異世界宿屋の住み込み従業員
193話 「串揚げもいいよね」
およそ10人、これが何を意味するかと言うとダンジョン一階層のボス部屋が見つかったにも関わらず釣りに参加することに決めた人数である。
まあ正確に言えば全員行こうとしたが事前の約束などもあり行けなかった人を除いた数になるが。
「まあ、何にせよ全員で行くことにならなくてよかったよ。全員だと移動手段が足りない」
「あ、そうだったんだ」
前日街の道具屋を駆け巡り釣り道具を揃えた八木であるが汽水湖まで行く為の移動手段が不足していたのだ。
動物に引かせるタイプの大型ソリと風で動かすタイプのソリを借りれる算段は付けたが全員で行くには足らなかったのである。
「釣り道具は確保したんだけど……ワカサギ釣りにしてはでかすぎだけどさ……それは置いといて、冬にしか使わないし滅多に使わないしでそんなに数があるわけじゃないんだってさ」
「ふーん」
八木の話に相槌を打ちながらも手を止める事なく動かし続ける加賀。一口大に切られた様々な具材を手早く串に刺していき、大きめの皿に並べていく。どうせ揚げ物するのだからと坊主だったときに備えて串揚げを用意しているのだ。保存食は冬場だし別にいいやと途中で作るのをやめ、作ってしまった分は既に皆のお腹の中だ。
「加賀っちー、荷物積み込み終わったよー」
「ありがとー。もう少しで仕込み終わるからちょっと待っててくださーい」
一緒に釣りに行く予定の探索者は既に準備万端のようである。まるで遠足に行く子どもの様に前日から荷物を用意していたらしい。
加賀が宿の従業員と共に荷物を持って外に向かうとそこには今日釣りに行く予定の探索者達が全員揃って待っている状態であった。
そのやる気満々な様子にちょっと引きつつもお待たせと言って荷物を積み込み、ソリに乗り込む。
「おっしゃ、いっくぞー」
ソリの先頭に乗ったヒューゴが手綱を軽く引くとアンジェがゆっくりと歩を進み始める
当初は汽水湖に向かう道は雪が深い所も有りアンジェではなく体重の軽いデーモンにソリを曳かせる予定であった。だがデーモンが無言で涙を流していたのとアンジェが雪が多少深くとも問題にはならないと言ったためデーモンは難を逃れ、こっそりと上空で待機していたりする。
「それじゃアイネさんそっちのソリを頼んます」
「任せて」
街の外に出たところで牽引していた風で動くタイプのソリを切り離す。そちらにアイネが乗り込み風を起こすことで前に進むのである。
「はやいはやーい」
街を出て十分ほど、一同が乗ったソリは街道を順調に進んでいた。アイネが乗り込んだソリは雪上を文字通り滑るように進んでいく、乗り心地も悪くなく、流れる景色を楽しむ余裕すらある。
「何も見えねえぇええっ」
だがアンジェが曳く方はと言うとその巨体が雪をかき分け爆走する為雪煙がとんでもない事になっていた。
アンジェが通った後は数百mに渡り雪が煙のように舞い上がっている。当然アンジェの真後ろにいる彼らがただで済む訳もなく、全員雪まみれで真っ白になっている。
「ちょっとスピードゆるめようぜっ! なぁ!?」
スピードを緩めるようにアンジェに向かい叫ぶが、久しぶりに思う存分外で走る事が出来た彼女の耳には届いていないようだ。
結局汽水湖に着くまでの間ずっと雪煙に晒されることになるのであった。
「ついたついた……おし、それじゃ皆さっそく……え、何この雪像」
「……雪像じゃねえよ」
憮然とした表情で体中に凍り付いた雪を叩き落としソリから降りる探索者達。
一方のアンジェは久しぶりに走って満足したのか非常に上機嫌である。
体中から湯気を立ち上らせごろりと地面に寝そべり休憩しだす。
「アンジェもありがとー。ボクらはこれから釣りだけどアンジェはどうする?」
「私は少し休んだらまた辺りを少し走ってくるよ、ご飯になったら声かけてねぇ」
「あいさー」
ソリを人力でひっぱりリザートマン達の集落の側まで向かうとそこには何時ものリザートマン達が一行が来るのを待っている姿があった。
「お待たせー……あれ、ドラゴンさんは?」
「それが……」
実は事前にリザートマン達に釣れそうな場所まで案内をお願いしていた加賀。ついでなのでドラゴンも釣りに誘おうとリザートマン達に伝言を頼んでいたのだが、伝言を伝えたもののその後姿を表さないそうなのだ。餌にされるのでは?と勘違いしたのかも知れない。もちろん串揚げ美味しそうぐらいは思っても餌にするつもりなど加賀達には毛頭無いのだが。
「だって」
ドラゴンが姿を表さない事を皆にも伝える加賀。
「へー……でも気配あるね」
「あ、そなんだ」
だがどうやら近くには居るらしい、水面をじっと見つめていたアイネには気配が感じられたようだ。
「うーちゃん?」
どうしたものか、このまま置いていくかと皆で話し始めているとふいにうーちゃんが水面にとことこ近づいていく。
どうかしたのだろうかと様子伺う加賀の前でうーちゃんは地面を片足でトンと踏みつける。
うー「そおい」
その瞬間湖面が爆発するかのごとく水柱があがる。
そして何かの悲鳴が聞こえたかと思うと地面に巨大な物体が落ちてくる。
そこには地面に打ち上げられた魚のようにビチビチと跳ね回るドラゴンの姿があった。
まあ正確に言えば全員行こうとしたが事前の約束などもあり行けなかった人を除いた数になるが。
「まあ、何にせよ全員で行くことにならなくてよかったよ。全員だと移動手段が足りない」
「あ、そうだったんだ」
前日街の道具屋を駆け巡り釣り道具を揃えた八木であるが汽水湖まで行く為の移動手段が不足していたのだ。
動物に引かせるタイプの大型ソリと風で動かすタイプのソリを借りれる算段は付けたが全員で行くには足らなかったのである。
「釣り道具は確保したんだけど……ワカサギ釣りにしてはでかすぎだけどさ……それは置いといて、冬にしか使わないし滅多に使わないしでそんなに数があるわけじゃないんだってさ」
「ふーん」
八木の話に相槌を打ちながらも手を止める事なく動かし続ける加賀。一口大に切られた様々な具材を手早く串に刺していき、大きめの皿に並べていく。どうせ揚げ物するのだからと坊主だったときに備えて串揚げを用意しているのだ。保存食は冬場だし別にいいやと途中で作るのをやめ、作ってしまった分は既に皆のお腹の中だ。
「加賀っちー、荷物積み込み終わったよー」
「ありがとー。もう少しで仕込み終わるからちょっと待っててくださーい」
一緒に釣りに行く予定の探索者は既に準備万端のようである。まるで遠足に行く子どもの様に前日から荷物を用意していたらしい。
加賀が宿の従業員と共に荷物を持って外に向かうとそこには今日釣りに行く予定の探索者達が全員揃って待っている状態であった。
そのやる気満々な様子にちょっと引きつつもお待たせと言って荷物を積み込み、ソリに乗り込む。
「おっしゃ、いっくぞー」
ソリの先頭に乗ったヒューゴが手綱を軽く引くとアンジェがゆっくりと歩を進み始める
当初は汽水湖に向かう道は雪が深い所も有りアンジェではなく体重の軽いデーモンにソリを曳かせる予定であった。だがデーモンが無言で涙を流していたのとアンジェが雪が多少深くとも問題にはならないと言ったためデーモンは難を逃れ、こっそりと上空で待機していたりする。
「それじゃアイネさんそっちのソリを頼んます」
「任せて」
街の外に出たところで牽引していた風で動くタイプのソリを切り離す。そちらにアイネが乗り込み風を起こすことで前に進むのである。
「はやいはやーい」
街を出て十分ほど、一同が乗ったソリは街道を順調に進んでいた。アイネが乗り込んだソリは雪上を文字通り滑るように進んでいく、乗り心地も悪くなく、流れる景色を楽しむ余裕すらある。
「何も見えねえぇええっ」
だがアンジェが曳く方はと言うとその巨体が雪をかき分け爆走する為雪煙がとんでもない事になっていた。
アンジェが通った後は数百mに渡り雪が煙のように舞い上がっている。当然アンジェの真後ろにいる彼らがただで済む訳もなく、全員雪まみれで真っ白になっている。
「ちょっとスピードゆるめようぜっ! なぁ!?」
スピードを緩めるようにアンジェに向かい叫ぶが、久しぶりに思う存分外で走る事が出来た彼女の耳には届いていないようだ。
結局汽水湖に着くまでの間ずっと雪煙に晒されることになるのであった。
「ついたついた……おし、それじゃ皆さっそく……え、何この雪像」
「……雪像じゃねえよ」
憮然とした表情で体中に凍り付いた雪を叩き落としソリから降りる探索者達。
一方のアンジェは久しぶりに走って満足したのか非常に上機嫌である。
体中から湯気を立ち上らせごろりと地面に寝そべり休憩しだす。
「アンジェもありがとー。ボクらはこれから釣りだけどアンジェはどうする?」
「私は少し休んだらまた辺りを少し走ってくるよ、ご飯になったら声かけてねぇ」
「あいさー」
ソリを人力でひっぱりリザートマン達の集落の側まで向かうとそこには何時ものリザートマン達が一行が来るのを待っている姿があった。
「お待たせー……あれ、ドラゴンさんは?」
「それが……」
実は事前にリザートマン達に釣れそうな場所まで案内をお願いしていた加賀。ついでなのでドラゴンも釣りに誘おうとリザートマン達に伝言を頼んでいたのだが、伝言を伝えたもののその後姿を表さないそうなのだ。餌にされるのでは?と勘違いしたのかも知れない。もちろん串揚げ美味しそうぐらいは思っても餌にするつもりなど加賀達には毛頭無いのだが。
「だって」
ドラゴンが姿を表さない事を皆にも伝える加賀。
「へー……でも気配あるね」
「あ、そなんだ」
だがどうやら近くには居るらしい、水面をじっと見つめていたアイネには気配が感じられたようだ。
「うーちゃん?」
どうしたものか、このまま置いていくかと皆で話し始めているとふいにうーちゃんが水面にとことこ近づいていく。
どうかしたのだろうかと様子伺う加賀の前でうーちゃんは地面を片足でトンと踏みつける。
うー「そおい」
その瞬間湖面が爆発するかのごとく水柱があがる。
そして何かの悲鳴が聞こえたかと思うと地面に巨大な物体が落ちてくる。
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