異世界宿屋の住み込み従業員
50話 「応援がくるらしい」
「と言った感じだ」
「よかったー…なんとかなりそうで」
「ありがとうございます。バクスさん」
あの後どうにか帰宅したバクス。まずはダンジョンについて何とかなりそうであると二人に伝える。
ひとまず大丈夫そうということに安堵する二人であったが、まだバクスが浮かないことに気が付き声をかける。
「バクスさん、表情がすぐれないですけど……なにかあったんで?」
「ん、ああ……従業員を集めるのがどうも難しそうでなあ、ある程度落ち着けば集まるとは思うが…当面は宿泊者数をしぼらんといかんかも知れん」
「あぁ……あ、そうだ加賀。さっきのやつ!」
「あ、そうだった。バクスさんバクスさん」
加賀の言葉に反応し顔をそちらに向けるバクス。
バクスが言葉に反応したのを見て、加賀は話を続ける。
「神様からのメッセージに追伸があったんですよー。なんでも大変そうだから応援をだすって、開店までには間に合うようにするって話ですけど……」
「それはつまり……神の落とし子が増えるってことか」
「たぶんそですね」
「そうか……」
喜ぶべきか否か、さまざまな感情が混ざり合い非常に複雑そうな顔をするバクス。
「バクスさん顔芸みたいに……あ、なんでもないっす」
「……まぁ、一人増えても別に変わらん……変わらんよな? とにかく、人が足りないのは確かだこの際神の落とし子だろうが何だろうが従業員として採用できるなら大歓迎だ」
自分に言い聞かせるように、歓迎の意を示すバクス。
八木と加賀の二人についても従業員が足りないのはわかっているので概ね歓迎といった感じであった。
「あれかね、わざわざ応援って書くんだからさ。やっぱ宿で働いてた人なんかね」
「んー、たぶんベッドメイクできる人かな? 接客はバクスさん……?で宿でだす料理はボクでしょ。部屋の片づけとかできる人がいないもん」
八木は宿じゃなくて建築家として働くんでしょ?と言う加賀にバクスをちらりと見てああ、と答える八木。
「基本そうなるな。あ、でも宿で入用になったときは優先的に仕事請け負うよ。代わりに従業員用の部屋に住んでいいって事になったし」
「あ、そうなんだ?」
そういってバクスを見やる加賀。バクスは少し考え事をしていたようだが、加賀の言葉に気づきああと頷く。
「たぶん、後々いろいろ追加で必要になるだろうからな……なあ、加賀ちょっと聞きたいんだが」
「う? なんでしょー」
「お前精霊魔法使えるよな? お湯ってだせるか?」
バクスの質問に顔に指をあて考える仕草を見せる加賀。
「んー、やったことないので分からないーです。ためしにお願いしてみましょうかー?」
「ん、それじゃちと風呂場にいってみるとするか」
加賀の提案を受け風呂場へと向かう一行。
そのまま入る気なのかしっかりとうーちゃんもついてくる。
「それじゃ、加賀たのむ」
「はーい、それじゃー精霊さん。この湯舟をお湯でいっぱいにしてください! あ、人が入るのにちょうど良い温度でっ」
そう加賀が言った直後、湯舟から1m程の高さに小さな水球がふわりと現れる。
そして皆が何か思う前に水球から溢れんばかりの大量のお湯が零れ落ちる。
まるで滝の落ちるような音を立て湯舟にお湯がたまっていく。
予想以上の水量に思わず後ずさる皆。
時間にして10秒ほどだろうか10名近くが入れる大きな湯舟、それがお湯で満杯になっていた。
うっ(一番のりぃ)
皆が驚き固まる中、満杯になった湯舟をみて桶片手に飛び込むうーちゃん。
制止する間もなく湯舟に飛び込むうーちゃんをみて苦笑する加賀。バクスのほうを見て口を開いた。
「なんか、思ったよりも水量すごかったですねー」
「ああ……加賀、お前魔力は大丈夫なのか? こんだけの量だすとかなり魔力を食うはずだが」
「ん……なんともないです。というか魔力使った感じがしない?」
バクスに言われ自分の手足を眺める加賀であるが、まるでなんともないようだ。
以前精霊魔法を使った際は、ごそりと何かを持っていかれる感覚がしたがそれすらないようだ。
「ふむ……? ……うむ、さっぱり分からん。もういろいろと頭がいっぱいだ、今度考える!」
バクスは考えることを放棄した。
いろいろありすぎてもう頭がいっぱいなのだろう。
「……ぉぉぉおお」
「バクスさんてば……ん?」
バクスの言葉に思わず涙しそうになる加賀であったが、ふと隣の八木から妙な唸り声のようなものがするのに気が付く。
「……何してん、八木」
「加賀に出来て俺にできないはずがない! うおぉぉおおお!! 精霊よ、俺に力を!!」
胡乱げな視線で八木を見る加賀。
視線の先では八木が右手のひらを空に向け、左手でその手首をがっしりと押さえ何やらぷるぷると震えていた。
何かの漫画でみたな、等と加賀が考えていると八木は手のひらを前に向け、いでよ水球!と叫ぶ。
「……あふぅっ」
ぱしゃりと音を立て手の平からコップをひっくり返した程度の水が出る。
そしてそれだけで魔力が尽きたのか、八木は妙に乙女チックなポーズでその場に崩れ落ちた。
「え……うそ?」
「……これはさすがに魔力すくなすぎだと思うぞ」
崩れ落ちた八木に加賀とは違った意味で驚くバクス。
加賀と八木の差は一体何なのだろうか……そう考えそうになるバクスであるが、これについても考える事を放棄する。
加賀の方を見てしかしあれだな、とつぶやく
「う?」
「こんだけお湯出して問題ないのなら、風呂の湯を張る人員については削れそうだ。一度出してしまえば温度を保つぐらいなら魔道具で十分」
うれしい誤算だなと笑うバクス。
「ま、ひとまず飯にするか」
「そですね。うーちゃんも適当なところであがるんだよー?」
うっ(うひょーい)
広い湯船で楽し気に泳ぐうーちゃん。マナー違反と言いたいとこだが使っているのはうーちゃんのみ。それに兎である。
あまりこちらの話を聞いてなさげなうーちゃんを見て、しょうがないなと思いつつバクス亭へと戻るのであった。
「よかったー…なんとかなりそうで」
「ありがとうございます。バクスさん」
あの後どうにか帰宅したバクス。まずはダンジョンについて何とかなりそうであると二人に伝える。
ひとまず大丈夫そうということに安堵する二人であったが、まだバクスが浮かないことに気が付き声をかける。
「バクスさん、表情がすぐれないですけど……なにかあったんで?」
「ん、ああ……従業員を集めるのがどうも難しそうでなあ、ある程度落ち着けば集まるとは思うが…当面は宿泊者数をしぼらんといかんかも知れん」
「あぁ……あ、そうだ加賀。さっきのやつ!」
「あ、そうだった。バクスさんバクスさん」
加賀の言葉に反応し顔をそちらに向けるバクス。
バクスが言葉に反応したのを見て、加賀は話を続ける。
「神様からのメッセージに追伸があったんですよー。なんでも大変そうだから応援をだすって、開店までには間に合うようにするって話ですけど……」
「それはつまり……神の落とし子が増えるってことか」
「たぶんそですね」
「そうか……」
喜ぶべきか否か、さまざまな感情が混ざり合い非常に複雑そうな顔をするバクス。
「バクスさん顔芸みたいに……あ、なんでもないっす」
「……まぁ、一人増えても別に変わらん……変わらんよな? とにかく、人が足りないのは確かだこの際神の落とし子だろうが何だろうが従業員として採用できるなら大歓迎だ」
自分に言い聞かせるように、歓迎の意を示すバクス。
八木と加賀の二人についても従業員が足りないのはわかっているので概ね歓迎といった感じであった。
「あれかね、わざわざ応援って書くんだからさ。やっぱ宿で働いてた人なんかね」
「んー、たぶんベッドメイクできる人かな? 接客はバクスさん……?で宿でだす料理はボクでしょ。部屋の片づけとかできる人がいないもん」
八木は宿じゃなくて建築家として働くんでしょ?と言う加賀にバクスをちらりと見てああ、と答える八木。
「基本そうなるな。あ、でも宿で入用になったときは優先的に仕事請け負うよ。代わりに従業員用の部屋に住んでいいって事になったし」
「あ、そうなんだ?」
そういってバクスを見やる加賀。バクスは少し考え事をしていたようだが、加賀の言葉に気づきああと頷く。
「たぶん、後々いろいろ追加で必要になるだろうからな……なあ、加賀ちょっと聞きたいんだが」
「う? なんでしょー」
「お前精霊魔法使えるよな? お湯ってだせるか?」
バクスの質問に顔に指をあて考える仕草を見せる加賀。
「んー、やったことないので分からないーです。ためしにお願いしてみましょうかー?」
「ん、それじゃちと風呂場にいってみるとするか」
加賀の提案を受け風呂場へと向かう一行。
そのまま入る気なのかしっかりとうーちゃんもついてくる。
「それじゃ、加賀たのむ」
「はーい、それじゃー精霊さん。この湯舟をお湯でいっぱいにしてください! あ、人が入るのにちょうど良い温度でっ」
そう加賀が言った直後、湯舟から1m程の高さに小さな水球がふわりと現れる。
そして皆が何か思う前に水球から溢れんばかりの大量のお湯が零れ落ちる。
まるで滝の落ちるような音を立て湯舟にお湯がたまっていく。
予想以上の水量に思わず後ずさる皆。
時間にして10秒ほどだろうか10名近くが入れる大きな湯舟、それがお湯で満杯になっていた。
うっ(一番のりぃ)
皆が驚き固まる中、満杯になった湯舟をみて桶片手に飛び込むうーちゃん。
制止する間もなく湯舟に飛び込むうーちゃんをみて苦笑する加賀。バクスのほうを見て口を開いた。
「なんか、思ったよりも水量すごかったですねー」
「ああ……加賀、お前魔力は大丈夫なのか? こんだけの量だすとかなり魔力を食うはずだが」
「ん……なんともないです。というか魔力使った感じがしない?」
バクスに言われ自分の手足を眺める加賀であるが、まるでなんともないようだ。
以前精霊魔法を使った際は、ごそりと何かを持っていかれる感覚がしたがそれすらないようだ。
「ふむ……? ……うむ、さっぱり分からん。もういろいろと頭がいっぱいだ、今度考える!」
バクスは考えることを放棄した。
いろいろありすぎてもう頭がいっぱいなのだろう。
「……ぉぉぉおお」
「バクスさんてば……ん?」
バクスの言葉に思わず涙しそうになる加賀であったが、ふと隣の八木から妙な唸り声のようなものがするのに気が付く。
「……何してん、八木」
「加賀に出来て俺にできないはずがない! うおぉぉおおお!! 精霊よ、俺に力を!!」
胡乱げな視線で八木を見る加賀。
視線の先では八木が右手のひらを空に向け、左手でその手首をがっしりと押さえ何やらぷるぷると震えていた。
何かの漫画でみたな、等と加賀が考えていると八木は手のひらを前に向け、いでよ水球!と叫ぶ。
「……あふぅっ」
ぱしゃりと音を立て手の平からコップをひっくり返した程度の水が出る。
そしてそれだけで魔力が尽きたのか、八木は妙に乙女チックなポーズでその場に崩れ落ちた。
「え……うそ?」
「……これはさすがに魔力すくなすぎだと思うぞ」
崩れ落ちた八木に加賀とは違った意味で驚くバクス。
加賀と八木の差は一体何なのだろうか……そう考えそうになるバクスであるが、これについても考える事を放棄する。
加賀の方を見てしかしあれだな、とつぶやく
「う?」
「こんだけお湯出して問題ないのなら、風呂の湯を張る人員については削れそうだ。一度出してしまえば温度を保つぐらいなら魔道具で十分」
うれしい誤算だなと笑うバクス。
「ま、ひとまず飯にするか」
「そですね。うーちゃんも適当なところであがるんだよー?」
うっ(うひょーい)
広い湯船で楽し気に泳ぐうーちゃん。マナー違反と言いたいとこだが使っているのはうーちゃんのみ。それに兎である。
あまりこちらの話を聞いてなさげなうーちゃんを見て、しょうがないなと思いつつバクス亭へと戻るのであった。
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