Smile again ~また逢えるなら、その笑顔をもう一度~

たいちょー

Memory.2

20×1年 4月 小学6年生に

「同じクラス!やったね!」
「おう、よろしくな」
待ちに待ったクラス発表。裕人は、中田と同じクラスになった。喜びを噛みしめながら、二人は教室へと向かった。
「それにしても、同じクラスになったのって二年生の時以来だっけ?」
裕人が言った。
「あれ?そんな前だったっけ?いつも一緒にいるから、全然気にしてなかったなぁ」
「まぁ、わざわざ呼びに行く必要はなくなったわけだね」
「そうだな」
三階へと上がって一番端の教室が、裕人達の教室だ。中に入ると、裕人達よりも先に来ていた人たちが、疎らになって話をしていた。
「あ!来た!」
ふと、黒板のほうから、聞き慣れない高い声がした。
「真田君、中田君!一緒だね!」
嬉しそうにこちらに向かってきたのは、あの西村だった。彼女の後ろには、心奈と呼ばれる子も前と同様にピッタリとくっついていた。
「あ、西村さんも一緒?そっかぁ、よろしくね」
「うん!よろしく!」
西村が無邪気な笑顔で答えた。
「それで、えっと・・・心奈さん、だっけ?名前しか聞いてなかったから・・・」
裕人は、後ろの彼女の名を呼んだ。ビクッと肩を震わせて、西村の背中にピッタリくっ付く。
西村と同じくらいの背丈で、ショートカットで猫目顔をしていた。前はあんまり顔を見れていなかったので、改めて可愛い女の子だなぁと裕人は思った。
「あぁ、えっと・・・心奈は恥ずかしがり屋なんだ。ごめんね」
「あはは、大丈夫だよ。よろしくね」
裕人が心奈に言うと、彼女は小さくコクリと頷いた。
「あ、玲奈!おはよう!」
ドアから教室に入ってきたのは、南口だった。すかさず西村が声をかける。
背中まで伸びた長い黒髪が印象的で、パッチリとした二重の目をしていてスタイルもいい。そんな彼女には、「可愛い」より「美しい」という表現のほうが適切だった。
「もしかして、玲奈も同じクラス?」
「うん、そうみたい。よろしくね」
こちらに来た南口が、ニッコリと笑った。
ふと、さっきまで横にいた中田がいないことに気がつく。室内を見渡すと、他の男の子たちと中田は喋っていた。もしかしたら、南口を避けているのかもしれない。
「えっと、あんまり話したことはなかったよね?俺は真田裕人。よろしく」
「うん、よろしくー。中田君から、話は聞いてるよ」
南口は、見た目に似合わずおっとりした口調で言った。
「あいつ、なんか変なこと言ってなかった?」
「んー?ああ、言ってたよー。例えば、一年生の時までおねしょしてた、とか」
「え、ちょ、ばっ!」
彼女のその言葉に、裕人は思わず赤面する。隣にいた西村は、吹き出して笑った。その後ろの心奈も、流石にクスクスと笑っていた。
一方の南口は、なおも平然として続けて話し続ける。
「後は、幼稚園の時に、六回も漏らしたことがあるとか・・・後は・・・」
「だーっ!もういい、もういいから!」
まだあるのかよ!心中ツッコミながら、裕人は南口を止めた。初対面の女の子の前で、黒歴史を暴露されるとは、この上ない罰ゲームだ。
「あれ、そう?」
ここまで話しても、南口は平然としている。どうやら、この子はどこか抜けているようだ。美しい見た目とは大違いだ。
―最悪だ。後で和樹君、絶対にぶっ飛ばす・・・。
裕人はそんな六年生のスタートを切ったのだった。

一週間が過ぎた頃
裕人の席は、心奈の隣だった。
相変わらず彼女は、裕人に対しておどおどした態度であり、言葉を交わすことはほとんど無かった。
裕人は、どうにか仲良くなりたいと何度か言葉をかけたものの、彼女は必要最低限な返事しかせずに、すぐに黙ってしまう。これはまた、とてつもない厄介者である。
「ねぇ、西村さんとは仲いいの?」
授業終了のチャイムが鳴ったタイミングで、裕人は心奈に問うた。
「えっ?あ、えっと・・・まぁ、うん・・・」
ビックリした様子で、手に持っていた教科書を落としそうになりながら、心奈は答えた。
「ふぅん。幼馴染とか?」
「うん・・・幼稚園の時から、ずっと一緒」
めちゃくちゃ小さい声だった。聞き取るのに一苦労だ。
「そっかぁ、俺と和樹君と一緒だなぁ」
「・・・ひ、裕人達も、幼馴染なの?」
「ん、そうだよ。ずっと一緒。おかげでいい友達だよ」
「そっか・・・」
「おーい、心奈ー」後ろのほうで、西村が呼んだ。心奈は彼女の声にもビックリした様子で、またも体をビクッとさせた。
「あ、うん。ちょっと待って・・・あっ」
教科書を持ったまま立ち上がった心奈の手から、スルッと教科書が床に落ちた。
咄嗟にそれを取ってあげようと、裕人は姿勢を低くする。すると、
「あわわ・・・」
思わず彼女もそれを手に取ろうと頭を下げる。
ゴツン、と鈍い音をして、お互いに頭をぶつけた。
「いってぇ・・・だ、大丈夫?」
裕人は、泣きそうな顔をして頭をさすっている彼女に声をかけながら、先に手にした教科書を彼女に渡した。
「あ、う、うん。大丈夫だよ。ごめんね、ありがとう、裕人君」
不器用に微笑みながら、心奈はそれを受け取った。
それを机の中にしまうと、逃げるように西村のもとへと向かっていった。
―・・・あれ?裕人君?
ふと、彼女にそう呼ばれたような違和感を覚えた。いや、普段は中田から下の名前で呼ばれている。きっと聞き間違いだろう。
裕人は自分でそう結論付けると、友人たちのもとに向かった。

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