放課後特別研修。

Yuyu

文学少女と体育会系

朝から何だかどっと疲れた気がする。

足早に下駄箱に向かい、
特に誰と会話をする訳でもなく
自分のクラス、番号を確認して学校に入った。

靴を入れようと下駄箱を開ける。

しかし、誰かの靴が既に入っていた。

見間違える筈はないと思うが、
もう一度外に出て確認する。

やはり、私の番号は 15 である。
だが、靴は入っている。

ではクラスを間違えたか?
否、そんな筈はない。

私は確かに1年6組で、この下駄箱もそのクラス用だ。


そんな事をしながらうろうろしていると、
後ろから足音が聞こえた。

私の後ろを勢いよく通り過ぎて、
急ブレーキを掛けてこちらに向かってくる。

何か叫びながら。

「ごめんなさいー!番号間違えました!!」

彼女はそう言うやいなや、
私の下駄箱の中にある靴を奪い去り、
10 の下駄箱に放り込む。

ガタンと大きな音を立てて蓋を閉めた。

「いやぁ、本当にごめんね?
クラスに入ってから気づいてさ…

あ、同じクラスなんだね!
私、野々宮 菜穂!宜しくね!」

いきなり出てきて急に話しかけられたものだから
驚きではぁ、としか声が出ない。

勢いよく右手を掴まれ、
上下にぶんぶん振られた。

「下駄箱が隣だって事は席も隣だね!
教室いっしょに行こう!」

そのまま手を引っ張られて
彼女のペースで廊下を走っていく。

その途中、彼女は振り返り、こう問うてきた。

「あ、貴女の名前聞いてなかったね!
名前は?」

人に名乗る事など、中学校の自己紹介以来だろう。
変に緊張して噛んでしまいそうだった。

「かっ、薫、藤園薫、です。」

そっか!宜しくね、薫!と彼女は大きく微笑んだ。

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