歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~
第234歩目 青い彗星、目覚めの時来る!
前回までのあらすじ
闇が......闇が......(゜Д゜)
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同時刻、夕刻。
夜明けと同時に始まった、長い長い戦いは終わりを迎えた。
結果は魔物側5万匹の全滅に対して、俺達は死傷者0人と圧倒的大勝利だった。
そう、結果だけ見れば、まさに驚くべき快挙なのである。
「うわぁぁああああぁぁぁああ! やめてくれぇぇぇえええええ!」
「なんでー? かっこよかったよー(〃ω〃)」
しかし、俺はやり過ぎた。
いや、俺達はやり過ぎてしまった。
「あー! あー! 記憶にございません!!......というか、アレについては一切語るなッ!」
「ふーん。ねぇーねぇー、赤城の峠でも爆走しちゃうー?(o゜ω゜o)」
「だから、やめろ! 奴が間違いなく進化しちゃうから!!」
それと言うのも、俺はまた一つ伝説を残してしまったようだ。
本来なら名誉なことなのだろうが、いい年した大人からしてみれば不名誉な伝説を。
そう、恥ずかしくもつまらない、忌まわしき伝説を......。
その時のことを、上空から偵察役として(俺の戦いを)一部始終見ていた『紫の三連星』のリーダーであるガイヤさんは、後にこう語った。
「通常の3倍のスピード......まるで青い彗星(※)だ」
と───。
(※)青い彗星・・・主人公のトレーニングウェアが青色から、そう命名。
※※※※※
時は指揮官とおぼしき魔物との最終決戦まで遡る。
「いいかげんにー(o゜ω゜o)」
「ふはははははははははは!」
「目を覚まさんかーいΣヾ(´∀`*」
───ごちんっ!
「あいたッ!?」
何かに殴られたような軽い鈍痛と共に、俺は意識を取り戻した。
目の前には駅弁スタイルで抱き着いているアテナのかわいい顔が......。
そして、そのアテナの手にはご自慢の『殺戮の斧』が握り締められている。
「正気に戻ったー(。´・ω・)?」
「お、俺は一体......」
いきなり「正気に戻ったー(。´・ω・)?」とか言われても、訳が全く分からない。
仮にアテナの言う通り、俺が正気を失っていたとするのなら、その時の状況をきちんと説明してくれないと分かるものも分からないだろう。
ただ、なんとなくだが、握り締められている『殺戮の斧』で殴られたこと。
それのおかげで、俺はこうして無事に済んでいることだけは辛うじて分かる。
「なんかねー、急に私を無視し始めたんだよねー(´-ε -`)」
「無視し始めた? どういうことだ?」
「多分、その子のせいじゃないかなー(・ω・´*)」
「その子......?」
いまいちピンとこない説明だが、アテナが指差す先を見てギョッとした。
「え!? いつの間に!?」
俺の右手には、いつの間にか小悪魔が持っているイメージが強い三叉槍のような禍々しい形をした、真っ赤な『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』がしっかりと握り締められていた。
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『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』
中にはまだ覚えていらっしゃる方もいることだろう。
異次元世界で、ニケさんと激しい戦闘を繰り広げたサキュバスなお姉さんの武器だ。
サキュバスなお姉さんは元大魔王にして、世の理を無視した力を使う強者でもある。
そんな強者からニケさんがこれを強奪し、返し忘れた為、俺が預かることになった。
つまり、正真正銘、『元大魔王の武器』という曰く付きのものである。
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ただ、元々『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』は刀身(というか槍身?)部分のみが赤かったはず。
それが、まるで鮮血でも浴びたかのように、全体が真っ赤に染め上がっている。
それに、死骸兵と同様に、不気味な炎の幻影もユラユラと立ち昇ってさえいる。
「な、なにがどうなってこうなった!?」
それだけでも驚くには十分な光景なのだが、更に壮絶なものを目の当たりにしてしまう。
「う、うわ!? な、なんだこれ!?」
端的に言うと、俺の右手・右腕が気持ち悪いことになっている。
例えるなら、息づいているとでも言うべきか。
右手・右腕の神経という神経がクッキリと浮かび上がっている。
そこに流れる血の循環が、ドクドクと脈打っている血の様子が、ハッキリと見てとれる。
言うなれば、常に神経が過敏に働いている状態。
そして、異常に発達したとも言うべき各種神経。
これではまるで───。
「まるで狂ケ○脈だなー(。´・ω・)?」
「やめて!? 俺はお姉さんを殺してなどいないから!」
「そーいう幻を見る資格などないンだーヽ(`Д´#)ノ」
「なに言ってんの!?......というか、俺は誰にも怨みなんて買われちゃいないから!」
アテナのギリギリセーフ(アウト?)なツッコミにより、俺の右手・右腕が現状どういう状態になっているのかはお分かり頂けたと思う。
とにかく、ヤバいことになっている、ということだ。
当然、こうなった原因は『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』をおいて他にはない。
そして同時に、この状況があまりよろしくはないということも分かった。
「これ......のことだよな?」
指し示すかのように『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』を少し持ち上げてみる。
どうやら、右手・右腕が気持ち悪い状態にあれど、(俺の意思によって)自由に動かすことはできるようだ。ふぅ~。ちょっと一安心。
「そだねー。精神支配系の何かでもされたんじゃなーい(。´・ω・)?」
「精神支配系......いや、待てよ?」
左手で顎を摘まんで考える。
すると、アテナに指摘されるまではなぜか朧げだった俺の記憶が、今はそれがまるで嘘であるかのように靄が晴れ、頭の中がスッキリとしている。
「そう言えば、思い当たる節がある。謎の声がいきなり聞こえてきたんだ」
「謎の声ー? じゃー、その子のだねー( ´∀` )」
「そ、そうか。やっぱり......」
さすが元大魔王の武器とでも言うべきか。
使用者を精神支配するとか恐ろしい武器である。
しかも、俺の記憶が正しければ、『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』はアイテムボックス内に収納されていたはずだ。
それなのに、そこから語りかけてきて、精神を支配に至るとか戦慄を禁じ得ない。
「確か......契約しろだの、血を捧げろだの言っていた気が......」
「血はそれでしょー(。´・ω・)?」
アテナが俺の気持ち悪い状態になっている右手・右腕を指差した。
ドクドクと脈打つように俺の血が『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』に送られていく。
「なるほど。確かに血を捧げて......というか、捧げるのは俺の血なの!?」
「歩の血のほーがおしそーだもんねー(*´μ`*)」
「そういう問題!? こういう場合は生け贄的な......つまり、敵の血なのでは!?」
そこまで言って、あることを思い出した。
今はアテナと悠長に会話を楽しんでいる場合ではないことに。
ここは戦場で、今は指揮官とおぼしき魔物と戦闘中であることに。
「敵は......魔物はどうなった!?」
警戒しつつ、辺りをザッと急いで見渡す。
すると、指揮官とおぼしき魔物の姿が目に映った。
そう、衝撃的な姿が───。
「えええええ!? どうなってんの!?」
今、視線の先にいる指揮官とおぼしき魔物は、見るも無惨な姿を晒している。
相当痛めつけられたのか、体の至るところが歪み、最早、馬の原型は既にない。
それでも死んではおらず、ぷるぷると震え、立つのがやっとといった有り様だ。
まさに、生きている何か、新種の奇怪な生物、という言葉が相応しい姿形である。
更には、【紫色の光線】の発射口で鬱陶しかったご自慢の角も、今や中程から無理矢理へし折られたかのような痛ましくも無惨な爪痕を残している。
さすがに、いかに相手が魔物と言えど、「そこまでやるかよ......」と思わず口にしてしまう程の惨状だ。
「なーに言ってんのー! 歩がやったんじゃなーいΣヾ(´∀`*」
「お、俺がこれを......」
「まー、正確には歩とその子だけどねー(o゜ω゜o)」
「......」
アテナに言われずとも分かってはいた。
ただ現実を、事実を、受け入れたくなかっただけだ。
「ほーんとねー、すごかったんだからー! 高笑いしながらー、バンバンバンってねーo(≧∇≦)o」
「......」
命のやり取りをする以上、余計な同情心は不要である。
ちょっとしたことが命取りとなり、それ即ち、身の破滅へと繋がるからだ。
(だけど......だけどさ? 武士の情けって言葉を知らないのか?)
アテナの口ぶりからすると、俺と『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』の連合軍と指揮官とおぼしき魔物の間では圧倒的な実力差があったようだ。
それこそ、一方的な蹂躙劇を演じられる程には......。
だとしたら、俺がレベル4の魔法で一斉に駆逐した他の魔物同様、指揮官とおぼしき魔物もまた一思いに倒してしまう(=機能停止にする)ことも可能だったはずだ。
それが生かさず殺さず、まるで弱者をいたぶって遊んでいるかのような、この現状......。
(ハァ......。なんだか胸糞悪いな。でも、俺がやったことなんだよなぁ)
いくら『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』に精神支配されていたとは言え、気が重い。
俺も同じ弱者だからこそ、強者に嬲られる弱者の辛さを知っているだけに。
なんて、俺が自己嫌悪に陥っていると───。
「ふはははははー( ´∀` )」
「い、いきなりどうした?」
「我が混沌の前に立つとは......くっくっく。良かろう、これより先は闇としれー(`・ω・´)」
「だから、本当にどうした!?」
アテナがピョーンと俺から飛び降り、謎の行動に移り出した。
一応、まだ指揮官とおぼしき魔物とは戦闘中ではあるのだが......まぁ、相手が既に瀕死状態ではあるので、特にこれといった危険性はないだろう。
それよりも、気になるのはアテナが取っている謎の行動とセリフのほうだ。
「血が騒ぐ......どうやら天使共が騒ぎ出したようだなーΨ(`▽´)Ψ」
「......」
まず、右半身を後ろに少し傾け、足は肩幅ほどに開いている。
次に、左手を前に突き出し、まるで号令でも掛けるかのような堂々とした態度。
更に、右手で右顔半分を覆い隠すようにしつつも、指の隙間からは妖しく煌々と輝く右眼が少しだけ見えている。
それに気のせいか、アテナの眼の色はきれいな碧眼だったはずなのだが、今は右眼だけがまるで燃え盛る灼眼のように真っ赤な色になってさえいる。
(こ、この『いかにも』といったポーズに、『いかにも』といったセリフ。も、もしや......)
俺は恐る恐る、悦に入っているアテナに真相を尋ねることに。
認めたくはない、知りたくもないことではあるが、確かめずにはいられない。
「なにってー、歩のまねだけどー(。´・ω・)?」
「やっぱり!? うわぁぁああああぁぁぁああ! やめてくれぇぇぇえええええ!」
「なんでー? かっこよかったよー(〃ω〃)」
「カッコいいはずがあるか! 単なる厨二病だろ!!」
「さぁ、まもなく破滅の時間だ。闇の炎に抱かれて消えろ(`・ω・´)」
「ぶふぅ!? な、なーにが『カタストロフィ』だ! そのふざけた幻想をぶち壊す!」
どうやら、俺は目覚めさせてはならない奴を覚醒させてしまったようだ。
なんと『魔神槍ゲイ・ヴォルグ』さんは厨二病であるらしい。
(こ、このままでは俺が俺でなくなる! 間違っているのは俺じゃない、世界の方だ!!)
元々、嫌な予感はそれとなくあった。
『ゲイ・ヴォルグ』とか、いかにもそれらしい名称だったところからも既に怪しいとは思っていたのだ。
しかも、『ボ』を『ヴォ』にする辺り、典型的な厨二病でもある。
「見える......見える......この眼は闇がよく見える。歩も目覚めの時がきたんだねー( ´∀` )」
「......ふッ。目覚めたくはなかったのだがな」
 こうして、俺は勝利の栄光とともに、心に新たな虚無を抱えたのだった───。
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後書き
「あれ!? 指揮官とおぼしき魔物との戦闘(描写)は!?」
「敢えて書かないスタイルだねー(`・ω・´)」
「それは手抜きでは!?」
「邪眼をなめるなーヽ(`Д´#)ノ」
「どういうこと!?」
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