心装人機使いのあべこべ世界旅行

えいせす

3.長との対話

 家の中に入った途端、何かとても神聖な雰囲気が俺を包んだ気がした。
 よく分からずに体のあちこちを弄っていると。

「それは、妖精がアンタを慕って周りを飛んでいるだけだから、心配しなくてもいいよ」

 と、長の声が聞こえた。声に従い体を弄るのを止めて、声がした方向へ向かった。

「どうぞ、そこに座るといいよ。異世界の人」
「……!? い、異世界……ですか?なんの事か、全っ然分からないです」

 そう言うと長は、眼をパチパチさせ、しばらくすると大声で笑い始めた。

「アーハッハッ!! 嘘を見抜くと理解していながら嘘をつくとはね、しかも、子供ですら見抜けるレベルの誤魔化し方!!」

 そう言ってからも、5分程度治まっては思い出し笑いを繰り返し、ようやく話ができる程度に落ち着いたようだ。
 俺はその間、顔を真っ赤にして俯いている事しか出来なかった。確かに理解していたはずなのに、嘘をついたのは俺のミスだからだ……クソッ!! 次はやらかさないようにしないとな。

「────あぁ、笑った笑った!! すまないね、久しぶりに話ができる人だと思って、つい気が緩んでしまったよ」
「いや、大丈夫です。それに嘘をついたのはこちらだったので、俺が責めるようなことはできないですから」
「そうか、それならここはなかったことにしよう。それで、ここからは真面目な話をしたいのだが、構わないかな?」
「はい、お願いします」

 そう言うと、長が姿勢を正し、こちらを向く。

「さて、それじゃあ転生者君。最初に話しておかなければならないことがあるから寝ないで聞いてくれよ!」

────────

「そういう訳で、アンタの事は、先輩である私が天使様から託されたんだ」

 軽く二時間近くの話が終わった……無駄話への脱線が酷かったが、話の要点をまとめてみることにする。

・エルフの長は転生者
・天使様は忙しいので、エルフの長に全部放り投げて違う仕事をしてるらしい
・ここの常識は前世とは違う
・ステータスとかの表示はない

「なるほど、ザックリと分かりました。それで、常識が違うってどういう事ですか? 天使様からは、一部の思考と体質、あと、美醜の価値観が違うって聞いてたんですけど」
「なんだ、結構ちゃんと聞いてるんだな。今言った通り、一部ではあるが、前世でいうところの男が女の、女が男の思考回路と体質を持つ。……もっと簡単に言うなら、思考なら趣味、言葉、服装…あと、性欲とか…体質なら普通に筋肉とか……その他諸々が入れ替わってるんだ」

────な、なんだって!!??
 この世界では極端な話、ナヨナヨの男達が女の格好を、ガチガチの筋肉女がタンクトップを来ているのか!!
 ……筋肉女は嫌いじゃないが、男は……

「変な顔してるところ悪いが、もう一つの方、美醜の価値観についてだ。これはもっと簡単だ……前世で言うところのブスがイケメン、イケメンがブス…顔だけじゃなく、体も同じだ…。 私は当時ロリでカワイイぷにぷにエルフになれたのに、これを聞いて────」

 また話が脱線している長の話を、頷きながら聞き流し、聞いた内容について考えた。


────俺、勝ち組じゃね!? イケメンにしてもらわなくて良かった〜!!
 天使様マジ天使!! 正直美醜関係に関しては、人じゃなくて芸術とかに関してだと予想していたから、凄くラッキーだ。

「────という訳なんだ。 すまないね、また話が逸れてしまったよ。それで、あとなにか聞きたいことはあるかい」
「それなら、ステータスに関してと、なんとか人機って奴に関しても聞いていいですか」

 と聞くと、長は「なんだ、そんな事か」とでも言いたげな表情になる。

「……まあ、ステータスに関しては、全く見ることができないと言っていい。私も来た当時はことある事に、見ようとしていたが、見つからなかったからな」

 やはり、考えることはいっしょなんだな。

「そして、なんたら人機についてだが、正式には心装人機とみんな呼んでいる。これは、赤ん坊の時に儀式をすることにより、体内に精霊を宿し、共に過ごすことにより────」

 なんか長って話が長いんだよなぁ、校長の話みたいな感じがして、大半を聞き流しているが。大切なことだけはしっかり覚えた。

・精霊を自分に宿さなければならない
・装備展開中、魔力を使用し続ける
・部分的にしか出せない
・近距離用と遠距離用の二タイプがある
・タイプおよび武器は精霊が決める

 簡単な話こんな感じだった。
 部分装着しかできないのか……今のところ見たこともないので評価がとても難しい。

「魔力の消耗がガツガツと来るから、自信がある奴以外は使わずに、魔法や武器で戦っているものがほとんどだ。それにお前は精霊宿してないから使えないしな」
「────っ!?」

 そうだよなぁ……精霊いないし使えないよなぁ……
 折角のロボット要素が、俺が使えないんじゃ意味無いじゃないかよぉ……
 相当酷い落ち込みようだったのか、長がアタフタしながら話を続ける。

「ま……まあ、そこまで落ち込むな。ちょっと特殊な……その……問題児……みたいなやつでいいなら、お前に入りたいって言ってる奴がいるぞ?」
「ホントですか!? 俺、ロボット使えるんですか!? いいです、いいです! 問題の一つや二つ乗り越えて見せますよっ!!」
「お、おう。そうか急に元気になったな。それと、細かいようだが心装人機な! ロボットみたいにでかくないから! ────よし、それじゃあちょっと目を閉じてくれ」

 リスク無くして、ロマン追い求める資格無し……当たり前のことだ。 
 それに、俺が唯一頼れるのは、魔法とかロボッ……心装人機とかしかないだろう。前世じゃ空手を白帯で辞め、剣道を素振りで辛くなり辞め、その他スポーツも一年以上続けたものはないのだから。
 どっかの主人公達の様な接近戦なんてできっこ無いのである。
 少なくとも、修行とかしなければ、ゴブリンとか辺りにですら、コロコロされてしまうかもしれないのだ。

 そんなことを考えていると、下腹部のあたりに何か暖かい感覚が……ん? ……あ……つい?……熱い……熱い!! 熱い熱い熱いィィィィ!! 


────そこで、俺の意識は飛んでいった。

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