事故死したので異世界行ってきます
第27話 忘魔の書
リリカはかつてのユニットメンバーでもあり親友でもあった仲間たちを喪ったショックで自分の部屋から出れないでいた、俺はそんなリリカを見て何かできることは無いのかと考えたかどうすることも出来ない。
そんな自分の無力さとやるせなさがたまらなく辛かった。
「はぁ~… どうすれば…」
ひたすら悩むこと1時間、ラギナ国王に相談することにした
俺は一連の経緯を伝えた。
「ほぅ… なるほどな… それはなんとも残念な事だが ユウスケは全属性を使うことができるのであろう?」
「使えるけどそれがなにかあるのか?」
ラギナは腰掛けて居た椅子からスッと立ち上がり机の引き出しから一冊の古びた本を取り出した、その本のページは全てまっさらで所々に苔が生えているほど古臭い。
「前々から渡そうと思っていたのだが遅くなってしまった、コレは古き時代の魔法、今はもう喪われた魔法だが、ある条件を満たす者がこの本に触れると喪われた魔法の全てが蘇り再び使うことができるという 【忘魔の書】 だ」
おそらく条件とは全属性を使うことができる魔導士の事だろう。
「何故それを今俺に渡すんだ?」
「【忘魔の書】には遠い時代に禁術とされ現在まで封印されている 蘇生魔法 が記されていると聞く、ユウスケが喪った者を取り返すこともできるやもしれん」
「本当か…ッ?!」
思わず聞き返す。
「あぁ、言い伝えによれば記されている さぁ受け取ってくれ」
ラギナはスッと古びた分厚い魔導書を俺に手渡しそれを受け取った瞬間、魔導書が燦燦と光を放ち、ページが勝手にパラパラパラっとめくれて行き、ものすごい速さで文字が記されていく、それと同時に生えていた苔は消えて、どこか古臭かった魔導書はまるで新品のように綺麗な姿へと変貌し、とても分厚かった本は手頃な薄さへと変化した。
「コレは一体…」
魔導書のあまりの変貌に悪化を取られている俺にラギナ国王は、どこか納得した表情でこう言った。
「その魔導書はそなたを主人と認めたようだ」
「主人… か …」
「ユウスケの求める魔法が記されていることを祈る」
「あぁ、ありがとう」
一言礼を言いゲートを使って自宅へ帰る、家に着くとすぐさま自分の部屋に行き魔導書を机の上に起き開いた
すると目次のような物が書いてあった。
火属性魔法 1〜29
水属性魔法 30〜59
土属性魔法 60〜89
風属性魔法 90〜119
雷属性魔法 120〜149
闇属性魔法 150〜179
光属性魔法 180〜199
無属性魔法 200
この魔導書は一つと属性につき30ページ記されているようだ、ただし例外として200ページの無属性魔法という魔法は1ページしか無い。
蘇生魔法は恐らく回復魔法の最上位といったところだと思うので光属性魔法のページを隅々まで調べる。
「…」
無い、破損した体の一部を修復したり生き絶える寸前の人間を無傷の状態まで回復させる魔法はあるが、死んだものを蘇らせる魔法は1つも記されていなかった。
「はぁ…」
当てが外れ、ショックで顔を伏せる。
その拍子に魔導書が机から落ちてしまった。
「あぁ… 別に拾わなくてもいいか…」
求めていた魔法が記されていない魔導書は俺にとっては紙くず同然の価値でしか無かった。
ガチャー
「ユウくん…?」
目を腫らせたリリカが俺の部屋に入ってきた。
「リリカ… 力になれなくてすまない…」
「ううん…」
「ごめんな」
「大丈夫だよ」
リリカは床に落ちている本に目をやるとこう言った。
「ユウくんこれなに?!」
「ラギナ国王から貰った魔導書なんだ、どうやら古代魔法とか言うやつが記されているみたいだが 蘇生魔法は記されていなかった」
「え?でもこれ…」
リリカが魔導書を拾い上げて俺に見せる、そこにはこんな事が記されていた。
無属性魔法  『禁術』 タイプ : 蘇生
【体魂蘇生】 : 消費MP10000
死体を対象として発動しその者を蘇らせる
体の、一部でも可能
ただし何も無い状態での蘇生は不可
必要適性属性:全属性
詠唱文
我、生と死の秩序を乱す者
我、死者の魂を召喚する者
我、屍に魂を与え屍に生を与える者
我が、魔力を糧に死者を蘇らせよ
蘇生魔法【体魂蘇生】
あるじゃねぇかよ! つか、蘇生魔法は無属性なのかよ!
「ねぇ…これって…」
「あぁ…!アレクたちを復活させられるぞ!」
「ほんと?! やったぁ!!」
俺とリリカは大喜びで飛び跳ねた。
「でも、死体の一部が無いと蘇生することはできないんでしょ?」
正直こんな可愛い女の子の口から死体というワードは聞きたくなかったが、今はそんなことを気にしている場合では無い。
「それに関しては俺の方でなんとかする、今から死体を回収しに出かける リリカはここで待っていてくれ」
「私も行くよ、みんな私を庇って死んでったの…だからみんなが死んだのは私の責任でもあるの!」
その時のリリカの目は覚悟を決めた目だった、そんな目をしたリリカを置いて行くことなど俺にはできなかった。
「準備できたか?」
「うん、準備万端だよ!」
「では行こうか」
俺はリリカが準備をしている間に、ガンドラとエリフィスを装備し、アレク達全員の死体を【心眼】で探した、脳内に映し出されたマップによればラゴウド王国の近くの山脈にあるようだ、ゲートを使い俺とリリカはラゴウド王国の近くまで一瞬にして移動した。
「今更なんだけど、転移魔法覚えたんだね… やっぱりユウくんは凄いね!」
「まぁ、教えて貰ったんだけどな」
「え?だれに??」
「コイツに」
俺はエリフィスを腰から抜いてリリカに近づけた。
その時、(コイツ呼ばわりするな)というエリフィスの声が聞こえた気がした。
「魔剣に魔法を教えてもらうなんて規格外だね…あはは」
あれ?若干引いてませんか?リリカさん?
「お、おう、そうだな… まぁ今は先を急ごう【飛翔】は使えるか?」
「うん!使えるよ!」
「じゃあ飛んで行こう俺が先頭を行くからついてきてくれ」
「わかった!」
俺は【心眼】で的確な位置を確認しそこに向かって最短ルートで飛んで行く、すると僅か10分程度で【心眼】が示す場所へとたどり着いた。
「リリカ、ここだ! 降りるぞー?」
「もう着いたの?早いね!」
俺が先に降りた後リリカが降りてくる。
先に降りた俺は足元に感じた違和感をすぐに察知し、それが何なのかも同時に察した。
「リリカ!そこで待ってろ!」
俺の大きな声にリリカはビクッとして不安定になる、そのまま魔力の制御ができなくなり落ちてしまった。
ドサッー
「イテテ…なに、これ…?」
俺はすかさずリルカの元まで駆けつけて目を塞ぐ、リリカの側にあったのはアレクの頭部、しかも口から上しかなかった、こんな悲惨なものをリリカに見せるわけにはいかない。
「そこにアレクがいるんでしょ…? 大丈夫だよ…もう覚悟はできてるから」
リリカのその声は哀しみを覚悟で包み込んだようだった、視界を塞いでいた手をゆっくりとどけてあげる。
その瞬間リリカの目から涙がこぼれ落ちた、だが表情は全く変わっていない、無表情のままひたすらに涙を流した。
「リリカ、早く蘇らせてあげよう」
リリカは俺のその言葉でハッと我を取り戻したようだ
『うん』
と、一言いって立ち上がった。
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