異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

171話 「原因が分かったようで」

翌朝、朝食の時間となり宿の食堂に探索者達が集まってくる、その中にはもちろんラヴィの姿もあるが背中を丸めてとぼとぼと歩くその姿は巨体なラヴィが小さく見えるほどに落ちこんで見える。

「はい、これ。とっておいたから他の人にとられないよーに」

椅子に腰掛け力無く項垂れるラヴィ、その目の前にコトッと深めの皿が置かれる。

「おぉ……かたじけない」

「口調まで変わっちゃって……」

皿に入った煮卵をもくもくと食べるを労し気に見つめる加賀。心なしかラヴィは昨日より痩せているようにすら見える、こんな状態でギルドに行って大丈夫なのだろうかと思うがずっと宿にこもってふさぎ込むよりは良いだろうと話を切り出す事にしたようだ。

「ラヴィ、今日この後何人かでギルド行こうと思うんだけど……一緒に行く? 卵について情報あるかもだよ」

「卵……行く」

「ん、わかった。片付けとか終わったら準備始めるから、ラヴィも支度出来たら声かけてね」

ラヴィが行くと答えとのにほっとした様子の加賀。ひとまず片づけをする為空いている食器を下げ始める。


「んー‥…やっぱ入荷してなかったね」

「そうね、混む前にギルド行きましょ」

宿を出てギルド行く前に念のためハンズの肉屋によった4人であるが、店の奥から出てきたハンズから得た答えは入荷していないであった。

「ほら、ラヴィ行くよ」

両手で顔を押さえめそめそと泣くラヴィの腕を引きギルドへと向かう加賀。
ただでさえ目立つ3人であるが、そこに巨大なめそめそと泣いているリザートマンが加わったのだ。加賀達を見てひそひそと話す人達の視線から逃げる様にギルド内へと駆け込む。

「やっとついた……とりあえず受付して順番来るのまとうかねー」

「……いや、ここ見ればわかるよ加賀ちゃん」

「う?」

ギルド内に入り入り口傍にいたギルド職員に話しかけようとした加賀であったが、それをラヴィが呼び止める。
加賀がラヴィの方をみるといつの間にか彼は掲示板の前へと立って、張り出された紙を眺めていた。

「えーとなになに……養鶏場が狼の群れに……うわぁ、そうだったのね」

「ラヴィ、受けるの?」

「……受けたいけど、これ俺みたいな上位ランクの奴が受けると、下位の奴の仕事奪っちまうから……」

張り出された紙に書かれていた内容は、養鶏場が狼の襲撃に合いショックで鶏が卵を産まなくなってしまった、狼はまだ養鶏場を狙っているようで近所で様子を伺う姿が目撃されている。早急に退治願いたい、というものであった。
ラヴィは内容をみて行きたそうな様子ではあるが、それは下位ランクのものの仕事を奪う事になってしまう為躊躇っているようであった。

「あ、食事付きらしいよ。養鶏場だし卵でるんじゃ――」

「やる」

だが、そんなためらいも卵の前ではどうでもよい事であったようだ。
食事付きと聞いた瞬間ラヴィは掲示板から紙をとり受付へと向かっていた。

「わー、さっきの躊躇いはどこいった」

尻尾をぶんぶん振って受付に向かうラヴィを見送る3人。
だがアイネだけは何か思う事があるのか首を傾げている。

「食事付きっていうけど……加賀が手を加えなければ食べれないんじゃ」

「あっ」

アイネの指摘にはっとなる加賀。
ラヴィは宿に来るまで卵を食べれないでいた、その原因はおそらくアレルギー。加賀が手を加える事によって加護が発動し始めて食べれるようになるのだ。
つまり、このままではラヴィは仕事を受けたとしても卵を食べる事は出来ない。

「ど、どうしよう止めたほういい?」

「ん、もう遅い。受付終わったみたい」

「あふっ」


止めようかとアイネに話しかける加賀であったが一足遅かったらしい。
受付の方を見ればラヴィがその巨体でスキップしながら3人の元に戻ってくる所であった。

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