が経った。俺達は未だにBクラス冒険者だ。

 あの街にいないので、Aクラスになるか迷ったが、この国のAクラスは相当難しいクエストだらけだ。

 はっきり言って安全ではない。

 もしかしたら、リリア達が危険な目にあう可能性がある。

 それだけは嫌だ。

 それに、Aクラスは遠出しなければならないクエストもあり一日で帰ってこれない可能性もある。

 もし、その間に親父達の情報提供者が出ても困るしな。

 だが、俺達はAクラスになれる実力があるのでギルドの人にもならないかと言われたが断った。

 それが誰かの耳に入ったのだろう。

 俺達は『臆病パーティ』の称号を貰った。

 だが俺は臆病が丁度良いと思っている。

 あのゴブリン戦のように調子に乗って痛い目に合うぐらいならその方がいい。

 だが一つ問題もある。リリアは耳が地獄耳らしく全部聞こえるらしい。

 初めはリリアも我慢していたが、最近は陰口を言う奴らを片っ端から殴りかかっている。

 あのあざとい性格は何処にいったんだと言ってやりたい。

 だが流石に他の冒険者に恨まれたりするとめんどくさそうなので俺達は気にしないからとリリアに伝えた。

 その言葉でリリアも多少は我慢するようにはなった。

 しかし、何故か急に陰口を言う奴らに殴ることがある。

 それが現在行われた。俺達が案の定ギルドに行くと懲りない連中が陰口を言い、それをリリアがぶっ飛ばす。

 もう見飽きる光景だ。

 「何で、あいつらを殴ったんだ?」

 「秘密よ」

 そう言ってはぐらかされてしまう。

 俺はどうしても気になってこっそり先程殴った、相手の所に向かった。

 「なぁ、さっき何を言って殴られたんだ?」

 俺の言葉に冒険者達は戸惑っている。

 「いや。別に怒るつもりはないんだ。ただ純粋に気になってな」

 「.....お前の事だよ」

 「俺の事?」

 「お前自分が何て言われてるのか知らないのか?」

 どういうことだろうか。

 「臆病パーティじゃなくて?」

 「それはパーティだ。お前個人じゃない。お前は周りから、『ハーレム気取り野郎』って言われてるんだよ」

 なるほど。確かに言われてみれば男一人に、女性二人、ペット一匹だとそう思われても仕方ないのかもしれない。

 ......待てよ。だとすればリリアは俺の為に怒ってくれたのか。

 ただ、この場合どうするか。

 俺の為に怒って殴ってくれているのに、注意するのもどうか。

 まあ、いいか。

 リリアが俺の為に怒ってくれるのは嬉しいし。

 次はリリアが殴る前に俺が殴ればいい。

 俺はそう結論付け、パーティの元に帰った。

 「何かあったのか?」

 セシリアさんは聞いてくる。

 「いえ。何でもありません」

 俺達はそれからいつも通りクエストを受け、魔石を交換し、ギルドを出た。

 帰る途中俺はリリアの横に行き、朝のお礼を言っておく。

 「リリア。ありがとな」

 リリアは一瞬驚いたが、何の事か分かったのか、

 「仲間が悪く言われたら腹が立つからよ」

 リリアは照れ隠しなのか、目を合わせようとはしなかった。

 「だけど、次は殴る前に俺に言ってくれ。俺が自分で殴るから」

 「分かったわ。一緒に相手をリンチにしてあげましょ」

 可愛い顔でとんでもない事を言う。

 ......自分が殴らないという選択肢は無いんだな。

 「程々にな」

 俺はそう言い宿に戻るのだった。


 ~翌日~

 俺達はいつも通り、ギルドに行った。

 だが、ギルドの連中は俺達が入ってきた瞬間こちらを見てきた。流石に陰口は言われるがここまで露骨に見られたことはない。

 ......俺達何かしたかなと思ってると、受付に詰め寄る金髪の男がいた。

 「だから、ここにSクラスに匹敵する連中なのに何故かBクラスの冒険者がいるんだろ!教えてくれよ」

 「そう言われましても。個人情報ですので」

 「いいじゃねえか。名前と特徴教えるぐらい」

 あれは俺達の事を言っているのだろうか。

 受付の人は俺達が来たことに気付いてこちらを見た。

 すると金髪の男もこちらを見てきた。

 金髪の男は俺に近づき、

 「あんたらがSクラスに匹敵するのにBクラスにいるやつらか?」

 前はAクラスだったはずなんだが。

 噂が拡大されているらしい。

 「いえ。SクラスじゃなくてAクラスだと思いますよ」

 「そんな小間けえ事は気にするなよ」

 金髪の男は、俺達を見渡し、

 「お前が一番強いな」

 俺を見ながら言う。

 それにリリアが誇らしげに言う。

 「当たり前じゃない。先生は強いんだから」

 「やっぱりそうか。なああんた俺と勝負しないか?」

 金髪の男は笑いながらそう言ってくるが、

 「お断りします」

 俺は今勝負できない。

 クエストでお金を稼がなければいけない理由がある。

 「何でだよ。殺し合いじゃないんだ。一回だけ模擬戦だけでいいからさ」

 金髪は手を合わせながらお願いする。

 「また今度なら相手するので」

 「今したいんだよ」

 何て調子の良い奴だろうか。

 俺が受けないと分かったのだろうか。

 「あのお姉さんの正体をここでばらしてもいいか?」

 金髪の男は俺の耳元でそんな事を囁いた。

 ......何でこいつ分かるんだ。

 どうする。ここで受けなければこいつは本当にばらすかもしれない。

 そんなことになればセシリアさんが困ることになる。

 「分かった。やるよ」

 俺に選択肢は無かった。

 「いやー。そう言ってくれると思ったよ」

 金髪の男は明るく言う。

 「改めて俺は剣聖『アラン二世』の息子アラン三世だ」

 ......は?こいつ今なんつった?

 「あんた剣聖の息子なのか?」

 「そうだよ。やっぱり知らなかったか。まあ俺弱いしな」

 なんか自虐的な事を言ってくる。

 「じゃあ、昼にこの国の入り口を出たすぐそこでやろうぜ」

 男はそう言い去っていった。

 俺は皆の方を向いた。

 「すいません。僕の都合でやる事になりました」

 「いや。気にするな。偶にはこういうのもいいだろう」

 セシリアさんはそう言ってくれる。

 「先生。絶対あんな奴に負けないでね」

 リリアはもしかしたら聞いていたのかもしれない。

 「やるからには負けたら承知しないニャー」

 タマも応援してくれる。

 俺は絶対あんな奴に負けないと心に決める。


 ~昼~

 俺は今アラン三世と向き合っている。

 ただ少し違うのは、周りにはアラン三世が戦うとなってギャラリーが沢山いる。

 「なんでこんなにもギャラリーがいるんだよ」

 俺はそう呟かずにはいられなかった。

 「なあ。やっぱ勝負すんだから賭けしようぜ」

 アランはそう言う。

 「賭け?」

 「ああ、こうしよう。お前が俺に一発でも攻撃を当てれたらお前の勝ちでいいよ。俺は普通にお前が降参って言うまででいいぜ。その代わり、勝った方は負けた方の言うことを一つ聞くってのはどうだ?」

 ......こいつ絶対俺を舐めてやがる。

 「分かった。それでいい」

 ちなみに、ルールは、木刀を使用することになった。

 殺し合いをするわけじゃないから当然か。

 ただ、こいつは初めから本気で行く。

 俺は体内に火魔法を使い体に纏う。

 木刀には流石に辞めておいた。

 「おお。なんだそれは」

 金髪は余裕そうに笑顔で言う。

 泣いて謝らせてやる。

 俺は全速力で走り、速攻を仕掛けた。

 アランは簡単に止める。

 「中々いい攻撃じゃねえか。今度はこっちから行くぜ」

 アランはそう言い、剣を振る。

 これまでの相手と違う。

 剣の鋭さ速さ全てが段違いだ。

 俺が火魔法を纏っていなかったらあっさりやられていただろう。

 それからも攻撃は続く。

 俺は耐えきれなくなり一度退いた。

 こいつ見た目はチャラそうに見えて弱いように見えるが半端なく強い。

 流石剣聖の息子なのか。どうするか。はっきり言ってこれで自分が弱いと言っていた。

 ならこのアランより強い剣聖はどんだけなんだよ。

 正直一発当てれば俺の勝ちなんだ。

 今回はそういう戦いをしよう。

 俺は先程と同じように攻めるように見せかける。

 アランは先程までのチャラい雰囲気はなく、真剣だ。

 俺は真正面から挑む。

 そう見せかけ足に風魔法を纏い方向転換する。

 風魔法は、脚に放つ事で下に風が吹き、スピードが爆発的に上がる。

 そして、アランの背後をとり、素早く木刀を振った。

 普通ならここで俺の勝ちの筈だ。

 そう思ったがアランは後ろを振り向かず、剣を背後にやり、受け止めた。

 俺はもう一度退く。

 ......何で当たらなかったんだ。

 完璧に背後をとったはずなのに。

 「何でって顔をしてるな。しょうがない。面白い物も見せて貰ったから教えてやるよ。俺達剣聖の一族は精霊の加護があるんだ」

 「精霊の加護?」

 「ああ。その精霊の加護は、『未来予知』だ。俺達剣聖の一族には一手先の動きが分かる」

 ふざけているわけじゃなさそうだな。

 未来予知が本当に使えるのならこの勝負は初見の技は使えない。

 「そんなの勝てる奴いるのか?」

 「ああ、いるさ。邪神の奴は剣聖に勝つ事出来るだろうしな。まあ勝つには俺に防ぎきれないぐらいの攻撃をしなきゃならないがな」

 こいつ簡単に言いやがる。

 「行くぞ」

 俺は一言言いまた剣聖に向かう。

 剣を振るうが全て受け止められてしまう。

 まだこれじゃ駄目だ。

 もっと速く、鋭く、俺は段々スピードが上がっていくのが分かる。

 けどこれでもまだだ。

 俺は剣だけでなく火の中級魔法など、魔法を加え攻撃する。

 しかし、それでも当たらない。

 それからも攻撃は続く。何分も戦ったが俺は剣聖に傷一つ付けられない。逆に俺はアランが防御したとおもえば反撃してきて多分体中痣だらけだ。

 俺は一度退いた。

 俺の体力もそろそろ限界だ。

 次で決めるしかない。

 アランにもそれが分かるのか構えなおした。

 「お前はその歳でその強さは半端じゃない。だけどまだ俺には勝てないな。楽しめたがこれでラストだ」

 緊張の一瞬だ。

 俺達は同時に動き出した。

 「うおおおおおおお!」

 「はあああああああ!」

 俺は無意識に自分の体が何倍にも動いた。

 剣が重なりあい、静かな時が流れる。

 倒れたのは俺だった。

 木刀は折られてしまった。

 「......お前今何をした?」

 アランは何が起きたのか分からないように聞いてくる。

 「俺にも分からない。体が勝手に動いた」

 「はっはっはっはっは!」

 アランは何故か笑い出した。

 「俺の負けだ」

 アランはそう言い、自分の頬を見せた。

 そこには何故か木刀でなのに斬り傷があった。あるとしたらそれはマグレだろうな。

 「......勝ったのか」

 何故か勝った気はしない。

 今回もし一発勝負でなければ俺の完全敗北だ。

 今まで負けたことは何回もあるが今回は一番悔しい。

 「お前名前何て言うんだ?」

 「レイロード」

 「そうか、レイか。あん時はエルフの人を使って悪かったな」

 アランは謝ってくれた。

 こいつもただ、純粋に戦いたかった、もしくは強くなりたいのかもしれない。

 「もう気にしてないからいいよ」

 「そうか。また勝負しようぜ」

 俺達はそう言い、互いに握手した。

 「賭けの事はまた今度決まったら教えてくれ。後いつでも俺の家にこい。そん時剣術教えてやるよ」

 アランはそう言い立ち去った。

 するとそれと入れ替わりに仲間がやって来た。

 「大丈夫か?」

 セシリアさんはそう言い、回復魔法をかけてくれる。

 「大丈夫です。ありがとうございます」

 「今度は私があいつをぼこぼこにするわ」

 リリアはそう言う。

 少しふざけているような感じがするがそれは俺が悲しまないようにしてくれているのかもしれない。

 だが、これは俺の妄想かもしれないしな。

 「俺の仇を討ってくれ」

 俺が冗談半分で言うと、リリアはそれに笑顔で頷いた。

 .......何だかほんとに襲い掛かりそうで怖いな。

 「ご主人様は今ある力を全て出し切っていたと思うニャー。それで剣聖の息子に攻撃を与えたんだから次はもっといい勝負が出来る筈ニャー」

 タマも俺を励ましてくれる。

 「ありがとな」

 こんなにもいい仲間に巡り合えて俺は本当に幸せ者だ。

 もっと強くなりたい。

 俺は皆を守れる力が欲しい。

 改めてそう感じた。

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