夢物語project

奏薇

序章「それぞれの想い」

introduce oneself:

大幡 沙夢(おおはた さくら)
主人公。この世界に絶望されていて、虫が大の苦手。時に少女は、儚く哀しい「夢」を視ることになる。
視ることのできる奇跡界
楽しく消えない「現」

釜田 翔(かまた かける)
沙夢の幼馴染。人の心を読める。この世界に嫌われていて、魚が苦手。沙夢の作る弁当が生きる活力(本人談)。時に少年は、覚めない冷めない「夢」を視ることになる。
視ることのできる奇跡界
熱く迸る「現」

勝雲寺 稜介(しょううんじ りょうすけ)
2人の先輩。この世界から隔離されているが剣道は好き。時に青年は、拙く寂しい「夢」を視ることになる。
視ることのできる奇跡界
濃い充実した「現」




prologue:
私が見ている世界。

それは絶望してしまうくらい平坦で何もない世界。

そんなもの、何年も前に捨てた。

私が望む世界。

そこに希望があった。 

毎日のようにイベントのある、言ってしまえばラノベのような世界。

それを私は奇跡界ーキカイーと呼ぶ。

これはそんな私の平凡な日常を描いた話。そんな私の奇跡界を描いた咄。


沙夢side:

言ってしまえば昔、ただ実際は五年前のある日を境に、私は奇跡界を視るようになった。

ある放課後、私は人気の先輩の名前が書かれたラブレターを持ち、体育館裏へと歩を進めた。

そこでは、明らかにいつもと違う顔をした先輩の姿があった。

先輩は私に小さな声で済まない、と言い残し、その場を去った。 

一体何事だ、と私が周りを見回している定か、私が人生に絶望する理由の一つが襲ってきた。

それは、

大量の虫だった。

私は昔から虫が大の苦手だった。

おそらく、先輩を脅した誰かが屋上にでもいるのだろう。

「私は先輩が好きだからここに来たのに。」

「酷いよ。なんでよ。」

私は、嘆いて、泣いて、哭いた。

煩いと、近隣住民からの苦情もあった。

「私は悪くないのに…。」

「何で私が…ッ‼︎」

気付いたら私は、手にナイフを持った状態で、目の前にいる人に手を突きつけていた。 

それは勿論犯罪だ。

私はまた絶望した。嘆いた。

ただ、そんなもので世の中は黙らない。

義親の声ももう聞こえない。

警察だって、もう宛にならない。

もう逃げよう。

地の果てまで。

私の気の向くままに。

逃げても、逃げても、社会の手からは逃げられないままだ。

誰も助けてなんかくれない。

そうして、彼女は儚く哀しい「夢」を見るのであった…


そんな彼女を匿ったのは、他でもない、翔だ。

沙夢が直に言ったのではない。最近のいつもとは違う彼女の様子から、翔自身が察したのだった。

翔はいつだって、沙夢の味方だった。

小さい頃から、いつも一緒にいた。

昔からやんちゃだった翔と、それとは対象的に静かで動じない沙夢。 

2人とも、孤児院育ちで、親の姿を見たことがない。

だからこそ、一緒に過ごすことを強いられていた。否、一緒にいたかった。


翔side:

俺は一体…何をしていたのだろうか。

目の前のこの地獄絵図のような世界は何だろうか。

…俺は…何者なのだろうか。


「何だ今日は…いつもより暑い…」

翔は起きて早々、そんな言葉を口にした。 

テレビを付けてみると、今日は歴代最高気温を更新したと言う。

ただ、今日は起きる時間が遅い。

早めに家を出なければ学校に間に合わなくなってしまう。

…と、今日が夏休み初日だということに気付いた。

先輩からも沙夢からも何も連絡無いし、今日は久々に孤児院に手伝いついでに顔でも出しに行くか、と思っていると、窓の外から奇怪な爆発音が聞こえてきた。

急いで消化器を持ち外に出てみると、家の目の前の道路で一台の車がぺしゃんこになっていた。

その車が電信柱に猛スピードで激突したために爆発が起きたらしい。

自分は大丈夫だろうと過信していたが、思った以上に爆発は広範囲で、2度めの爆発の時には翔も巻き込まれてしまった。

あまりに呆気ない最後だった、と自分の命の儚さにやっと気付いたが、何者かに助けられ、病院へと運ばれて行ったのであった。

そうして、彼は覚めない冷めない「夢」を視るのであった…


稜介side:

「はあっ…はあっ…」

高校生活3年目の夏、全国高校総体は明日に迫っている。

このままでは、一回戦敗退で終わってしまう。

稜介はそんな事を考えながら、早朝の4時頃から現在に至るまで、休みなしで竹刀を振り続けている。

そろそろ休まなければ、と時計を見ると、10時をとうに回っていた。

朝飯食べてねぇや、と不意に外を見ると、車が猛スピードで接近してきていた。嫌な予感がし、竹刀を置いて外に出てみると、翔が横たわっていた。

「脈は…あるな。」

救急車を呼び、稜介は部活へ行く準備をするために家へ戻った。

今日の部活は午後からだ。

飯を食べ終わると、立ち上がり、部活へと足を進めた。

そうして、彼は拙く寂しい「夢」を視るのであった…




初めての方は初めまして、またの方はお久しぶりです。

こんにちは、奏薇です。

ろくに他の2つの小説書いてないのにまた新しいの書き始めたのかよ、と思った方もいるかと思います。

これは2年前に書いてたやつです。

何を思ったか公開したくなりました。

恐らく次の章あたりで5人の主人公のうちのまだ出てない2人が登場します。

もしかしたらこれ、来年度アフレコされるかもしれません、私が友人と開設するサークルによって、出来心で。

まあそうなったら生暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。

ではまた次回もよろしくお願いします。

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