チート・ご都合主義いらないけどハーレムいります

平涼

第二十九話 セシリアの吐露

 俺はあれから何時間眠ったのだろう。

 意識が戻り起きると、皆は焚火をしながら野宿をしていた。

 セシリアさんがいないが多分見張りに行ったんだろう。

 俺は立ち上がり、周りを見ると、セシリアさんが座って周りを見ていた。

 「セシリアさん」

 俺の声にセシリアさんは振り返った。

 「ああ、レイか。もう起きて大丈夫か?」

 「はい。大丈夫です。なので見張りを変わろうかと」

 「いや、今日のお前はよく戦った。だからしっかり休んでくれ」

 そう言ってくれる。

 けど、女性一人を見張りにして男が寝るなんてなんかいけない気がする。

 「じゃあ一緒にやりましょう」

 俺は断られる前にセシリアさんの横に座った。

 何故か無言の時間が始まり気まずいので何か話題はないかと俺が必死に考えていると、

 「お前は強いな」

 セシリアさんは独り言のように呟いた。

 「.....え?」

 俺は何を言われているか分からなかった。

 「今回の戦いは私は何も出来なかった」

 セシリアさんは悲しそうな顔をして言う。

 「何言ってるんですか。セシリアさんは毎回僕達の役に立ちすぎて俺はどう恩返しすれば分からないほどですよ」

 セシリアさんはその言葉に自嘲気味に笑った。

 「何を言ってるんだ。私は全然役に立ってない。私はお前に力を貸してほしいとパーティに入ったのに何も出来ていないじゃないか」

 この人は何を言っているんだろうか。

 「あの。セシリアさんは本当に役に立ってますよ?」

 「嘘をつくな!」

 セシリアさんは声を荒げ言った。

 「いや、すまない。今のは私が悪かった。忘れてくれ」

 セシリアさんはすぐに謝ってきた。

 もしかしたらずっとセシリアさんは気にしているのか?

 自分がこのパーティに入らないんじゃないかと。

 「セシリアさん。あなたを最初パーティに誘ったのは確かに力を貸してほしいからでした。けど、セシリアさんがいなかったら俺達はどこかで死んでいたと思います」

 「そんなのは嘘だ。お前は実際タキシムとの戦闘で勝つぐらいだ」

 セシリアさんは今回は声を荒げてはいないが悲しそうに言う。

 「いえ。セシリアさんが俺の役割の半分を補ってくれなかったら多分俺精神的にきつくて無理だったと思います。セシリアさんは戦闘だけでなく家事にももの凄い役に立ってくれました。俺一人で全てやる事は不可能だったと思います」

 「お前なら少し経てば全て完璧にこなせたと思う」

 ......この人は俺を超人か化け物と勘違いしてるんじゃないか。

 「.....あのですね。人には一度に何でも出来るわけじゃないんですよ。セシリアさんは料理、宿について、馬車など、色んな事を知っていてくれたから俺達はここまでやってこれたんですよ」

 俺は正直に言って旅を甘く見ていた。全部自分で出来ると俺も最初は思っていた。だけどそれは全く不可能だ。

 もしセシリアさんがいなかったら俺達はこんなゆっくりと旅は出来ていない。

 セシリアさんは自分が無力のように感じているのかもしれないが、それは俺の方だ。

 正直、日本の高校生時代から俺は大人のすることは俺でも出来ると思っていた。だけどそれは全然違う。馬車の売買もそうだが、食事もそうだ。動物を狩ったりする事は俺には出来ない。それをやり遂げて、それに加えてセシリアさんだって捌くのは嫌な筈なのにやってくれる。

 俺達にとって掛け替えのない存在なのだ。

 俺はセシリアさんがまだ何か言う前に言う。

 「今思えばセシリアさんがいなかったらと思うとゾッとします。それに今回の盗賊との戦いも、セシリアさんは何も出来てないって言ってますけど、セシリアさんがいなかったら俺とリリアは村長の仇を討てなかったはずですから」

 セシリアさんは今までの自分の事を振り返っているのだろうか。

 先程からセシリアさんはずっと塞ぎこんでいる。

 これでも自分の凄さが分からないんだろうか。

 「それに、俺はセシリアさんに出会えたから、仲間の在り方について学びました。俺達の中でセシリアさんが役に立って無いなんて言う奴は絶対にいません。それに、俺今の皆と過ごしている生活が大好きですから、セシリアさんがそんな理由で抜けたいって言うなら俺は絶対に抜けさせませんから」

 俺はセシリアさんが本気で悩んでいると思ったから本当の事を話した。

 これは結構恥ずかしい事を言っている気もするが俺の黒歴史の一ページで終わるだろう。

 セシリアさんは顔を上げ、

 「私はお前達の役に立っているだろうか?」

 何故か泣きそうな顔で確認してくる。

 「何度も言いますが役に立ってます。セシリアさんが役に立ってなかったら、タマなんて俺達と話しているだけで何もしてませんから」

 まあ、タマはペットだからそういうものじゃないんだが、この際いいだろう。

 「.....そうか。私はちゃんと役に立っていたんだな」

 そう言い、泣き出してしまう。

 そこまで追い詰められていたのか。

 俺は自分が気付いてやれないで情けない。このパーティの一応リーダーをしているのに。

 だがこの状況をどうしたらいいだろうか。

 俺の横で泣くエルフの女性。

 傍からみたら俺が悪人にしか見えない。

 「.......あの俺に出来る事ありますか?」

 俺は耐えきれず、そんな事を言った。

 「...体を...貸してくれ」

 俺は言われた通り体を貸した。

 するとセシリアさんは俺の服で音を小さくし泣き続けた。

 なので、俺は人生二度目の頭撫でをするのだった。

 それからセシリアさんは泣き止み、

 「すまないな。いい歳とった私が子供の中で泣くなんて」

 「いえ。俺も一度やってもらいましたからお互い様です」

 俺達は笑い合い何故か少し恥ずかしくなってきたのかセシリアさんは立ち上がった。

 「すまないが、レイに今日の見張りをお願いする」

 そう言い、立ち去ろうとする。

 別に見張りをするのは全然構わないが俺はやはり気になった。

 「やっぱり、セシリアさんって何歳なんですか?」

 俺の問いにセシリアさんの動きが固まった。

 ......やばい。聞いたらいけないと前覚えたばかりだったのに!つい気になってしまった!

 すると、俺の目の前に炎が舞い上がった。

 「次年齢の話をしたら、これはお前に当てるからな」

 セシリアさんは笑顔で言った。

 俺は頷く事しか出来なかった。

 女性の笑顔がこんなにも怖い事を俺は初めて知った。

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