王女は自由の象徴なり

黒イライ

07.甘える王女と依頼

とりあえずギルドを出て適当に宿をとって体を休めることにした。あの酔っ払いのせいでむかむかしていたが宿のご飯が美味しかったので良しとした。部屋も綺麗で居心地が良かった。

 「ただいま戻りました」

 「お帰りなさい、サリア。どうだった?」

 「今のところは何も情報はありませんね。しばらくはここに滞在してもよろしいかと」

 サリアに頼んで情報を集めてきてもらっていたのだ。ラーフェル王国の第一王女がいなくなったとなったら隣国にはすぐ情報が伝わるだろう、ということなのだ。

 「そう、なら良かったわ。ところで、明日はギルドで依頼を受けるわよ」

 私は自由になるために旅に出た。それを象徴するためにも冒険者として名声を挙げる。それが今の私の目標。その為にも依頼を受けまくってランクを上げなければならない。出来れば虹、最低でも黒にしなければならない。

 「かしこまりました。それでは今日はもう就寝致しましょう。明日に差し支えますので」

 「そうね、早く寝ましょうか。じゃあ早くベッドに来なさいな」

 ベッドは部屋に一つしかない為一緒に寝るしかないのだ。
 ………実は久しぶりに一緒に寝たかったりはするんだけど。昔はよく眠れない夜は一緒に寝てもらっていたから久しぶりに一緒に寝たいのだ。

 「いえ、私はそこのソファで寝るのでお気になさらず」

 サリアが部屋の隅にあるソファを指差して言う。

 「もう!それじゃあ疲れが取れないでしょ!一緒に寝るわよ!」

 一緒に寝たいんだから分かってよっ!

 「いえ、私は大丈夫ですので」

 何でいつもは私のこと何でも知ってる、みたいな感じなのにこういう時は分かんないかなー。

 「………サリアがソファで寝るなら私は床で寝る」

 「何を馬鹿なことを仰っているんですか。ちゃんとベッドで寝てください」

 「サリアと一緒じゃないとベッドで寝ないからっ」

 もうここは意地だ。絶対一緒に寝るっ。

 「……もう、しょうがないお方ですね。分かりました。一緒に寝ましょう」

 サリアが諦めたような表情をする。

 いやったぁぁぁぁ!!!私の勝ちだ!

 「分かればいいのよ分かれば」

 努めて平静を装おうとするがニヤけが治まらない。どうしても頬が緩んでしまう。どうやら私が思ってた以上に私はサリアと一緒に寝たかったみたいだ。

 「さ!早く寝ましょっ!」

 「そんなに私と寝たかったのですか?お嬢様もまだまだ子どもですね」

 そう言って私の頭を優しく撫でてくる。従者としては本来あるまじき行為だけど、昔はよくこうして頭を撫でてもらってた。実はあのつらぁい訓練を乗り切れたのはご褒美に頭を撫でて貰えるからだったりする。恐らく、お母様より私のことをよく見てくれて公務で忙しいお母様に代わって母親のように思っていた、のかもしれない。

 「………別にいいじゃない。たまにはいいでしょ?」

 「そうですね。まだお嬢様が甘えん坊だと再認識出来たところで早く寝ましょう」

 甘えん坊とか……確かにこの状況見ると甘えん坊かもしれなあけど、本当はそんなことないんだからねっ!

 そんな事を考えつつ、サリアと一緒に眠りに落ちた。久しぶりの温もりを感じながら。








 「……うわぁ……」

 「……これは予想以上ですね」

 翌朝、私達は早々に宿を出て道中お昼ご飯を買ってギルドに入ったんだけど…………

 「…すごい注目浴びてるわね」

 「少し見られる程度は考えていましたが…」

 私達がギルドに入った瞬間、私達を認識すると全員が視線を外さず私達を見ていた。……訂正。あのエルフの人は寝てた。

 「やっぱり人前でアレは使うもんじゃないわね」

 冒険者ならまさか小さい女の子があんな凄みのある威圧をかけるなんて思ってもみなかったでしょうしね。

 「まあ、気にしても仕方ないし、もう放っておいて早く依頼受けましょ」

 「依頼ボードはあちらにございますね」

 私はてくてく歩いてボードまで行くと、何か楽で簡単にランクを上げられそうな依頼が無いか調べていた。……まぁそんな依頼は無いんだけれども。

 「とりあえず昨日行った《迷宮ミゴン》で取れる素材とかを集めるやつにしようかしら。幾つかあるからとりあえず全部受けときましょ」

 「この量なら一日潜れば何とかなりそうですね。バックパックはギルドから借りられるようなので今日はそれを使いましょうか」

 私はサリアの意見に賛成して依頼の紙を持って受け付けに持って行く。依頼の受け付けはあのエルフの人はやってないらしい。残念だ。

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