ヒーローの悲しみ

デイザイスターは深く落ち込みおでんの屋台で焼け酒を飲んでいた。せっかく人助けをしたというのに誰にも感謝されず、それどころか怖がられてしまうからだ。

今日もせっかく女性のバッグを取り返して上げたというのにこの顔で怖がらてしまいバッグを受け取らずに女性は逃げて行ってしまった。

やはり、俺はヒーローに向いていないんじゃないだろうか。もういっその事真面目に転職を考えようかな。この仕事、実質、自分で名乗ってるだけだ。収入は賞金首の確保ぐらいしか無いから常に金欠だし。もうこれ仕事って言っていいのかな。ただのボランティアだよね。街を必死にパトロールして回ってるのも賞金首見つけないとこのままじゃ飢え死にするからだし。転職するにしてもヒーローは職業として認められてないから実質社会的に見て俺って活動的なニートだよ。チクショウ。

でろでろに酔い泣き尽くす犯罪者顔のデイザイスターを見かねたのかこのおでん屋ナチュラルの主人田楽のオッサンはデイザイスターに向かって呆れた顔でこう言った。

「少しは落ち着きなさいよ。全く大の大人がこんな真昼間から酒浸りとは情けないですぜ。全くいつも酔うとこれなんだからこっちが嫌なりますよ。おかげで客が怖がってただでさえ閑古鳥泣いてるこの屋台から客が消えちまったじゃねぇか。全く。泣きたいとのはこっちですよ。」

デイザイスターはこの言葉を聞くと酒が入っていたのもあり、号泣しながらこう言った。

「ごめんよぉぉぉ。田楽さぁん。ごめんよぉぉぉ。見捨てないでくれよぉ～。田楽さぁん。俺はどうすればいいんだょお。田楽さん。」

泣き叫ぶデイザイスターに向かって田楽のおっさんは優しい口調でこう言った。

「落ち着ついて下さいよヒーローのダンナ。俺も少し言い過ぎた。 」

そして、田楽さんはデイザイスターに優しくを始めた。

「それで、私が思うにダンナは顔を隠して活動した方が良いと思いますぜ。」

デイザイスターは泣きじゃくりながらこう言った。

「もじがじて、田楽さんまでおでの顔が怖いって言うですがぁぁ。」

田楽のおっさんは普通の人ならドン引きするであろうこの状況にも取り乱す事なくこう言った。

「違いますよ。あっしはあんたの極道顔なんて慣れっこですよ。私が言ってるのは世間の人にはその極道顔はきつすぎるんですよ。その顔を横切る大きな切り傷、旦那の目力、ヒーローとして鍛えあげられた筋肉とその身長2メートルは行ってるであろう身体。初対面なら鬼も逃げ出すほど怖いですよ。」

こう言えと田楽のおっさんはおでんを取り出してこう言った。

「このおでんを見て下さい。うちの自慢のおでんはからしなんて付けなくて美味いぐらい素材の味が生きている絶品ですが。中にはからしを欲しがる味の分からん野郎も来やがります。本当はそんな客には私のおでんを出したくないんですが、客商売ですから私は辛子が欲しいという客には辛子をお出しします。ヒーローもその点ではかわらねぇんじゃねぇですかい。」

デイザイスターは困惑した顔でこう言った。

「何が言いたんだ。田楽さん。」

田楽のおっさんは呆れ顔で大根を二つ取り出して片方には山盛りの辛子を塗って真っ黄色の状態でデイザイスターの前に出してこう言った。

「要するに、旦那の顔はこの山盛りの辛子乗せ大根の様に刺激的すぎるんですよ。ダンナにとってみれば何も塗ってないありのままの大根のつもりかもしれませんが。他の人から見たらこの大根の様に刺激的で一般の人には受けんのですよ。ヒーローも人気がなくちゃやっていけない客商売ですから自分のくだらないこだわり捨てイメチェンしろって言ってんですよ。」

その後、それを聞いたデイザイスターは金を置きおでん屋ナチュラルを飛び出しながらこう言った。

「ありがとう。田楽さん。俺変わるよ。ウォォ。」

そう言うと彼はものすごいスピードで走り去って行った。