事故死したので異世界行ってきます

暇人001

第1話 死亡と転生


 
 足で大地を踏みしめる感覚も、心臓が脈打つ鼓動の音も何も聞こえず何も感じない、目の前にはただひたすらに黒色だけが広がっている。
 黒一色で埋め尽くされた世界にはポツンと机を挟んで椅子が二つあり奥に置かれている椅子には誰かが座っているように見えた。
 視界が勝手に机と椅子それから、人物らしきもやに近づいていく。


 近づくにつれ鼓動の音、自分の足で立っているという感覚が痺れた足が治るように、じんわりと戻ってきた。
 完全に戻った後、無意識のうちに手前にあった椅子に腰をかけていた。


「鈴木祐介様で間違いありませんか?」


 俺の目の前の椅子に座ってそう問いかけてくるのはキトンの様なものを身につけて頭には透けて顔が見えるほどきめ細かな絹でできたヴェールをつけており透けて見えるその顔はとても美形だ、おまけに細身の体型にも関わらず出るところはしっかりと出ている、まさに女神とも言えるほどの美女だった。



「……あってますがここは、どこですか?」

 俺はゆっくりと口を開く。


「ここは死後の世界です、今から貴方のこれからについて提案しますので気に入られたものがあれば申しつけください   まずはですね…」


「ちょ、ちょっと待ってください!俺って死んだんですか?というか、貴方は、一体誰ですか?」

 慌てて尋ねると、美女は俺に一礼してから口を開いた。


「すいません、自己紹介が遅れてしまいました、私は死者受付窓口担当の女神・イスラフィールと申します 貴方の生前の死因は交通事故です、詳しく申し上げた方がよろしいでしょうか?」


「イスラフィールさんですか……   死因は交通事故なんですね…… すみませんが詳しくお聞かせ下さい」


 女神イスラフィールは手元にあった資料を読み上げる。


「鈴木祐介 24歳 午後7時28分37秒に信号無視をした大型トラックに轢かれ死亡   と、いうわけです」


 詳しい話を聞かせれるとほんの一瞬、死ぬ間際の光景が頭によぎりむせかえった。
 落ち着くのを待って俺は口を開く。

「な、なるほど……それで今後俺はどうなるんでしょうか?」

「そうですね、通常転生と成仏と異世界転生がありますよ」

「通常転生とはなんですか?」


「通常転生とは生前の世界でもう一度生を受けるということです、あなた方よく使う言葉で言えば生まれ変わるという言葉が1番近いかと思います」


 通常転生の内容を聞いたあと、成仏と異世界転生についての説明もしっかりと聞いた、成仏は我々が知るところの天国というところへ行けるもののようだ天国に行って徳を積めば神様に転生できるというシステムもあるらしい。
 そして、異世界転生については大方予想通りの説明がされたが、掻い摘んで説明するとこうだ。
 現状の年齢と容姿性別で転生前の記憶を持ったまま転生されると言ったようなものだった転生というよりもどちらかと言えば召喚に近いようなシステムだ。


「では、異世界転生でお願いできますか?」

 イスラフィールは眉をひそめてこう言った。

「異世界転生ですか…なぜそれを選ばれたのですか?」


 理由は1つに決まっている異世界で大金持ちになって女の子とイチャイチャして大ハーレムを作るためにだ。
 しかし、そんな煩悩まみれのことを言うつもりは無い、ここは堅実な人を装いさっさと異世界に転生させてもらう。



「そうですねぇ…生前から異世界というものに興味がありまして、もし機会があれば異世界で生前できなかったことをしてみたいなと思ったので選ばせていただきました」

「そうですか!まともな理由を持っている人で良かったです!最近多いんですよねぇ… 異世界転生してハーレム作ってやる!っていう人とか大金持ちになってやる!とか言う人…」


 全部当てはまってる。


「ちなみにそういった人たちはどうされているんですか?」
「もちろんお断りさせて頂いていますよ……」


 危ないところだった、ありのまま伝えていたら速攻却下されていた


「ーー。ーーー、ーーー。ーーーすか?」


 イスラフィールは何か言ったようだったが、異世界に行くという事に心を躍らせていて全く聞いていなかった。


「あの……ちゃんと聞いていますか?」


 イスラフィールの言葉で我を取り戻す。


「あ、すいません……少しボォーっとしてしまい聞いていませんでした」


 嘘です、本当は大富豪になることやハーレムを築くことにワクワクしてなにも聞いていませんでした。


「もう一度だけ言いますのでしっかりと聞きいていて下さいね……」


 イスラフィールは少し不機嫌そうに言った。


「今、異世界は大変なことになっているです……」

「魔物とか魔神とかそう言うことですか?」

「今はまだ魔神等の驚異的な存在は出現しては居ませんただ、転生された人達が暴れまわってます、
近いうちに魔神の封印も解けるというのに……」


 今の話を聞く限りだと勇者にでもなって、魔物とか魔神を倒すってことが本来転生者に与えられた使命という訳なのか?


「転生者は転生前に特殊な力
【 恩恵 】を授かるんです…その力で魔神を討伐し世界に平和をもたらすのが本来の役目なのですが…
転生していった方々たちは自らの夢を追いかけて、魔神を倒すと言う役目を放棄しているのです…」


 どうやら魔神を倒すことが転生者の使命らしいな……
特殊な力か…… とても気になるな……


「なるほど……ですが、私は魔神討伐等の冒険的なことをしたいとは、一言も言っていませんがよろしいんですか?」


 これは、異世界に転生をしたくなくなったから言っているのではない、異世界に転生後、魔神を倒せとか言われないためにここで念を押しておくのだ。


「それはそうなんですが……ハーレム作るとかって言っている人よりまだマシかなと思いまして……」
「それと、もし、もしよかったら……」
「イヤです」


 どうせ 『もし良かったら魔神の討伐もお願いできますか?』とか言うんだろ?絶対やらないからなそんなこと!


「ですよねぇ…役目を果たさず、己の欲に溺れた転生者を排除してほしいなんて虫が良すぎますよね…」


 おや、なんかだか俺が思ってたのと違うな…
 一応話だけ聞いてみようか…


「転生者を排除ですか… もしやったとして何か貰えたりするんでしょうか?」


 ぱぁぁぁっと女神の表情が明るくなり女神はるんるんで説明し始めた。


「もちろんです!転生者1人につき神の力、もとい、
【 恩恵 】を1つ差し上げます!それからもし転生者全員を排除して頂けると言うのであれば今ここで【 恩恵 】を3つ差し上げます!」


 なぁにっ!?ここで転生者を全員排除するといえば、特殊な力を3つ貰えると言うのか…ッ!
 これは… 、うん、やめておこう、どう考えたってリスクが大きすぎる。
 全員排除できなければ、役目を果たせなかったと見なされ、どうせ次の転生者が俺を殺しに来るのだろう…それは避けたい。


「全員排除は少し荷が重いかと…」

「で、でしたら!1人でも排除してくださると言うのであれば特別に【 恩恵 】を2つ差し上げますっ!」


 女神も大変だな…今まで断られてきたんだろうな。
 まぁ、1人くらいなら倒せないこともないか…
 それに特殊な力も2つくれるらしいし。



「わかりました…その条件飲ませていただきたいと思います」

 
 女神の表情が明るくなったのが見てわかる。


「では、早速なんですが、【 恩恵 】を選んでいただけますか?」


 女神はそういうと、どこからともなく分厚い本を出して俺に手渡した


「ここに記されている【 恩恵 】であれば自由にお選びください!」
「わかりました、拝見させていただきます」


 俺は辞書よりも分厚い本を舐めるように見た。
 ほほぅ……これはなかなか面白い能力がたくさんあるじゃないか……


 その本には沢山の力の名前とその能力が記されていた
【 焔の加護 】:火の精霊イフリートの召喚及び、火属性の魔法を全て習得できる。
【 闘志の力 】:能力所持者のHPと攻撃力を常時引き上げる、また、剣を装備中全てのステータスが倍になる。
【 鬼人の血 】:能力所持者は任意のステータスを1つ選びそれを最大で5倍にできる。


「なるほどぉ…なかなか種類が多いんですね」
「そうなんですよ…ですから、皆さんなにを選ばれるか悩まれるんですよ」
「ですよねぇ… ん?これはなんですか?」


 俺がそう言って女神に見せたのはこの本の紙質ではない1枚の紙切れだった。


「こ、これは…コレ、どこにありましたか?」


 女神は歯切れが悪そうにそういう。


「本の中に挟まってましたよ⁇」


 少し考え込む姿を見せてたイスラフィール、俺は何かやらかしたのかと思い左目を閉じ右目を半目にして見守る。


「これ、転生先の世界そのものが求めている人材以外には出されない紙とされている物なんですよ…」


   え……ってことはなんだ?もしかして勇者になれとか                そう言うパターンか?
 いやいや、無理無理無理絶対無理。

   ってか、こんな機能が付いてるなら、この紙切れが出て  くるまで異世界に転生なんてさせなけきゃ良いのに。
 いや、待てよ俺が選ばれている時点でこの機能もたいして役にたたねぇな。


「私もこの仕事を務めてかれこれ100年ほど経ちますが始めてみましたよ……私たちの業界でも迷信扱いだったので」


 なるほどな、そんなあるかもわからない迷信のために世界を救うかもしれない転生者を送らずに成仏等他の事をさせるわけにはいかないと言う訳か……


「ははぁ…そうなんですか…因みにその紙切れには何が書かれているんですか?」

「えぇ…とんでもないものが記されていますよ」


 イスラフィールはそう言うと、俺に紙切れを手渡した。


「…⁈⁈」


 そこには、とんでもない能力が記されていた。



【無限を追し者】:レベルの上限が無くなりステータスの上限も無くなる、またこの能力の所有者は通常の5倍の経験値が与えられるスキルを得る。

【神威の力】:能力所有者は『神の加護』『神の裁き』『神化』の3つのスキルをレベルに応じて習得する。

【時読みの力】:能力所有者はレベルに応じて時間停止を行うことができるスキルを得る。
※10レベルにつき0.01秒





読んでいただきありがとうございます!
『No Heaven』と言うタイトルで異世界モノの小説を書かせていただいております!
もしよろしければそちらの方にも目を通して頂けるとありがたいです!

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