異世界宿屋の住み込み従業員
12話 「おしごと」
「ご馳走様でした」
「おう」
バクスが用意した料理はかなりのボリュームだった。
加賀は半分以上を八木に渡していたが、それでも厳しい量だったようで苦しそうにうなっている。
一方八木はというと自分の分に加え加賀が食べ切れなかった分も食ったにもかかわらず、平気な顔をしている。
バクスも同じぐらいの量を食べたにも関わらず同じような顔をしている事から、さきほどの量がこの街での標準の量なのかも知れない。
「さて、飯食って落ち着いたところでお前達に聞いておきたい事があるんだが」
バクスはコップにはいった水を飲み干すと改めて二人へと話かけた。
「お、なんでしょ?」
「何、大した事じゃないこの街にきた目的は何なのかなと思ってな」
その問いにどう答えようかと思案する加賀、だが八木は特に思案するそぶりも無くバクスへ答える。
「目的は単純、二人とも仕事を探しにきたんす」
八木の答えは嘘ではない、この世界に地球の文化を伝える云々は置いておいて、二人とも最初からこの街で仕事をするつもりではいた。
何をするにしてもまずは生活基盤を安定させる必要があると言うのが二人の共通認識であった。
八木の答えに同意するようにうんうんと頷く加賀、それをみたバクスは少し思案気にあごを軽く指でおさえる。
「なるほどな、職探しか……」
「ですです、俺が建築家で加賀は料理人。 この規模の街なら仕事は十分あるだろうし、食いっぱぐれる事はないかなーっと」
「まあ実際仕事はあるしな……ああ、そうだ言い忘れるとこだった」
「? なんでしょ」
「この街じゃギルドに入ってないと基本的に仕事できないんだよ。だから明日にでもギルド登録しに行くぞ」
「俺たちみたいな余所者でも登録できるんですかい?」
「無論だ」
二人にとってありがたい事に余所者だからといって登録できないと言うわけでは無いようだ。
バクスの言葉を聴いて二人はほっと胸をなでおろした。
「住民を把握するのと税金をしっかり取るためってのもあるがな、この街で身分証代わりに使えたりもするし……まあ詳しい話は明日ギルドにいって聞くといい」
「あれ、ギルドに入るって事は基本誰かの下について働くことになるのかな?」
「俺は詳しくは知らんが大工の場合はそうだろうな」
「んが、やっぱそうだよなあ」
浮かない顔をする八木にどうかしたのか?とたずねるバクス。
八木は気まずそうに顔をかきながらわけを話し始めた。
「ほら、さっき宿作るならお礼代わりになにかできるかなって思ったんだけど……基本だれかの下でやるとなると俺ができることってあんまなさそうだなと思って。 俺がつく親方に宿の仕事がいくとは限らないし、それに入ったばかりの奴に行きなり図面描かせてはくれないだろうなーと」
「図面? 宿のか?」
「そそ、平面図とか概観図とか……他にもいっぱいあるけどね」
「てっきり現場で作業する側かと思ったが違ったのか……」
「もちろん現場での作業も出来なくはないけど、メインでやってるのは図面描きなんだ」
バクスがそう思うのも無理はない。
身長2mのむっきむきな男がちまちまと図面を描いている、あまり想像できるものでもないだろう。
「なっるほどねぇ……まあお前さんに図面描いてもらうようには出来なくは無い」
「えっ そうなの?」
「簡単な話だ、指名で依頼すればいい」
おお!と歓声をあげる八木
そんな喜ぶ八木に対しバクスは但しと声をかけた。
「実際にお前さんが描いた図面を採用するかは見てからきめるぞ?」
「おう! そりゃもちろん! よっしゃー気合いれて描くぞーっ」
「まずはギルド登録してからな」
さっそく礼ができると喜ぶ八木によかったねーと声をかける加賀であるが、考え事をしているのかなにやら上の空だ。
「加賀は何か悩み事か?」
「んあ、ちょっとねー」
「何悩んでるのよ、ゆーてみー?」
八木は自分の悩みが解決しそうなため、余裕しゃくしゃくと言った感じである。
加賀はそれをちょっと恨みがましい目でみつつ話しはじめた。
「ボクはどこで働こうかなーて悩んでるのですよ」
「んなもん食堂とかだべ? 悩む事もないっしょ」
料理人がどこで働くか?確かに八木の言うとおり悩むような事ではないだろう。
だが加賀は見た目は十台前半の子供である。
子供を料理人として雇ってくれる店はあるのか?雇ってくれたとしても給仕としてではないだろうか?自分としてはやはり料理を作りたい、そう言った思いを加賀は二人に打ち明けていった。
「──と言うわけなのですよー」
「まあ確かにそれはあるかもなあ……実際の所この街だとどんな感じなんですかね?」
そう八木に問われたバクスは顎にふれつつ軽く天井見上げ、そうだなあとつぶやく。やがて考えがまとまったのか二人へと向き直り、俺も全部を把握してるわけじゃないが、と前置きをして話し始めた。
「確かに俺が知る限り子供が料理を作ってる店はないな、給仕として雇ってるか──その店の子供が手伝ってのはいくつかあるぐらいだな」
「やっぱそうですよねー……うーん、どうしよ」
「屋台とかはどうよ? どこかで借りれるかも知れないぜ」
「いや、屋台はやめとけ」
八木の屋台という案を聞いて結構いいのでは?と思った加賀だがバクスから待ったがかかる。
理由を聞くと加賀のような子供が屋台なんてやってるとちょっかいかけるアホが間違いなくいる、トラブルを避けたいならやめといた方が良いとの事だ。
加賀としてもトラブルはごめんだと言うことで屋台はやめておく事となった。
「うぐぅ……屋台は良いと思ったのになー」
「トラブル避けたいならしゃーないべ……しかし、どうしたもんかね? いっそバクスさんの宿で雇ってもらうとか?」
「ははっ、うまけりゃ別にかまわんが──」
「ほっ、ほほ本当ですかバクスさん!?」
「あ、ああ」
(半分冗談だったんだが……まあ、実際美味しいなら別に雇ってもかまわんか?)
「んっし! じゃあじゃあ、明日にでも何か料理つくってみるので味見してもってもいいですかっ」
「それはかまわんが……冷蔵庫にあるの今日買った肉ぐらいしかないぞ、昼間買出しにいくとして作るなら夕飯か?」
「あーそですねー 昼間に買出しして準備してー……うん、やっぱ夕飯がいいですね」
加賀はとりあえずの目標が出来たことで俄然やる気がましてきたようだ
さきほどとは打って変わってにこにことしながら何作ろうかなー、八木は何たべたいー等と話している。
「それじゃあ明日は朝飯くったらギルドに行くとするか、その後は二人で買い物するといい」
「バクスさんはどうするんだい?」
「俺は調べ物があるのと知り合いに合う用事があってな、夕飯までには戻るから昼飯は二人でくっといてくれ」
バクスは用事があるらしく明日は八木と加賀の二人で買い物をすることになるようだ。
店は基本大通りにそってあるので問題ないだろうとの事だ、ただ間違っても大通り以外の道には入るなよ、と釘を刺していた。
やはりというか多少は治安の悪い場所も存在するようである。
「まあ、とりあえずは明日になったらだな、明日は早いからそろそろ寝ておけ」
「おう」
バクスが用意した料理はかなりのボリュームだった。
加賀は半分以上を八木に渡していたが、それでも厳しい量だったようで苦しそうにうなっている。
一方八木はというと自分の分に加え加賀が食べ切れなかった分も食ったにもかかわらず、平気な顔をしている。
バクスも同じぐらいの量を食べたにも関わらず同じような顔をしている事から、さきほどの量がこの街での標準の量なのかも知れない。
「さて、飯食って落ち着いたところでお前達に聞いておきたい事があるんだが」
バクスはコップにはいった水を飲み干すと改めて二人へと話かけた。
「お、なんでしょ?」
「何、大した事じゃないこの街にきた目的は何なのかなと思ってな」
その問いにどう答えようかと思案する加賀、だが八木は特に思案するそぶりも無くバクスへ答える。
「目的は単純、二人とも仕事を探しにきたんす」
八木の答えは嘘ではない、この世界に地球の文化を伝える云々は置いておいて、二人とも最初からこの街で仕事をするつもりではいた。
何をするにしてもまずは生活基盤を安定させる必要があると言うのが二人の共通認識であった。
八木の答えに同意するようにうんうんと頷く加賀、それをみたバクスは少し思案気にあごを軽く指でおさえる。
「なるほどな、職探しか……」
「ですです、俺が建築家で加賀は料理人。 この規模の街なら仕事は十分あるだろうし、食いっぱぐれる事はないかなーっと」
「まあ実際仕事はあるしな……ああ、そうだ言い忘れるとこだった」
「? なんでしょ」
「この街じゃギルドに入ってないと基本的に仕事できないんだよ。だから明日にでもギルド登録しに行くぞ」
「俺たちみたいな余所者でも登録できるんですかい?」
「無論だ」
二人にとってありがたい事に余所者だからといって登録できないと言うわけでは無いようだ。
バクスの言葉を聴いて二人はほっと胸をなでおろした。
「住民を把握するのと税金をしっかり取るためってのもあるがな、この街で身分証代わりに使えたりもするし……まあ詳しい話は明日ギルドにいって聞くといい」
「あれ、ギルドに入るって事は基本誰かの下について働くことになるのかな?」
「俺は詳しくは知らんが大工の場合はそうだろうな」
「んが、やっぱそうだよなあ」
浮かない顔をする八木にどうかしたのか?とたずねるバクス。
八木は気まずそうに顔をかきながらわけを話し始めた。
「ほら、さっき宿作るならお礼代わりになにかできるかなって思ったんだけど……基本だれかの下でやるとなると俺ができることってあんまなさそうだなと思って。 俺がつく親方に宿の仕事がいくとは限らないし、それに入ったばかりの奴に行きなり図面描かせてはくれないだろうなーと」
「図面? 宿のか?」
「そそ、平面図とか概観図とか……他にもいっぱいあるけどね」
「てっきり現場で作業する側かと思ったが違ったのか……」
「もちろん現場での作業も出来なくはないけど、メインでやってるのは図面描きなんだ」
バクスがそう思うのも無理はない。
身長2mのむっきむきな男がちまちまと図面を描いている、あまり想像できるものでもないだろう。
「なっるほどねぇ……まあお前さんに図面描いてもらうようには出来なくは無い」
「えっ そうなの?」
「簡単な話だ、指名で依頼すればいい」
おお!と歓声をあげる八木
そんな喜ぶ八木に対しバクスは但しと声をかけた。
「実際にお前さんが描いた図面を採用するかは見てからきめるぞ?」
「おう! そりゃもちろん! よっしゃー気合いれて描くぞーっ」
「まずはギルド登録してからな」
さっそく礼ができると喜ぶ八木によかったねーと声をかける加賀であるが、考え事をしているのかなにやら上の空だ。
「加賀は何か悩み事か?」
「んあ、ちょっとねー」
「何悩んでるのよ、ゆーてみー?」
八木は自分の悩みが解決しそうなため、余裕しゃくしゃくと言った感じである。
加賀はそれをちょっと恨みがましい目でみつつ話しはじめた。
「ボクはどこで働こうかなーて悩んでるのですよ」
「んなもん食堂とかだべ? 悩む事もないっしょ」
料理人がどこで働くか?確かに八木の言うとおり悩むような事ではないだろう。
だが加賀は見た目は十台前半の子供である。
子供を料理人として雇ってくれる店はあるのか?雇ってくれたとしても給仕としてではないだろうか?自分としてはやはり料理を作りたい、そう言った思いを加賀は二人に打ち明けていった。
「──と言うわけなのですよー」
「まあ確かにそれはあるかもなあ……実際の所この街だとどんな感じなんですかね?」
そう八木に問われたバクスは顎にふれつつ軽く天井見上げ、そうだなあとつぶやく。やがて考えがまとまったのか二人へと向き直り、俺も全部を把握してるわけじゃないが、と前置きをして話し始めた。
「確かに俺が知る限り子供が料理を作ってる店はないな、給仕として雇ってるか──その店の子供が手伝ってのはいくつかあるぐらいだな」
「やっぱそうですよねー……うーん、どうしよ」
「屋台とかはどうよ? どこかで借りれるかも知れないぜ」
「いや、屋台はやめとけ」
八木の屋台という案を聞いて結構いいのでは?と思った加賀だがバクスから待ったがかかる。
理由を聞くと加賀のような子供が屋台なんてやってるとちょっかいかけるアホが間違いなくいる、トラブルを避けたいならやめといた方が良いとの事だ。
加賀としてもトラブルはごめんだと言うことで屋台はやめておく事となった。
「うぐぅ……屋台は良いと思ったのになー」
「トラブル避けたいならしゃーないべ……しかし、どうしたもんかね? いっそバクスさんの宿で雇ってもらうとか?」
「ははっ、うまけりゃ別にかまわんが──」
「ほっ、ほほ本当ですかバクスさん!?」
「あ、ああ」
(半分冗談だったんだが……まあ、実際美味しいなら別に雇ってもかまわんか?)
「んっし! じゃあじゃあ、明日にでも何か料理つくってみるので味見してもってもいいですかっ」
「それはかまわんが……冷蔵庫にあるの今日買った肉ぐらいしかないぞ、昼間買出しにいくとして作るなら夕飯か?」
「あーそですねー 昼間に買出しして準備してー……うん、やっぱ夕飯がいいですね」
加賀はとりあえずの目標が出来たことで俄然やる気がましてきたようだ
さきほどとは打って変わってにこにことしながら何作ろうかなー、八木は何たべたいー等と話している。
「それじゃあ明日は朝飯くったらギルドに行くとするか、その後は二人で買い物するといい」
「バクスさんはどうするんだい?」
「俺は調べ物があるのと知り合いに合う用事があってな、夕飯までには戻るから昼飯は二人でくっといてくれ」
バクスは用事があるらしく明日は八木と加賀の二人で買い物をすることになるようだ。
店は基本大通りにそってあるので問題ないだろうとの事だ、ただ間違っても大通り以外の道には入るなよ、と釘を刺していた。
やはりというか多少は治安の悪い場所も存在するようである。
「まあ、とりあえずは明日になったらだな、明日は早いからそろそろ寝ておけ」
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