人生のターニングポイント

Yukiko

人生のリロード




「ここは……」


目を覚ますといつもとは少し違うが、知っている天井が目の前にうつった。

俺、たなか ひとし(田中 仁史)は体を起こして周りを見渡す。

机に乗っている数学の教科書。
壁に飾っているサッカーのポスター。
部屋の隅に置いてあるゲーム機器。

ひとつひとつ確認してだんだんはっきりと認知していく。

「ここは中2の時の部屋……?」

机の教科書の学年を見て確信を得た。

そう、ここは中学二年生時の俺の部屋。


俺の家では学年が上がるごとに部屋を移動したり、模様替えをしたりするのが恒例行事だったりする。

そしてこの部屋を使っていたのは中学生の時だった。

「でもなんで……」

そう思うのも当然である。

普通なら中学二年生が昼寝から目覚めただけの普通の日常。

だが俺はついさっきまで大学で講義を受けていたんだから。

もぅ軽くパニックである。

「ん…?あれは……?」

部屋の隅に俺が現在使っているスマートフォンが落ちてあった。

とりあえず拾って電源を入れてみる。

何故か圏外で使えそうになかった。

だが、その中でもメールを一つだけ受信していた。

「宛名は…近未来研究所…?
 なんか色々思い出してきたな…」

メールの内容を読んで俺ははっきりと思い出す。

この俺がずっと望んでいた状況を作った経緯を。


ーーーーーーーー











「人生をやり直しませんか?」


午後5時の大学の講義室。
最後の講義を受けていた俺のスマホにそんなメールが届いた。

「100万円が当たりました。
受け取るためにお金を振り込んでください。」

そんな明らかにこちらがのってくることを誘っているメールなら見たことも受信したこともあるが、こんなメールは珍しい。

おもしろい。
少し付き合ってやるか。

そう思い内容を読み進め、俺は息を飲んだ。



おめでとうございます田中様。
あなたはこの度わが近未来研究所の実験の被験者に選ばれました。

突然ですが、
今の大学に不満はありませんか?
彼女の家庭や行動に不満はありませんか?
家族に不満はありませんか?
友人関係に不満はありませんか?
毎日過ごしている今の日常に不満はありませんか?
自分のスペックに不満はありませんか?


今生きているこの人生に不満はありませんか?


人生には数多くの分岐点があります。
人はその分岐点に立ちそのどちらか、またはいづれかを選択して進んでいかなければなりません。
人はその分岐点に立ち葛藤し、一つを選んで進んでいく。
その過程で選択肢を選び間違えたことや、そもそも選びたい選択肢が自分の能力不足が災いして選べなかった。
などの後悔はありませんか?

あの時こうしとけばよかった。

誰もが考えたことのあることですよね。

我々はそんな体験から過去に戻り、選択肢をやり直したいと強く思う方々を探し、その中から1名を選出して過去に戻っていただこうと考えています。

この度はその1人という枠に田中様が選ばれたというわけです。


もちろん無理にとは言いません。

ただ過去に後悔がありもう一度やり直したいと願うなら、このメールに戻りたい学年と日にちを記入して返信してください。







正直びっくりした。

途中までは占いでよく使われると言われる心理学「バーナム効果」かと思っていた。

だが俺は本当にメールの内容に全て当てはまっていた。

日常に疲れていた。

度々考えることがあった。

人生をやり直したい。  と。


当然仲のいい友達も少しはいる。

昔の仲間も良い奴だらけだ。


だがそれを含むすべての要素より後悔の方が強かった。

やり直したい過去が現在(いま)に勝ってしまったのだ。


俺は返信メールに中学二年生、2月
と記入し、一つ呼吸をおいてから送信ボタンを押した。

「うわっ!」

送信完了の通知とともにスマホから異常なまでの光が放たれ、目の前が真っ白になる。

真っ白な景色の中、俺はゆっくりと意識を失っていった。


ーーーーーーーーーー



そうだ、そうだった。
俺が記入した内容が本当なら今は中学二年生の2月にあたるのか。

元は大学2回の20歳だったから、中学二年生の14歳に約6年ほどタイムスリップことになる。

にわかに信じ難い話だと思うが、それはおいおい確認していくとしよう。



こうして俺の2回目の人生がスタートした。

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