異世界宿屋の住み込み従業員
139話 「あるぇ?」
とりあえずは普段のメニューでとのアイネに意見に特に反対する者もおらず、3人はいつも通り食事の準備を始めるのであった。
「ふぅ」
口元を拭い満足げ息を吐くエルザ。料理は全て食べ終わり残すはデザートのみとなっていた。
「お口に合いましたか?」
「ええ、とても。特にスープが素晴らしかったです……あれ、全て海の物ですよね? それに全部新鮮……もしかして今日の為に……」
わざわざ鮮度を保った状態で街まで運んだのだろうかと考えるエルザ。だとすれば相当な金が掛かっている事だろう。そう考えたエルザの顔が僅かに曇る、自分のためにそこまでしてくれたとしたら嬉しい事だが、申し訳ない気持ちの方が勝ったのだ。
「ああ、いやいや違いますよ」
エルザの考えを察したのか手をぱたぱたと振り否定する八木。
「街の北に汽水湖あるでしょ、そこからリザートマン達に運んでもらってるんすよ」
「リザートマン……なるほど。誰とでも会話できると言うのは素晴らしい事です。いずれ街全体に行き渡るようになるんでしょうか?」
街に行き渡るようになるかと問われ少し考える八木。
加賀達からはリザートマン達の街について話は聞いていた、30人程度であれば毎日全員が腹一杯になるほど魚介類を余裕をもって提供できる事も。
「全員が月に一度は食べられる程度には行けるんじゃないかと思います。そのうち屋台でも魚を出すようになると思いますんで、仕入れ先とか聞かれるでしょうし……すぐには無理でしょうけどいずれ広まるんでないかと」
「それは嬉しいですね。新鮮な海の魚なんて早々食べれるものじゃないですから」
どうやらエルザは海の魚が好みらしい、普段食べれない魚を満足いくまで食べる事が出来た彼女はとても上機嫌である。
「それじゃまた食べましょうか。気合いれて仕事終わらせないとだ」
「楽しみにしてますね……あら、デザートかしら?」
「そですよー」
食べ終え寛ぎ始めた二人の元へ加賀が甘い香り漂わせたものをお盆に乗せ運んでいく。
テーブルに置かれた皿の上、そこにはこげ茶色の焼き菓子に7分立てぐらいに仕上げられた生クリームがそえられていた。
「焼き菓子……すごく甘い匂いがしますね。……この匂いは?」
「あっつ! ……チョコのとろけ具合がたまらんな、これ!」
匂いで正体の分かっていた八木はすぐ様お菓子へとりかかる。
フォークで焼き菓子を割れば中からとれけた熱々のチョコがあふれ出す。
「それ、屋台で出そうと思ってるやつなんだけど。どう、いける?」
「いけるいける。あ、でも大きさはもっと小さくていいんでない?」
屋台の話題に話す二人を見て少し複雑な表情を浮かべるエルザ。
ひとまずは目の前にあるデザートを食べようとフォークを差し入れ口に運ぶ。
「! ……すっごい甘い……けど苦みと酸味もあって、バランスがすごく良い。それに香りがとんでもないね……すごく美味しい」
「おー、ありがとうございます。アイネさん気合いれて作ってたんできっと喜びます」
それじゃ、ごゆっくりと言って厨房へ引っ込む加賀。
「……二人は仲良いのですね」
「ん? 一応幼馴染ですしねえ」
「なるほど、そうでしたか」
そう呟いて最後の一口を食べ終えるエルザ。
口元を拭い、八木に軽く頭を下げる。
「八木様、今日はありがとうございました」
「いやいや! エルザさんには普段お世話になってますしこれぐらい!」
「お魚も美味しかったですし……デザートは甘くて良い香りで、それに少し苦くて酸っぱい。初めての体験でした」
料理を食べ終えたエルザは一度ギルドに戻ると言う事で八木がそこまで見送る事となる。
縄から抜け出したヒューゴにからかわれ、少し照れつつも八木は皆に手を振りギルドへと二人で向かったのである。
「で、そのあとは?」
「え、そのまま送って帰ってきたけど……てか、すぐ戻ったの知ってるじゃんかよ」
えぇーと呆れた表情を浮かべる加賀。
咲耶もどこか不満げな表情を浮かべ八木へ言葉をかける。
「次の約束とかしなかったの? 大分食事は楽しんでたんでしょう?」
「ええ、まあ……したんですけど、また時間が出来たらって事で何時と決まったわけでは……」
八木の言葉を聞いて二人そろってうーんと悩む加賀と咲耶。
「それってさ──」
「加賀、あまり動かないで」
八木のほうを向き何か話そうとした加賀であるが、アイネに顔を掴まれ無理やり向きを変えられてしまう。
「っと、ごめんなさい」
動かなくなった加賀を確認し再び手を動かし始めてるアイネ。その手元からはちょきちょきと鋏を動かす音が聞こえる。
その音から分かるように現在加賀は散髪中であった。
以前に髪を切ってから暫くたつ。時折目にかかる髪がいい加減鬱陶しくなってきたのである。
「前髪はこれぐらいかな……後ろはどうしようかな」
「お任せしますよんー」
「……そう?」
目にかからない程度に切られた前髪、残るは後ろであるがアイネは加賀のお任せするとの言葉を聞いてなぜか鋏を置いてしまう。
「あの、アイネさん……?」
「任せるんでしょ?」
一体何をするのかと不安を覚えた加賀であるが、一度任せるといった手前黙ってまつ事にしたようだ。
アイネは加賀の髪を束ねると手に持っていた髪留めでぱちりと止めてしまう。
「……」
「似合うよ?」
ものっすごく複雑そうな顔で鏡を見つめる加賀。
そこにはボブにポニテと言う大変可愛らしい髪形が映っていたのであった。
「ふぅ」
口元を拭い満足げ息を吐くエルザ。料理は全て食べ終わり残すはデザートのみとなっていた。
「お口に合いましたか?」
「ええ、とても。特にスープが素晴らしかったです……あれ、全て海の物ですよね? それに全部新鮮……もしかして今日の為に……」
わざわざ鮮度を保った状態で街まで運んだのだろうかと考えるエルザ。だとすれば相当な金が掛かっている事だろう。そう考えたエルザの顔が僅かに曇る、自分のためにそこまでしてくれたとしたら嬉しい事だが、申し訳ない気持ちの方が勝ったのだ。
「ああ、いやいや違いますよ」
エルザの考えを察したのか手をぱたぱたと振り否定する八木。
「街の北に汽水湖あるでしょ、そこからリザートマン達に運んでもらってるんすよ」
「リザートマン……なるほど。誰とでも会話できると言うのは素晴らしい事です。いずれ街全体に行き渡るようになるんでしょうか?」
街に行き渡るようになるかと問われ少し考える八木。
加賀達からはリザートマン達の街について話は聞いていた、30人程度であれば毎日全員が腹一杯になるほど魚介類を余裕をもって提供できる事も。
「全員が月に一度は食べられる程度には行けるんじゃないかと思います。そのうち屋台でも魚を出すようになると思いますんで、仕入れ先とか聞かれるでしょうし……すぐには無理でしょうけどいずれ広まるんでないかと」
「それは嬉しいですね。新鮮な海の魚なんて早々食べれるものじゃないですから」
どうやらエルザは海の魚が好みらしい、普段食べれない魚を満足いくまで食べる事が出来た彼女はとても上機嫌である。
「それじゃまた食べましょうか。気合いれて仕事終わらせないとだ」
「楽しみにしてますね……あら、デザートかしら?」
「そですよー」
食べ終え寛ぎ始めた二人の元へ加賀が甘い香り漂わせたものをお盆に乗せ運んでいく。
テーブルに置かれた皿の上、そこにはこげ茶色の焼き菓子に7分立てぐらいに仕上げられた生クリームがそえられていた。
「焼き菓子……すごく甘い匂いがしますね。……この匂いは?」
「あっつ! ……チョコのとろけ具合がたまらんな、これ!」
匂いで正体の分かっていた八木はすぐ様お菓子へとりかかる。
フォークで焼き菓子を割れば中からとれけた熱々のチョコがあふれ出す。
「それ、屋台で出そうと思ってるやつなんだけど。どう、いける?」
「いけるいける。あ、でも大きさはもっと小さくていいんでない?」
屋台の話題に話す二人を見て少し複雑な表情を浮かべるエルザ。
ひとまずは目の前にあるデザートを食べようとフォークを差し入れ口に運ぶ。
「! ……すっごい甘い……けど苦みと酸味もあって、バランスがすごく良い。それに香りがとんでもないね……すごく美味しい」
「おー、ありがとうございます。アイネさん気合いれて作ってたんできっと喜びます」
それじゃ、ごゆっくりと言って厨房へ引っ込む加賀。
「……二人は仲良いのですね」
「ん? 一応幼馴染ですしねえ」
「なるほど、そうでしたか」
そう呟いて最後の一口を食べ終えるエルザ。
口元を拭い、八木に軽く頭を下げる。
「八木様、今日はありがとうございました」
「いやいや! エルザさんには普段お世話になってますしこれぐらい!」
「お魚も美味しかったですし……デザートは甘くて良い香りで、それに少し苦くて酸っぱい。初めての体験でした」
料理を食べ終えたエルザは一度ギルドに戻ると言う事で八木がそこまで見送る事となる。
縄から抜け出したヒューゴにからかわれ、少し照れつつも八木は皆に手を振りギルドへと二人で向かったのである。
「で、そのあとは?」
「え、そのまま送って帰ってきたけど……てか、すぐ戻ったの知ってるじゃんかよ」
えぇーと呆れた表情を浮かべる加賀。
咲耶もどこか不満げな表情を浮かべ八木へ言葉をかける。
「次の約束とかしなかったの? 大分食事は楽しんでたんでしょう?」
「ええ、まあ……したんですけど、また時間が出来たらって事で何時と決まったわけでは……」
八木の言葉を聞いて二人そろってうーんと悩む加賀と咲耶。
「それってさ──」
「加賀、あまり動かないで」
八木のほうを向き何か話そうとした加賀であるが、アイネに顔を掴まれ無理やり向きを変えられてしまう。
「っと、ごめんなさい」
動かなくなった加賀を確認し再び手を動かし始めてるアイネ。その手元からはちょきちょきと鋏を動かす音が聞こえる。
その音から分かるように現在加賀は散髪中であった。
以前に髪を切ってから暫くたつ。時折目にかかる髪がいい加減鬱陶しくなってきたのである。
「前髪はこれぐらいかな……後ろはどうしようかな」
「お任せしますよんー」
「……そう?」
目にかからない程度に切られた前髪、残るは後ろであるがアイネは加賀のお任せするとの言葉を聞いてなぜか鋏を置いてしまう。
「あの、アイネさん……?」
「任せるんでしょ?」
一体何をするのかと不安を覚えた加賀であるが、一度任せるといった手前黙ってまつ事にしたようだ。
アイネは加賀の髪を束ねると手に持っていた髪留めでぱちりと止めてしまう。
「……」
「似合うよ?」
ものっすごく複雑そうな顔で鏡を見つめる加賀。
そこにはボブにポニテと言う大変可愛らしい髪形が映っていたのであった。
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