事故死したので異世界行ってきます

暇人001

第40話 帰還


 俺達一行は、帝宮を後にして僅かばかりの生存者戦士達の元へと向かった。





「大丈夫ですか?」

 ベニアーナが精神操作により疲弊しきった戦士達にそっと声をかけた。

「おぉ……姫様……ご無事で何よりです……」

 活力の『か』の字も無い声で戦士は呟いた。
 その今にも消えそうな声を聞いた数名はゆっくりと呻き声を上げながらこちらへ向かってきて立膝をついた。

「帝王陛下を御守りする事が出来ず……申し訳ございません……」

 立膝をついてそう言っている戦士は風に揺られる花のようにユラユラとフラついている。

「ベニアーナ姫、戦士達を集められますか?」

「集められると思いますが……」

 俺のその言葉に、ベニアーナは少し戸惑い口を開いた。

「今は戦士達に一時でも休みを与えたいのです。後ほど召集をかけますのでどうかご容赦を」

 ベニアーナはヘソ辺りの位置で手を交差して俺に向かってお辞儀をした。

「わかりました」

 そう返答すると、ベニアーナはまたお辞儀をした。
 俺はベニアーナのお辞儀が終わった後、疲弊した戦士に治癒魔法をかけては、また別の戦士に治癒魔法をかける。俺は、総勢100名以上は居たであろう疲弊しきった戦士達一人一人に治癒魔法をかけた。
 治癒魔法をかけられた戦士は全員、瞬く間に活力を取り戻し俺に向かって一礼した後にベニアーナの居る場所まで駆けて行った。
 むさ苦しい戦士達の間を縫ってベニアーナの元まで行き『これで失礼します』と一言だけ告げてリベリアルとともに早々にその場を立ち去った。

「あ、あのっ! あの……」

 ベニアーナは必死に何か伝えようとしていたが戦士達が囲っている所為か何も聞こえない。
 必死にもがいて戦士達の間から顔だけをひょこっと出して一言こう言った。

「ありがとうございました!」

 猛々しい男達の間を必死にもがいて放った言葉はソレだけだった。だが、これほど分かりやすい感謝の伝え方があるだろうか。

 俺はそれに応えるように右手を上げ、彼女に背中を向けたままドドルベルン帝国を後にした。




 今回の五国会議は当然中止となり、甚大な被害を被ったドドルベルン帝国は傘下国と共に生きる道を選び、四王帝共和国へと名前を変えた。
 そして、肉欲・アスモデウスはあの日を境に全く姿を現さないようになり、ドドルベルン帝国は元より、他国にも平穏な日々が訪れようとしていた。




カルダド王国周辺ー

 ドドルベルン帝国から帰国した俺とリベリアルは今カルダド王国の近くに生い茂っている草木に身を潜めていた。
 帰り道はリベリアルに【飛翔フライ】を教えながら帰ってきたため太陽はもう既に登り切っていた。

「いいか、リベリアル。絶対に自分がリベリアルである事をバレちゃいけないからな?」

「うむ」

「よし、じゃあこの装備に変えてくれ」

 リベリアルが変装するために、帰り道に通ったラゴウド国で一般的な騎士が身につける程度の装備を見繕ってきていたのでそれに着替えてもらう。
 ガチャガチャと金属がぶつかり合う音が静かな森に響き渡る。

「どうだろうか?」

「うん、良い感じだと思う!」

「それは良かった」

 リベリアルは顔が隠れるようにしっかりとヘルムをつけて、俺はエンドラとガンドラを身につけた。

「ん?どうして変わらないんだ??」

 俺が握れば大剣は太刀へと変わるはずのエンドラが全く変わる気配がない、ガンドラに関しても威圧感の強いフォルムのままだ。

「どうかしたのか?」

「いや、形の変化が起こらないなぁ。と思って」

「なにを言っているんだ?人型に変えたければ心の中で 変われ と念じれば変わるはずだが?」

「いや、違うんだ。俺が身につけていた時のエンドラは最も細い刀身でガンドラもここまで威圧感はなかった」

「そういうことか」

 ヘルムで顔が見えないのが残念だが声からして少し笑っているのがわかった。

「どういうことなんだ?」

「本当の意味で主人であること認めたということだ」

 何それ…って事はつい最近までは主人として認められていなかったって事??

「そ、そうなのか…」

「真の主人になったのは喜ばしい事だが、どうするのだ?」

「あ、たしかに」

 そもそもなぜリベリアルがエンドラとガンドラを脱いだのかと言うと、覇王の再来、なんて言われて混乱に陥るのを避けるためだ。
 その結果、リベリアルはフルプレートの鎧を身につけて代わりに俺がエンドラとガンドラを身につけることになったのだが……

「1つ考えがあるのだが良いか?」

「ん?」

「脱げば良いんじゃないのか?」

「そ、そうだな!」

 やべぇ……身に付けるのが大前提で考えてたわ……固定概念って恐ろしぃ……

 結局俺はかなり前にカルダド王国の服屋で買った冒険者のような姿のまま国へ帰ることにした。
 正面の門には入国するときにお世話になったオッチャンが立っていた。


「よぉ兄ィ…… 国王様ッ!」

「大丈夫だよ、前まで通りに接してくれて問題ないから」

「いえ、立場上そう言う訳には行きませんので……」

「そうか……」

 このオッチャンくらいは前まで通り接して欲しかったと思っていたのだがどうやら無理らしい。やはり国王になると言う事はそれだけ威厳を保つべきなのだろうか。

「国王様失礼ですが隣の騎士のようなものはどちら様ですか?」

「私の名前は、リベリ……」

 俺は慌ててヘルムの上から口を塞ぐ。

「コイツは、俺の護衛だ!気にしないでくれ」

「そ、そうですかわかりました……」

「じゃあ、失礼するね!」

「はっ!お気を付けてっ!」

 リベリアルの口を塞いだまま路地裏に入り込んだ。

「ダメって言ったよね!?」

「うむ。バレていないではないか?」

 コイツ……

「次からはあんなの無しにしてくれよ」

「承知した」




 なんとか無事に王宮に入り国王室まで戻ってくることができた。椅子に腰をかけ一息着いたところで俺はあることに気づく。

「【ゲート】使えば何も心配することも対策することも無かったんじゃねぇか……?」

 コンコンーー

 国王室の扉が2回軽くノックされた。

「どうぞ」

 声色を少しだけ変えてそう言う、するとそれに反応するのように扉が勢いよく開かれた。

「失礼する。ユウスケ殿やはりあのクエストで話し合いたいことがある」

 国王室に入って来たのはギルド長だった、俺は無言でギルド長に椅子を勧めて話し合うことにした。

「それで話とはなんですか?」

「その……ユウスケ殿の力を信じていない訳ではないが国王という立場もある以上単身で攻め込むのは少し心配だ、なのでこちらでSS級冒険者のユニットを2つ選抜させて貰った」

 ん?あぁ……まだ1日も経ってないからクエストに出発してないと思われているのか。

「いえ、大丈夫ですよもう終わりましたので」

「うむ、では早速紹介させて貰おう……ん?今なんと?」

「ですから、もうクエストはすべて終わりましたよ。ただ、アスモデウスは戦う前に姿を眩ませてしまったのでそちらのクエストだけはまだ完遂してはいませんが」

「え…それって……まだ1日も経ってないと思うのだが……」

「まぁ……少し急ぎましたので」

「急いだ…か。万一にも嘘などついてはいないと思うが何かヤツらの身元を判明出来るような物はあるか?」

 どうやら、常識はずれの速さでこなしてしまったため疑われてしまったようだ。心外ではあるが、現状このギルド長は国王になった後も態度を変えずに居てくれた人の一人である。そんな彼の言葉を反論で返すのではなくしっかりとした応えを返そうと思いアイテムボックスからヘルムとリベリアルが叩き切った翼と角を取り出した。

「コレで証明になりますか?」

「うむ……ギルドの方で一度鑑定させてもらうことにしよう」

「よろしくお願いします」

「では、一旦失礼する」

「はい」

 ギルド長は部屋を後にしてアイテムの確認をするべくギルドへと向かった。
 




次回の更新予定日は3/5です!

これからもよろしくお願いします!

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