王女は自由の象徴なり

黒イライ

04.《女王》

 「よし、ここね。ラーグレスの近くの《迷宮ミゴン》は。」

 ギルドで冒険者登録をした後すぐにサリアと一番近い《迷宮》に足を運んでいた。

 「サリア様、魔獣を倒す時はお気を付けください。魔法石が傷付くと値が下がります。」

 「分かってるわよっ!早く行きましょ!」

 完璧に粉々にするつもりでいたわ…。危ない危ない。

 そのまま歩いていると魔獣が出てきた。
 遂に初戦闘だわ。楽しみね。

 「あれは少黒竜と取り巻き達ですね。小さいですが攻撃は強力なのでお気を付けてください。私は周りの雑魚を片付けておきますので。」

 あれが小黒竜なのね。本で見た事あるわ。小黒竜ってそこそこ強い部類の魔獣じゃなかったかしら?まあ私なら大丈夫でしょうけど。

 「クルアアアアァァァッッッ!!!」

 小黒竜が咆哮とともに衝撃波を放つ。ユリナは横飛びで回避する。避けた先には岩があり粉砕していた。

 「へぇ、やっぱり威力は高いのね。硬そうな岩だったのに粉々になってるわ。」

 あれを喰らったら結構な痛手になるでしょうね。まあ喰らわなければ一つも意味はないけど。それにこのレベルの魔獣なら戦う必要もないわね。さっさと終わらせましょう。

 ユリナに衝撃波を何度も躱され当たらないと分かった小黒竜は突進攻撃を仕掛けてきた。

 「《跪け》」

 「グギッ!!」

 「やっぱりこんなものね。全く抵抗出来てないわ。」

 「《散れ》」

 瞬間、小黒竜の身体は内部から破裂し鮮やかに散った。

 「…ユリナ様、容赦ないですね。」

 「貴女にだけは言われたくないわ…」

 サリアが相手をしていた雑魚は…悲惨の一言に尽きた。

 「サリアの能力ってあれよね…酷いやつ。」

 「酷いやつとは失礼ですね。れっきとした能力ですよ。」

 「サリアの能力で相討ちになる奴らの気持ち考えなさいな…。大分惨いわよ…。」

 サリアの《仕事ラボロ》は《操王》。
 《操王》の能力は大まかに言うと任意の敵を操る事が出来るらしい。もちろん全員操れるわけではないらしいけど大体は操れるらしい。
 今回の場合雑魚を全員操り雑魚同士で相討ちにさせていた。
 相手は訳もわからず仲間を攻撃することになるから中々惨い光景となっていた。

 「……敵を破裂させて儚く散らせているユリナ様だけには言われたくないです。」

 「何のことかしら?私は何も手は加えてないわよ?」

 「……ユリナ様は《女王クイーン》じゃないですか。」

 「まあ自分の手なんか加えなくても勝てるからね。」

 サリアが言った通り私の《仕事》は《女王クイーン》。この《女王》って結構強いし珍しいらしくて王家の血を受け継いでる王女にしか出ないものなんだって。能力は自分より格下の者を従わせたりして思うがままに出来るものだったりでさっきの小黒竜は私より格下だったから余裕で従わせれたわ。
 私とサリアの能力って結構似てるところがあるわね。

 「それよりユリナ様。魔法石の回収はどうなさいました?もしや勢い余って破壊してしまった、なんてことは無いですよね?」
 
 「ちゃんと採ってるわよっ!失礼ね!」

 ちゃんと破裂させる時も魔法石の周りを狙ったのだ。

 「………はい、これなら申し分ないですね。早く次に行きましょう。あと、あまり《女王》の能力に頼り過ぎないように。格上の相手が出た時動けない、なんて事になりますからね。」

 「はいはい、分かってるわよ。その話何回も聞いたからね。」

 私はそんなに馬鹿じゃない。それにこの話は昔っから口酸っぱくサリアから言われてるからね。剣術だってそんじょそこらの冒険者なんて相手にならないわよ。剣術で私が国の中で勝てなかったのはサリアだけよ。
 
  「次からは普通に剣で戦うわよ。さっきは久しぶりに能力を使ってみたかったのよ。」

 「そうですか。それでは早く行きましょう。もう少し下に行けばもっと強い魔獣もいるらしいですよ。」

 え、ホント?やったっ!この辺りは弱くて戦ってる感じがしないのよね。強い魔獣と戦えるなら嬉しいことだわ。

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