事故死したので異世界行ってきます
第21話 勝利
国王からレグルス法帝の抹殺を依頼された俺は、ヨルダン法国群と対峙しているカルダド王国の騎士軍に加勢した後に、レグルス法帝を見つけ出して抹殺する事にした。
「さて……それじゃ王様俺はちょっと加勢に行ってくる」
「よろしく頼む、ついでにアノ魔法を試してくると良い」
アノ魔法とは【火炎龍・ジグニール】の事だ、実は大賢人になった際に国王から直々に詠唱文を授かっている。
国王の話によると【火炎龍・ジグニール】の完全詠唱文は代々受け継がれてきたもので、一般的に公表されている物は全文の3割程度しか記されていない。
俺自身、無詠唱で【火炎龍・ジグニール】を出すことはできるが本来の威力を100%出し切ることはできない、50%程度の威力を出すのが限度だろう。
もっとも、下級魔法等であれば無詠唱でも100%の威力を出すことは出来るため、どんな魔法でも詠唱しなければ本来の力を引き出すことは出来ない訳ではない。
但し、【火炎龍・ジグニール】のような高位魔法の場合は本来の威力を引き出そうとすると詠唱が必要になる。
俺は、【火炎龍・ジグニール】の威力がどの程度の物なのか、想像を膨らませワクワクしながら【神化】を使い、猛ダッシュでカルダド軍のいる戦場まで向かって行く。
「な、なんだあの速さ… あの者ほんとうに魔導士なのですか?」
「ワシもあやつのことはよくわからん、ただひたすらに強いということ以外はな、ハハハ!」
ガキンッ!
戦場には鳴り止むことなく剣と剣が交わる音 それから魔法を詠唱する魔導士の声、どれも人を殺すための物音がそこら中から聞こえてくる。
俺は戦場が一望できる切り立った崖の上に飛ぶように移動し見下ろす。
カルダド王国は数万の剣を握る兵士たち、対するヨルダン法国は10万はいようかという勢力で、手に持つ武器は魔力と魔法の威力を上げるための魔導杖を持つ魔導兵達が8割近く占めており、残りの2割ほどはカルダド王国の兵士のように剣を握っている。
カルダド王国の兵達は、敵魔導兵達の遠距離攻撃により疲弊している。
戦況以上に兵士たちの精神はやられているように見えた。
「結構押されてるな…… 早速試してみるか……
焔を司りし天空の覇者 赤き両翼は天を焦がし 灼熱の息は大地を焦がす
我ここに、汝を呼び覚ます者なり
君臨せよ【火炎龍・ジグニール】 」
【火炎龍・ジグニール】の完全詠唱は、無詠唱よりも格段に大きくミネルバとの戦闘で魔法名を唱えた時に出たものと比べてもとても大きい上に、何より龍の形が違う、今までの龍はどちらかといえば日本の竜という感じだったが、今回出たのは洋風の龍、ドラゴン という感じだった、これが本来の【火炎龍・ジグニール】の姿なのだろうか?
「ヨルダン軍を… ってこれ話し通じるのか?」
『グラァウ』
ジグニールは鼻息で返事する様に首を縦に降る
「わかるのか?」
ジグニールはまた鼻息で返事をした
「ヨルダン軍を殲滅しろ」
俺の命令と同時にヨルダン軍の上空に飛び立ち、真紅のブレスを放つ
ジグニールの放ったブレスは一瞬にして幾千の敵を焼き払い、劣勢だった戦況を大きく変えた。
「押せえぇ!!!!」
巨龍の後方支援のおかげで、カルダド軍の士気が上がる。
カルダド軍はジグニールが焼き払った箇所を突き進む。
一活躍した後もジグニールはブレスを放ったり、低空飛行で己の体に当たる敵軍を全て焼き尽くした。
「強すぎねぇか…?」
(そらそうじゃろ)
「わっ!びっくりした…急に話しかけんなよ」
(うるさいわ!妾かて、喋り相手の1人くらい欲しいわ!)
「あっそ」
(な、なんじゃその反応は!妾は魔剣エリフィスだぞ?!)
「はいはい… ってアレ!ウィルじゃねぇか!?」
俺がたまたま視線を向けた先には切っ先をつけつけらたウィルが居た。
「いくぞ」
(ようやく妾の出番か)
敵兵がウィルに向かって剣を勢いよく振り下ろすーー
キュゥルーッ シュパン!
その瞬間俺がエリフィスで敵の剣を遮る、敵の振り下ろした剣はエリフィスによってまるで紙のように半分に切れた
「な、なんだ きさ……グアッ!」
俺は問答無用で袈裟斬りにする
「だ、大賢人様っ!? どうしてここに!?」
「国王の安全を確保したのでこっちに来たんですよ」
「それって……」
「その話は後でじっくりしましょう、とりあえず今はこの場を乗り切りましょう」
俺たちの周りには総勢20人程度の敵兵達が集まっていた
「ウィル、後ろを頼めるか?」
「この命に代えても大賢人様はお守りいたします」
いやいや、ウィルくん、さっき俺に助けられたの忘れてない?
まぁイケメンがこんなこと言うのだから責め立てようものならその行為自体が犯罪のような物だ。
「やるぞエリフィス……」
俺はエリフィスに闇属性の魔力を流し込んだ、するとエリフィスはより、一層ドス黒い瘴気を放ち始めた。
(なんだこの魔力は……力が湧き上がってくるぞ)
「じゃあ、試し斬りだッ!」
俺は1番近くにいた敵兵をエリフィスで脳天からスパッと切る、剣が紙のように切れるこのエリフィスの前では人間など切っても、空気を切っている感覚に近い、そうして真っ二つに切れた兵士の体からは切り口から黒い炎を上げ瞬く間に死体が塵になり消えた。
俺は1人、また1人と敵兵を斬り伏せていく最終的にウィル サイドの敵も俺が援護し倒した
「大賢人様は剣も長けていらっしゃるんですね……それにその剣……」
ウィルはエリフィスの方を向いてそう言う。
「そんなことないよ あぁ……この剣やっぱり知っているのか」
「てっきり偽物とばかり思っていましたが、どうやら本物のようですね……魔剣エリフィス、一度振るえば国が傾き二度振るえば国が滅びる そんな言い伝えもある剣ですよ」
その言い伝えは初耳だが、やろうと思えば一太刀で国を滅ぼすことも可能ではないだろうかと思えてしまうほど今のエリフィスからは力を感じた。
「そ、そうなのか」
「まぁ、その剣を振るうことができたのは歴史上たった一人なんですけどね」
「そうなのか?」
「はい……」
「また機会があったら聞かせてもらうよ、今はヤツらをなんとかしよう!」
「はいっ!」
ウィルは力強い返事をした。
俺はエリフィスを振るい次々と敵兵を斬り伏せていく、そして俺が戦場に到着してから僅か20分程度で場は終結し
カルダド王国の圧倒的勝利となった。
「我々の勝利だっ!!!! 剣を掲げよ!」 
1人の兵士が勝利を吠える。
勝利の雄叫びが戦場に響き渡りそれに応えるかのように『ウォォー!!』と言う勇ましい声が戦場を埋め尽くしていった。
だが、俺の仕事はまだ終わりではない、レグルス法帝を見つけ出し抹殺しなければならない俺は【心眼】を使って位置を探った、脳内に映し出されたのはマップにはヨルダン法国と表示されており円状の建設物中央にに赤点が表示された。
「ヨルダン法国か…… 行くしかねぇか……」
俺はレグルスを倒すべく、重い腰を上げてヨルドン法国に単身で潜り込む。
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