夢物語project

奏薇

一章「都会遠征」

introduce oneself: 

一 蚕兎(にのまえ てんと)
稜介と同い年だが、高校には行っていない。中二病。この世界に憎まれているが正義感は強い。3人の命の恩人。時に青年は、脆く壊れやすい「夢」を視ることになる。
視ることのできる奇跡界
丈夫で安全な「現」

盥 刃音(たらいはのん)
蚕兎の同居者(居候)であり同業者でもある。仕事は何でも屋。裏側の人間でもあるので、世界から隔離されている。3人が捕まったことにいち早く気付いた。
時に青年は、危うく稚拙な「夢」を視ることになる。
視ることのできる奇跡界
麗しく行儀正しい「現」



(翔視点)

今…俺は歩いている。

何処をって…まあ、学校の帰り道だ。

正確には、補修の帰り…かな。

前に起こった爆発によって、俺は全治2ヶ月の重傷を負った。

治る頃には外はとっくに秋めいていた。

…ところで、今は冬休み。

東北の冬は長い。

なので、夏休みより冬休みのほうが多く、無論補習やら追試やらは冬休みに行われることが多い。

「あァ…怠ィ…」

端から見れば、こんなかんじの呟き方だったと思う。

と言っても、たまたま今日は電車に乗り遅れたこともあり気晴らしに歩いて帰ろうと思っていた過去の自分がいるので自業自得である。

あと2キロ…か。

見渡す限り、畷が続く。 

ふと気付くと、足元になにかがあった。

なんだろうか…拾い上げてみるとそれは金属の破片のようなものだった。

最近、金さんがミサイル打ち上げたって言ってたことを思い出した。

これミサイルだったら怖いな…と思った。

刹那、その破片は光を発した。

「うっ…うわぁ…」

ついうっかり俺はそれから手を離した。

昔に似たような光景を見たことがある。

ただ、それは偶像の世界。

とある科学者がタイムマシンを起動し過去にタイムリープしたときと同じ光だった。

発光は一瞬のうちに終わったが、俺は驚きを隠しきれずにいた。

俺はこの破片を捨てずに、懐に入れ、家へとまた歩を進めるのであった。


(沙夢視点)

「あっ。翔ー。おかえりー。」

「おう!今日も補習きつかったなぁ。でも沙夢の弁当美味かったぞ!」

「なんだお前ら…やけに新婚ホヤホヤ夫婦みたいな会話してるが…今は俺もいるんだぞ…」

「稜介ごめん…でも良いじゃないか……(沙夢可愛いんだし…ボソッ)」

「なんか言ったか?」

「なっ…何も言ってねぇよ!」

「…そんなことより稜介兄…心配してくれるのは嬉しいけど…席を外して貰ってもいいかな…?」

「おお…すまんすまん、邪魔したな。お前ら2人で変な気起こすなよ?」

「「起こさない!!」」

「そっそうか…。(そんな強く否定するもんか…?)」

いつも通りの日々。

あの事件以来、学校には言ってないけど、なんとなく家の中はむしろ暖かくなったんじゃないかなって思う。

翔は素直に気持ちを言ってくれるし、稜介兄は部活熱心なのにその上小説家の仕事をしながら私たちを養ってくれてるなんて。

血が繋がってる訳ではないのに、なんでこんなに心配してくれてるのかな…

やっぱ私が可愛いからかな… 

「お前そんなキャラだったか?」

「ち…ちょっ…かっ…翔…また人の心の中読んだね…!!」

「さっちゃんそんな怒らんといて…」

「また昔の呼び方で…仕方ない子なんだから…許してあげたくなっちゃうじゃん…」

「ちょ…さっちゃんのツンデレ萌える…」

「バームクーヘン買っtおいこら!何してんだよ!」

「ううぉっ!?兄貴…これには深い訳が…」

「言い訳なら聞いてやろうじゃねぇか…上等だ」

「やば…剣道5段怒らしたらヤバイ()」

「聞こえてるぞ」

「ヒィッ!?」

やれやれ…またこの2人の取っ組み合いが始まるようだ…

小さい範囲で済ませてくれたら嬉しいんだけど…

今回は元気でなによりってことで済ましとこっ。

「翔…お前…強くなったな…」

「まあ、柔道3段ですから(ドヤッ」

「なにっ…いつの間に…」

「兄貴!まだ遅えぞ!そんなんか!兄貴の力は!」

「まだ本気の半分も出してないっての」

「上等だ!」

翔が三段!?ホントなのかな…まあきっと嘘だろうけどね(笑)

そんなことより…天気悪くなってきてるな…

「翔、兄さん、洗濯物仕舞うの手伝だって!」 

「「あいよ!」」

(稜介視点)

次の日、俺らは3人で東京に行くことにした。

その選択は間違いだったらしい。

駅の近くを歩いている時に、テロに遭った。 

見事に、俺らは人質にされた。

まあ、こうして話してる訳だから生きてはいるのだが…

人質にされてから、密室に着くまでの記憶がない。

恐らく、眠らされていたのだろう。

目が覚めたら、そこは密室だった。

それも刑事ドラマではありきたりな、窓が閉まっている、扉に鍵が掛かっている、なんてものじゃない。

窓も扉もない。 

そんな奇妙なことあってたまるかと思い、監視もいないので、壁をつたって歩いてみたが、隠し扉も仕掛けもない。

あるとしたらきっとこの部屋の反対側からしか開けられない、または仕掛けが作動しないものなのだろう。

そんな状態なので、まずは2人の安全を確保してやりたいと思ったのだが、翔の脈を計ったら、脈が

無い。

沙夢の脈を計っても、脈は

無い。

こんなことあっていいのか?

さっきまであんな元気にしてた2人がこんなことになっているなんて…

信じられない。

否、信じたくない。

助けを呼ぼうにも、ここは携帯は圏外を示している。

おそらく犯人が妨害電波でも流しているのだろう。

テロリストって誘拐もするのか?と思ったが、そんなことより2人の命が心配だ。

俺らが捕まる前から3時間ほどしか経っていない。

まだ死んでいない。

確信まではいかないが、きっとこの2人なら生きている。

俺のできる最善策。

それは、壁を壊すことだ。

幸い、何故か部屋にバットが転がっている。

これで2人の急所を突いたのだろうか。

不自然にもほどがあるが、使わない訳にはいかない。

まさか罠なんてないだろう、と過信した俺はそれを手に持ち、

意識が途端に薄れゆくのを感じた。

嗚呼、人って簡単に死ねるんだなと思った。 

後にわかったことだが、それは人が持った時に人の口があるおよその高さにクロロホルムを撒く仕組みになっていたようだ。

目が完全に閉じきる瞬間、俺は見た。

人が天井を破り壁の向こう側から飛び込んで来るのを。

そう、それが俺らと一 蚕兎との出会いだった。

(蚕兎視点)

ふう…また1人無害な仔羊をやっちまったか…

俺は一体…

このチカラを…

何に使いたいのだろうか… 

こんな雑魚を嗜めるためのチカラでいいのか…

否、そんなことはないはずだ。

俺の中に眠る聖なるチカラよ…

俺の中に眠る邪なるチカラを鎮め我が身に宿りし正なるチカラを我が腕より放ち給え…

「って…何やってんだろ俺。」

「一どうした?急におかしくなったのか?」

「お前…聞いてたのか…?」

「いや、急に頭抱えて何やってんだろ俺とか言い出すからさ、また妄想でm」

「そんなんしてねぇよ!阿保か!そんなんしてる暇あったら人助けするわ!」

「おっ丁度いい。実はここ最近で人が拉致られたんだよ…まあ、誘拐されたって言えばわかりやすいかな?」
「言い直さなくてもわかるよ…」

「ならすぐGO。場所はわかってるからさ」

「早いな。で、どこ?」

「そちらも十分早いぞ」

俺は、刃音に一枚のレトロな地図を見せ、さらにグーグレマップも見せた。

「反応速度だけが取り柄だからな。ここは…馬喰町の近くか。ここから少し離れてる気がするのだが…」

「気にするな。電車賃なら出す。」

「(よっしゃ、じゃあその金使わずにチャリ飛ばして…)」
「ん?なんか言ったか?」

「なっ…なんも言ってねぇ!」

(刃音視点)

俺は、蚕兎に指示された山に着いた。

だが、あまりにも広い。

それに、犯人グループの仕業かはわからないが、木や草が生えて居ない。

それなのに、不自然に一点だけコケが生えている。

「ふむふむ…あいつがどうしてグーグレマップと古い地図を組み合わせなきゃいけないのかわかってきたぞ…ん?電話だ…誰から…まあ蚕兎からだよな…わかってるけど期待s」

「あー俺だよ、俺だけどさ、金くr」

「俺に金たかるとか誰だよ。」

「嘘だよごめんごめん、蚕兎だよ」

「知ってるって、で何?」

「今な、さっきの件での新たな情報が来たんだが…人数は3人だ、犯行は最近ここらでちょい有名なグループが行ったものらしい」

「どうしてそんな情報が…そんなことより、およその場所に着いたんだけど小屋らしきものないんだが、」

「お前忘れたのか?この世には地上だけじゃなくて地下や空や海もあるんだぞ」

「そうか、じゃああれだな」

「おっ見つけたか?犯人グループ居ないか気をつけろy」

どぅゔん!

「ごめん、もーやっちった、電話切るわ」

「おいちょっt」



こんにちは、奏薇です。

1ヶ月程休載させていただくお詫びと言っては何ですが、夢物語projectのほうが書き溜めてあったので投稿させていただきました。

一章は翔が謎の物体を見つけたと思ったら捕まって救出されるところまで一気に進みます。

読んだ皆さんが一番わかっていらっしゃると思いますが。

二章からは翔達が蚕兎達と…

おっと、これ以上はネタバレになるので言いません。

次回もよろしくお願いします。

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