Smile again ~また逢えるなら、その笑顔をもう一度~

たいちょー

12.

一方

「落ち着いた?」
隣に座って、背中をさすってくれている心奈が話し掛ける。目の前には、いつの間にか電話を終えて戻ってきた美帆が座っていた。
「うん・・・」
「よかった。でも、無理しないでね?」
「ありがとう。ごめんね・・・。本題、入ろっか」
「もう、大丈夫なの?」
美帆が問うた。
「うん。平気」
「そう。じゃあ、改めて。えっと、さっきどこまで聞いたんだっけ」
「んーと。中田君が、女の子といたっていう話を聞いて。美帆が、数ヶ月前からの中田君との関係を改めて教えてって言ってた辺り、かな」
心奈が思い出すように話す。
「そっか。じゃあそこから、玲奈が話せる事、全部教えてよ。間違ってても、何でも構わないから」
「分かった・・・」
南口は、今自分が説明できる事を全て、順番に二人に説明した。
今、二人はどんな気持ちで話を聞いているのだろうか?「面倒くさい奴だ」とか、「そんな事で怒っているのか」とか、思われてはいないだろうか?普段では考えもしない思いが、頭の中を走り回る。
特に心配なのが、心奈だ。一体どんな心情で、自分の話を聞いてくれているのだろう。もしかしたら、こんな冴えない自分を心の中で、嘲笑っているのかもしれない。彼女はそんな事を決して、表に出さない事は分かっているのに。それなのに、そんな心配の泡は止めどなく、ブクブクと泡立つように次々と生まれてくる。気にすればするほど、その泡の量は増す一方だ。
「こんな感じ・・・かな?」
十分程。数ヶ月前からの彼との関係を、二人に分かる限り話した。果たして、彼女たちはどう答えてくれるのだろう。気になる一方で、等しいくらいに恐怖もあった。
「ふーむ」と唸りながら、美帆が人差し指を立てて話し始める。どうやら始まるみたいだ。美帆お得意の、あの話術が。
「そう。分かった。じゃあ、まずは話しやすいこの間のことから話していこうか。まず、この間。玲奈は和樹君が、女の子と二人きりでいたところを目撃した。これは間違ってないね?」
「うん」
「その時、和樹君が話していたこと、何でもいいから覚えてる?些細なことでも構わないから」
「話してたこと?うーん・・・」
あの日の場面を思い返す。やはり、どうにもあの出来事のショックで、その前後の事があまり思い出せない。あの夜。美帆の家を出て、駅に着いた辺りから、改めて頭の中で記憶を辿っていく。・・・確か、階段を下りている辺りで、何かを言っているのが聞こえたような。
『―――、まだ手術中なんだろ!?』
「あっ、手術・・・?」
「手術?」
心奈が問う。
「うん。そういえば、手術って言ってた気がする。聞き間違いかもしれないけど・・・」
「手術、か。他に、何か無かった?」
口元に手を寄せながら、更に美帆が問うた。
「後は、えっと・・・。あっ、『泣くなよ』って言ってた・・・っ?」
―待って。これって・・・。
手術。泣くな。この二つのワードを関連付ける。その瞬間、一つの可能性が、頭の中に浮かんだ。・・・浮かんでしまった。
体が一気に重くなったように動かなくなる。もしかしたら、自分はとんでもないことをしてしまったのではないだろうか?取り返しのつかないことをしてしまったのではなかろうか?
「・・・ねぇ、美帆。玲奈。それってもしかして。中田君はただ、女の子を慰めてただけなんじゃないのかな?」
そんな南口の考えを代弁するように、心奈が自分たちに問うた。
「うん、そうだね。っていうか、そうだと思う。和樹君に限って、浮気なんてしないと思うんだ」
美帆がハッキリと言い切った。言い切ってしまった。これではますます、どう答えればいいか分からなくなってしまった。
「で、でも!それだとさっきの私の話は、どうなるの?この数ヶ月間、色々なことがあったのに・・・!」
「あー、うん。それはそれ。でもこれはこれ。・・・分かるかな?」
「分からないよ!ちゃんと説明してよ!」
焦ってしまい、口調が思わず強くなる。そんな自分を見て、美帆が一息吐いた。
「分かった分かった。じゃあ、私の和樹君に対しての考えを話すよ。これは、完全に私の主観的な考えだから、当たってるとは限らない。いいね?」
彼女が自分と心奈をそれぞれ見る。異論がない事を確認すると、彼女は話を始めた。
「まず、今回の件について。今回は九割方、玲奈の早とちりで、勘違いだと思う。それに、さっきも言ったけど。和樹君に限って、浮気はないと思う。理由としては、和樹君には浮気をする勇気がないと思うから。そもそも和樹君は、凄く人思いで、人が嫌がる事をしたがらない、優しい性格だと思うんだ。そんな和樹君が、浮気をするだなんて、私は考えられないな。・・・でもこれって、一番玲奈が分かってるんじゃないの?」
「っ、それは・・・」
「今まで何年も一緒にいたんでしょ?本当は、自分でも分かってたんじゃない?和樹君が、自分を捨てる訳ないって。和樹君は、そういう人じゃないって、分かってるんじゃないの?」
「・・・・・」
何も、言い返せない。もちろん、それは分かっているつもりだ。ただ、「つもり」なのだ。根っから分かっているかと問われたら、とてもじゃないが頷くことはできない。
そもそも、自分の知っている彼が、本当に彼の全てなのだろうか?もしかしたら、浮気だってする癖があるかもしれないし、平気で何人もの女の子と一緒に付き合うような癖があるかもしれない。分からないのだ。どれが本当の彼なのか。見極めることも、信じ切ることもできない。
「・・・まだ、『代わり』なの?」
「っ・・・!?」
美帆がいつにも増して、冷たい目線でこちらを見る。こんな彼女の目は、今まで見たことが無い。
「そうやって、いつまでも『代わり』と思ってたら、どこまででも『代わり』になっちゃうよ?」
「ち、違う・・・!中田君は、もう『代わり』なんかじゃ・・・!中田君は、私の・・・」
「・・・?」
心奈が首を傾げる。
「・・・何でもない」
結局、その言葉を口にすることはできずに、しぼむように話すことを拒んでしまった。
「ねぇ。『代わり』って、何なの?」
心奈が問うた。・・・自分じゃなくて、美帆に。
「ああ。それはその・・・。玲奈が話していいんだったら、話すけど。でもそれを話し始めたら、聞いた事を一切他言無用にしてほしいことなんだ。絶対に、他人に話すことは許されない。もしこれがばれたら、玲奈はこの町にはいられなくなるからね」
「え・・・。何それ?そんな秘密、玲奈持ってるの?」
「うん。とってもシークレットな話だよ。・・・話すかは、玲奈に任せる」
美帆がこちらに会話のボールを投げた。そんなこと急に聞かれても、どうすればいいのか分からない。果たして、心奈に話して大丈夫なのだろうか?
彼女を信用していない訳じゃない。ただ、彼女は結構、おっちょこちょいなところがある。それに、意外と口も軽そうなイメージだ。そんな彼女に、こんな話をして大丈夫なのだろうか?
「・・・玲奈。少しは人を信じてみたら?私は心奈の事、信じてるよ?」
「え、美帆?何、急に!?」
突然の告白に、心奈が顔を赤くして焦っている。相変わらず、焦っている様子も可愛らしい。
「んー?いや。心奈はこう見えて、結構真面目だからね。信じてみてもいいんじゃない?」
「こう見えてって何よ。こう見えてって。私は至って真面目です!」
「・・・この間までずっと一匹狼気取ってたくせに?」
「あぁー!!それは言わない約束で・・・!」
目の前で、何やら二人がじゃれ合い始めた。自分だけ一人、会話に置いていかれてしまう。
―いいなぁ、二人は。そうやって、色々と言いにくい事も言い合えて。
二人を見るといつも思う。どうしてみんな、そう言いづらい事を易々と言い合えてしまうのだろうか?自分には、それが分からない。信じられないのだ。他人が。どれだけこの人が良い人だと分かっていても、心のどこかで疑ってしまう。それが、自分自身の嫌な所だ。
「玲奈!」
突然名前を叫ばれてビックリする。美帆が、こちらをまじまじと見つめていた。
「・・・何?」
「言わないなら、私が言っちゃうよ?どうせまた、『本当に言って大丈夫かなー?』って考えてるんでしょ?玲奈は考え過ぎなんだよ」
人差し指を立てながら、またまた美帆のお説教が始まった。毎度毎度、お馴染みだ。
「それにさ。もう少し、色々気にせずに、友達をバカにしたっていいんだよ?あ、ほら。玲奈ってバカって言葉、絶対使わないでしょ?それって、何で?」
「何でって・・・友達を傷つけちゃうから・・・」
「ほらそれ!それがダメなんだって!ホント玲奈ってバカ!」
「ばっ・・・!?」
思わずムッとする。それと同時に、何だか心の中がツーンと締め付けられるような、嫌な感覚が走った。
「ほら。悔しかったら言い返してみなよ。この弱虫玲奈!」
「むぅ・・・」
「昔はちょっと悪口言うだけで泣いちゃってたもんねぇ。もしかして、また泣いちゃうのかな?あの時って何歳だったっけ?確か、九歳とか十歳くらいの時だね。あの時は、何度も何度も玲奈の事を泣かせてたなぁ。あははっ。おーい、君今何歳だー?流石に泣きはしないよね?おぉー?ほれほれー。何も言い返せまぁい?だって、友達を傷つけるの嫌だもんね?ねぇ?ねぇ?」
机を酔っぱらいの叔父さんのように叩きながら、色々と恥ずかしい過去を暴露される。・・・これは、いかがなものだろうか。
「・・・美帆」
「んー?何さ」
次の瞬間。思い切り、机をバンッと両手で叩いてやった。同時に、美帆を睨みつけて怒りを放つ。
「あなた、ちょっとでも調子乗るといい気になるのぜんっぜん変わってないね!昔からそう!いつもいつも私にちょっかいだして、爺やに怒られる原因はいつも美帆だったじゃない!そんなだからいつまで経っても、自分から友達も作れない弱虫なのよ!」
「なっ・・・!?ちょ、れ、玲奈!それは違うのだよ!私は、より友好的な関係を結べる人物を、毎回探しているのだよ!戦略的行動と言ってほしいね!」
「何バカみたいな冗談ついてるのよ!戦略的行動って何よ。っていうか何その喋り方!?前から美帆ってそうだよね?ショックを隠してる時はいつも変な口調になってさ!本当は、今自分が一番気にしてること言われて、心の中ものっすごくショック受けてるの隠してるくせに!!」
溜めに溜め込んだ言葉を吐き出して、はぁ・・・っと一息吐く。気持ちいっぱいに、怒鳴り散らしてやった。何だか、思いのほか気分は悪くない。それどころか、何だかスッキリしている。
「おぉ・・・玲奈。やっぱり言う時は言えるじゃん・・・。っていうか、今の結構ショック・・・」
美帆が苦笑いを浮かべながら、ノックアウトされたように床に背中から横になった。彼女を見て、思わず我に返る。
「あ、ご、ごめ・・・!ごめんね美帆!ちょっと勢いに任せちゃって・・・!」
「あぁ、いいよいいよ。でも、玲奈もちゃんと怒れるって分かったから」
顔だけ起き上がって、美帆が手を振っている。怒ることには慣れていないために、何だか申し訳ない。
「で、でもビックリしたなぁ。玲奈が本気で怒るところ、初めて見たかも」
そんなやり取りを見ていた心奈は、後ろに手を置いて座っていた。一目見ると、どこかの可愛らしいお座り人形のようにも見える。
「それは・・・。美帆とは付き合いが長いからで・・・」
「そっかぁ。・・・あれ?じゃあ、中田君は?中田君も長いんじゃないの?」
「えっ?えっと・・・」
言われてみれば、確かにそうだ。彼は美帆に続いて、自分と接する時間が長い人物でもある。それなのに、どうしてそこまでの関係に止まってしまっているのだろう。やはり、自分の想いが足りないのだろうか?分からない。一体、自分に何が足りないのか。それが今、一番知りたい事だった。
「・・・まぁ、それはいいや。よいしょっと」
美帆が起き上がる。いつまでも言葉を告げない自分を見て、再び彼女が話を始めた。本当はもう少し考えたいのに、こうもなっては仕方がない。
「えっと、何だっけ。ああ、そうだ。玲奈のシークレットな話だっけ。結局どうなの?私的には、一人でも事情を知ってる人が多ければ、色々と楽になるんじゃないかなーって思うんだけど。どうかな」
改めて彼女が問う。これはもう、どうせいくら嫌と言っても言われ続けるだろう。遠回しに言えと言っているのだ。昔から、間接的に言葉攻めするのは彼女の癖だ。こうなってしまったら、もはや言ってしまったほうが話が早い。
「もう、分かったよ・・・。でも、心奈。ホントに誰にも話さないって約束できる?」
彼女に問う。すると彼女は、ニコッと笑顔を浮かべてみせた。
「もちろん!約束するよ!大丈夫、誰にも話したりしないから!」
自信満々に彼女が告げる。・・・何だかそれは、無理な難題を胸を張って告げる子供のように見えてきて、急に心配になってきた。
「・・・そういえば心奈。この間の牛丼の隠し味、あれって何だったっけ?」
ふと、突然美帆が全く関係の無い話をし始めた。意図が全く読めないが、それに心奈が乗っかる。
「どうしたの、突然?ほら、コチュジャン入れたじゃない。美帆が『これ入れたら美味しくなるんじゃない?』って言って、入れてみたら意外と美味しかったやつ・・・」
「はい、アウト」
「へ?・・・あっ」
美帆が心奈に向かって、パッと指を指す。どうやら、口の軽さをテストしたようだ。案の定、まんまと罠に引っかかっている。言われてから彼女も気がついたようだが、もう遅い。
「まぁ、流石心奈って言ったところかなぁ。・・・うん、そうだ。裕人君にも、後で説明しておこうか?裕人君なら口堅いと思うし、心奈のストッパーにもなるだろうしね。それでいい?玲奈」
美帆が提案する。まぁ、一人だろうと二人だろうと、さほど変わりはしないだろう。それに、彼ならある程度信頼できる存在だ。あまり気は乗らないが、それで呑み込んでおこう。
「まぁ・・・うん。それでもいいよ。仕方ないね」
「うぅ、ごめん・・・」
面目無い、という様子で心奈が俯いている。こんな時に思う事じゃないのだろうが、落ち込んでいる彼女の姿も、やっぱりちょっと可愛らしい。
「じゃあ話すんだけど・・・。心奈。俳優のみなみ成奈せいなって、知ってる?」
「え?そりゃあ知ってるよ?っていうか、凄く有名な人だよね?それに先週、映画の撮影から帰国したって言って、ちょっとしたニュースにもなってたよね」
南成奈。数々の海外ドラマ、映画に出演し、その名は世界的に知られている。彼女の凄さは、どんな役でもすぐに溶け込み、その人物になることができるところだ。喜怒哀楽、全ての感情を自然に表現することができ、本当に映画の一場面とは思わせないような、そんな演技が評価されているらしい。
「うん。そうだよ」
「その人が、どうかしたの?」
「・・・その人ね。私のお母さんなの」
「・・・・・・・・・・へ?」
心奈の甲高い声がポツリと部屋に響く。驚いた、という言葉では言い表せないほど、彼女は困惑していた。
「で、ついでに言うと。その夫の雨宮あまみやすぐるって男性俳優いるでしょ?あれ、私のお父さん」
「え、えええええ!?」
当然の反応だ。世界的な超有名俳優の娘が、今まさに目の前にいるのだから。当時彼に話した時も、同じような反応をされたことを覚えている。
「じゃ、じゃあ!ずっと前に美帆が言ってたハリウッド俳優の親戚って・・・」
「そうだよ。玲奈のご両親。私は玲奈のお母さんに誘われて、モデルをすることになったの」
「は、はぁ・・・。何だか、急に二人がとんでもなく遠い場所にいる気がしてきた・・・」
頭を抱えて、心奈があたふたとしながら、自分と美帆を交互に見ている。
「でもじゃあ、玲奈はモデルとか俳優にはならないの?玲奈だって、映画とかに出たらいい画になると思うのに」
「それは・・・」
「じゃあ、私が説明するよ」
口籠る南口を見て、美帆が自ら説明を名乗り出た。なんとなく、自分では言いづらい話の為、ここは助け舟に乗っておこう。
「玲奈はね。ご両親に『普通の女の子として生活しなさい』って言われてるの。普通に学校に通って、普通にお友達を作って、恋愛して。普通の女の子と変わらない、そんな生活をしなさいって。きっと、玲奈に大変な思いをさせたくないんだろうね。玲奈が女優として世の中に出たら、きっとご両親と比べられちゃうでしょ?演技が上手だったらまだしも、万が一売れなかった場合、世界中からガッカリされちゃうと思うんだ。ご両親の名前に泥を塗ることにもなるし、そんなの、想像するだけで耐えられないよ」
「確かに・・・」
「だから、こうして私達と何ら変わらない生活をしてるんだ。あ、私はちょっとだけ特殊だけどね」
美帆が悪戯っ子のように微笑む。・・・やはり、両親の話をされると、何となく気分が上がらない。
「そっかぁ。凄いなぁ、二人とも。美帆は宝木グループの娘さんで、玲奈はハリウッド俳優の娘さんかぁ。それに対して、私はちっぽけで貧乏な小娘だよ・・・」
机に人差し指を添えながら、クルクルと指を回している。何だか、どこかのアニメにでも出てきそうだ。
「んー、でも。こういう家系も結構面倒なんだよ?親戚やお知り合いは多いし、年末年始やお盆とかには、必ず挨拶しないといけないし。よく結婚式とかにも呼ばれるしね。それも、私達が知らない人の。ホント、毎回窮屈で仕方がないよ」
「そうだね。それに加えて、私の家は海外の知り合いも、お父さんとお母さんに多いから。よく英語で書かれた荷物が沢山届いたりするんだよね。そのせいで、荷物の整理も大変だし」
「うわぁ・・・何だかそう聞くと、どっちがいいのか分からないね・・・」
「あははっ、そうだね。結局のところ、どの家系にもそれぞれの良さがあって、面倒なこともあるんだよ。心奈だって、あるでしょ?そういうの」
美帆が彼女に問う。
「え?私の家は・・・そう、だね。まぁ・・・あはは・・・そうかもね。そ、それよりさ!話は戻すんだけど、もしかして、中田君もその事、知ってるの?」
何やら、何かを誤魔化すように彼女は話題を切り替えてしまった。何か、聞かれたくない事でもあったのだろうか?
「そうだよ。中田君も知ってる。その上で、私と付き合うって話だったの」
「だった?」
「・・・ごめんね。少し話が脱線するんだけど。やっぱりここまで話したら、話すべきだと思うんだ。私と中田君が、どうして付き合う事になったのか」
「玲奈。いいの?」
美帆が問う。ここまで聞かれてしまったら、もはやとことん知ってもらいたい。今更話を止めたところで、もう手遅れなのだから。
「いいよ。ここまで話したんだから、最後まで話さないと後味悪いでしょ?それに・・・私も心奈のこと、信じようと思うから」
「玲奈・・・」
彼女に向かって微笑む。一つ息を吸ってから、南口は中田との昔話を話し始めた。
「そうだね。まずは、私が小学五年生の時。中田君と同じクラスになった時くらいかな・・・」

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