俺のこと、好きになってよ

あむ

俺のこと、好きになってよ

「ごめんねー、真依(まい)ちゃん。もう、僕、この街から離れてアメリカに行くことになった。」
「えっ、何で?何で?」
「それはー、言えない。」
「えっ、それじゃー、もう会えないの?」
「うん」
「…。また、会えるよね!?」
「いや、多分もう会えない。」
「うっ、そ、嘘だ」
「ごめんね。でも本当ーー。」
   ーブルブルブルー
「あっ、ごめん、電話だ」
「ー、もしもし、あっ、僕。うん、うん、分かった…。」
 何で、何で結(ゆう)くんは、いなくなっちゃうの?
大好きだった、一番仲良かった、信頼できた、結くん。離れるなんていや、…。
 結くんの電話が終わった。
 「ごめん、今から空港に行くって言われちゃった。ごめん、もう行かなきゃ。今までありがとう。僕、真依ちゃんのこと、ずっと忘れないからー。バイバイ」
 「あっ、…。」
 結くんは走って家と向かってた。
 何も言えなかった。バイバイの一言も言えず、ただ1人 立ち尽くしたー。
 
 ちゅん、ちゅん、ちゅん。
 雀の声で目が覚める。
 「はっ!…。また、あれかー。」
 十年ぐらい経ってもまだ、思い出す。
 「はあー、また、泣いてる、みっともない。」
 今日は夏休み明け、最初の登校日。
 高校生になっても、見た目が変わるだけで、中身はあのときの、小学生の延長上。
 「支度しよー。」
 眠い目をこすりながら学校へと向かった。
 そのとき、私は知らなかった、あの人が帰ってきたということを。
 
 

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