愛にはいじめが付き物です

多々野タヌキ

女と女と女と男

ーこれは高校1年の中島 紗凪(サナ)のお話ー

 時は8月。猛暑だ。
朝からダラついた態度で道を歩く人。
汗をかきながら必死に坂を上がっている人。
ここには様々な人がいる。
もちろん私は後者だ。あんな廃れたような態度は死んでも取りたくないね。
そんなくだらないことを考えていると急に後ろからドンッという衝撃と共に重みがのしかかる。

「おっはよー!サナちん!!!」

驚いた表情で振り返るとそこには昨日転校してきたばっかの目黒 里奈(リナ)が馴れ馴れしく承諾すらしていないあだ名で朝っぱらから大きな声を出し周囲の注目を浴びていた。
正直言ってめんどいし、うざいし、関わりたくない。
しかし自分のクラスでのポジションはいわゆる、
「誰にでも優しく可愛いいい子ちゃん」なのだ。
本当は蹴飛ばしたいところだったが
私はニコッと作り笑いをし、

「おはよう目黒さん。朝から元気ね」

と、微笑んで見せた。
目黒 里奈は安心したのか微笑み返してきた。
うざったらしい。くだらない。
そんなことを考えながら目黒 里奈と共に学校へ向かう。

「はぁ。。」

朝から疲れが莫大にたまったので
自分の席に座ると同時にため息を漏らす。
その時、隣の席の男子、高橋 優希(ユウキ)が、

「サナ、おはよう。朝からどうしたんだよ」

と、心配してくれた。
ユウキは保育園の頃からの幼馴染で、数多くいる友達の中でたった1人信頼できる存在だ。

「ううん、心配しないで。少し疲れていただけなの」

そう言った直後に

「えぇ〜っ!ユウキくんってそんな小さなことにも目を留めて気を配れるなんて優しいねぇっっ♡」

ユウキに自分の胸を見せつけるようなポージングをとりながら甘い声を出すぶりっ子少女、リナが横槍をいれてきた。
はぁ。このため息の原因はお前じゃコラ。
と言いたかったがユウキの手前言い出せなかった。
甘く口説かれたユウキは苦笑い。
リナは知らないが、私とユウキは中学校の頃から付き合っている。家が隣ということもあり、親公認の仲だ。
するとチャイムがなり、担任が「号令ー」という声と共に教室へ入ってくる。

「きりーつ」「きをつけー」「れーぃ」

日常的な挨拶を済まし、ひと段落つくと、担任がタイミングを見計らって口を開いた。

「えー、昨日は目黒が転校してきたが、今日は更に新しい転校生がこのクラスにやってくる。さぁ、入ってきなさい。」

教室のドアが開くとクラスがざわめき出す。
美少女が入ってきたからだ。

「えー、今日からみんなと一緒に学習する、
成山 心海(ココミ)さんだ。みんな仲良くな。」

この転校生が来たことによって私の高校生活が大きく揺れていくことは、まだ誰も知らない。

続く

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